原発立地自治体の知事の殆どが原発の再稼動に前のめりになっているなか泉田新潟県知事は辛口の発言を続け、特に再稼動に関しては「福島原発事故の検証が終わらない段階での再稼動の検討はあり得ない」と一貫して主張しています。
かなり前のことですが、「柏崎刈羽原発は中越沖地震での破損を修理したので『起動試験』に入りたい」旨の東電の申し入れが知事のところに上がってきたときに、『起動試験』は「実稼動(の前段のある期間のことを指す)」に他ならないので認められない」として拒否しました。資源エネルギー庁の出身者なので原発業界のそうした特殊用語をよく承知していたのでした。
知事はこの度新潟県の技術委員会が福島原発の事故を独自に検証した報告書を原子力規制庁長官に提出し、規制委に対して「もっと立地自治体の声を聞く耳を持ってほしい」と申し入れたということです。
以下にNHKのニュースと新潟日報の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新潟県知事「原発地元の声に耳を」
NHK NEWS web 2013年4月22日
東京電力柏崎刈羽原子力発電所を抱える新潟県の泉田知事は、国の原子力規制庁を訪れ「立地自治体の課題や疑問にもっと聞く耳を持ってほしい」と述べて、原子力規制委員会に対し原発の地元の声を聞くよう要望しました。
新潟県の泉田知事は原子力規制庁を訪れ、おととしの福島第一原発の事故を独自に検証した新潟県の技術委員会がまとめた報告書を池田克彦長官に提出しました。
そのうえで、泉田知事は原子力規制委員会が今月10日にまとめた新たな規制基準の案について「原発事故の検証が終わらないなか、地元の意見も聞かずに作られた新たな基準で、なぜ安全が確保できると言い切れるのか。立地自治体の課題や疑問にもっと聞く耳を持ってほしい」と述べ、規制委員会に対し原発の地元の声を聞くよう要望しました。
これに対し、池田長官は「意見は幅広く聞いている。新基準は原発事故の検証を100%解明しなければできないものではない」と答えるとともに、県の技術委員会での説明を検討する考えを示しました。
規制委員会は原発事故で前の原子力安全・保安院が「事業者の虜(とりこ)」などと批判されたことから「独立性」を掲げていますが、電力会社や自治体への説明や意見を聞く場が少ないとして「孤立している」といった指摘も出ています。
泉田知事は「公正で独立していることと話を聞かないことは全く違い、規制委員会は意味をはき違えている。透明性をもって情報を提供していくことが一番重要で、今のやり方で信頼を得るのは難しい」と話しています。
知事「原発立地地域の意見反映を」 規制委対応を批判、
規制庁長官と面会
新潟日報 2013年4月22日
泉田裕彦知事は22日、原発の安全対策や住民の防護策などを要望するため原子力規制庁で池田克彦長官と面会。過酷事故や地震、津波対策を盛り込んだ新たな規制基準案などに立地地域の意見が十分に反映されていないとして、原子力規制委員会の対応を批判した。
泉田知事は池田長官に対して「立地地域と向き合うつもりがないのか」と指摘。田中俊一委員長が対応しないことについて「(規制委の)独立性をはき違えている」と批判した。
2007年の中越沖地震で本県の東京電力柏崎刈羽原発が被災したことに触れ、「複合災害を経験した現場の声を聞かないで判断できるのか」と語気を強めた。
池田長官は「誤解がある」などと反論した。泉田知事は、東電福島第1原発事故の検証を進める県技術委員会への規制委職員の出席をあらためて求め、池田長官は「前向きに検討する」とした。
知事は、過酷事故に備える専門組織の整備や広域避難の枠組みの明確化などを盛り込んだ要望書を提出したが、中身の話はしなかった。
面会後、泉田知事は取材に「原子力安全・保安院の時より(コミュニケーションが)悪くなった」とし、今後も田中委員長に直接、要望書の内容を説明する機会を求めていく考えを示した。