東海第2原発は、避難計画に実効性がないなどとして、水戸地裁で再稼働を認められないとの判決を受け、現在東京高裁で控訴審が進められています。そういう経過から茨城県は他所よりもかなり具体的に避難計画が進められていますが、まだまだ難問が山積の状況です。
避難用の公用車輌の問題一つとっても、バス500台、福祉車両1000台が本当に運転手付きで集められるのか? 無理ではないでしょうか。
まずはご一読ください。
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《連載:2024衆院選 課題を追う》
(3)原発事故 どう備え 避難計画、実効性に不安
茨城新聞 2024年10月21日
「原発事故が起きたら混乱が予想される。避難所までの渋滞も起きる」
茨城県東海村で3日に開かれた住民や有識者らでつくる村原子力安全対策懇談会。住民代表の女性(64)は、村内に立地する日本原子力発電東海第2原発の事故時、避難は原則、自家用車とされていることに問題があると感じた。
村は昨年12月、同原発事故に備える広域避難計画を策定。避難先となる県内の取手、守谷、つくばみらいの3市に経由所を設け、開設準備ができた避難所から順番に誘導する仕組みを整え、円滑に住民が避難ができる工夫を凝らしてきた。
一方、避難経路の渋滞対策や道路が損壊した際の交通規制、複合災害の対応など、県や国との調整が必要な部分は定まっていない。
女性はこれらの点を踏まえ「住民が即座に避難できると思えない」と強調。「村の広域避難計画は実効性がない」と訴える。
政府は2022年8月、脱炭素化やエネルギー安定供給を理由に原発利活用にかじを切り、東海第2原発の再稼働を目指すとした。
県が同原発再稼働の条件の一つとする周辺14市町村の広域避難計画は、徐々に策定が進む。同県大洗町は11日に計画を決定。現時点で8市町が策定済みとなった。
ただ、市町村計画の支援的役割となる県計画は多くの課題が残る。移動手段がない人や自力での避難ができない人に必要な車両は、最大でバス500台、福祉車両が1000台。原発30キロ圏に住む91万6000人の避難所は9万4000人が不足する。
課題の一つが自然災害と原発事故との複合災害だ。県は9日、5年ぶりに図上訓練を実施。同原発5キロ圏(PAZ)に即時避難が指示され、地震で道路寸断や避難所に被害が出たとの想定で、担当職員らが各自の役割確認と対応力、応用力の向上を図った。
県原子力安全対策課は「的確な対応には、正確な情報を多く集め、連携先に分かりやすく伝達する必要がある」と指摘。職員の原子力災害に対する知識力向上が鍵として、今後も多様な想定で訓練を行う。
住民への避難計画の周知も課題に挙がる。被ばくを防ぐには、事前に計画を理解した上での行動が重要になるとして、県や市町村は広報紙や講座などを通じて浸透に努めてきた。
だが、同県日立市が昨年実施した市民アンケートでは、約78%が原発5キロ圏が即時避難、同5~30キロ圏(UPZ)がまず屋内退避と対応が異なることを「知らない」と回答。21年の那珂市の市民調査でも6割超が同様の回答だった。
17日に初めて開かれた専門家による県の避難計画検証委員会(関谷直也委員長)でも、委員が計画の実効性を高めるには県民の理解度を把握する必要があると指摘した。
県の担当者は「多くの人の理解が計画の実効性を高める」と必要性を認識し、その上で「あらゆる手段で繰り返し伝えていくしかない」と周知の難しさを語った。