東電の小早川智明社長は4月30日、25年3月期の連結決算の記者会見で、柏崎刈羽原発の再稼働について、地元の理解を大前提とした上で「7号機は再稼働できる状態が整っている。(立地自治体に)一日も早くご判断いただけるように最善を尽くしていきたい」と述べました。
東電の構想の中では常に「事故時に住民が安全に避難できるか」という観点が抜けています。コスト上一日も早く稼働させたいのは分かりますが、必要な避難道路が出来ているのか、屋内避難に関わる課題は解決されているのか、そして原発本体が攻撃を受けた時に遠隔操作で原発を停止するための「特定重大事故等対処施設」は完備しているのかなどの再稼働のための「必要条件」が全く念頭から欠落しているのは、原子力事業者として許されないことです。
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柏崎刈羽原発「一日でも早く再稼働」 東電HD、地元同意前提で
毎日新聞 2025/5/1
東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長は4月30日、2025年3月期の連結決算の記者会見で、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働について、地元の理解を大前提とした上で「7号機は再稼働できる状態が整っている。(立地自治体に)一日も早くご判断いただけるように最善を尽くしていきたい」と述べた。7号機はすでに核燃料を装塡(そうてん)する「燃料装荷」を終えている。
再稼働の候補は7号機以外にも6号機がある。6号機の燃料装荷は6月を予定している。東電は2月末、設置が義務付けられている7、6号機のテロ対策の「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の完成時期を、4~5年先延ばしすると発表。設置期限(7号機25年10月、6号機29年9月)を越えての運転はできず、7号機を再稼働しても10月には停止となる。立地自治体では、どちらから再稼働するのか困惑する声が上がっている。
小早川社長は「安全にオペレーションできるかが非常に重要だと考えている。まずそこを軸に判断していきたい」と話す。6号機の準備が追いつけばその時の状況で判断するとしつつ、足元で準備ができている「7号機が優先」との方針を改めて示した。
東電HDは福島第1原発事故後、国から賠償費用などの支援を受け、年5000億円程度を目標に返済しつつ、電力事業を続けている。
ただ、これまで目標に到達したのは17年度と23年度の2回のみ。18年度以降、自由に使えるお金であるフリーキャッシュフローがマイナスの状態が続く。24年度は11年度以降で過去最多の4979億円の赤字だった。
こうした経営状況について小早川社長は「特に非常に旺盛な電力需要の増加を見据えた先行投資が加速している」と釈明。加えて、物価高騰や金利の上昇、現場の人手不足などが重なっており、投資先を厳選し、他企業との連携や徹底的なコストダウンなどを通じて改善を図ると意気込んだ。
東電HDが発表した25年3月期の連結決算は、最終(当期)損益が前期比39・8%減の1612億円の黒字だった。燃料費などの変動を遅れて料金に反映する「燃料費調整制度」の差益が縮小したことなどが影響した。25年度の業績見通しは、原発再稼働が見通せないため「未定」とし、24年度の期末配当に加え、25年度も中間・期末ともに無配予定とした。
足元の経営改善の鍵となるのが柏崎刈羽原発の再稼働。小早川社長は「最重要経営課題」と位置づけている。【中島昭浩】