福島原発の廃炉作業の検証に来日したIAEAの調査団は22日の記者会見で、「汚染水の問題が直面する最大の課題。東電は信頼性を向上させるために、包括的な戦略を見直すべき。不具合が発生した場合は、迅速に問題を突き止める能力と対応する能力を備えることが大切」 と指摘しました。
もともとIAEAは原発の身内の組織なので、好意的に評価しこそすれ打撃的な批判を公表する筈がないことを考えれば、これはかなり手厳しい批判であったと思われます。
福島原発の汚染水の処理に関して東電の不可解な対応がまたひとつ暴露されました。
東電は汚染水を貯蔵する仮設タンクの製作をなぜか昨年12月で中止する一方、外部に対しては仮設タンクの増設を行っているように公表していました。
このため1月からは汚染水を地下貯水槽に入れるしかなく、4月に入ってそこから地中に汚染水が浸透していることが発覚しました。仮設タンクの増設を再開したのは3月中ごろ以降でした。
虚偽の公表といい、地中や海への放射能の拡散を重大視しなかったことといい、東電の態度は「不可解」というしかありません。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
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福島第一 汚染水 破綻明かさず
東京新聞 2013年4月25日
東京電力福島第一原発の汚染水量が一月にはすでに、地上タンクの容量を超え、貯蔵計画が破綻していたことが分かった。危機的状況にもかかわらず、東電はタンクには余裕があると発表。その裏で、水漏れ事故が起きた地下貯水池に汚染水を投入していた。この時点で危機を公表し、真剣にタンク増設に取り組んでいれば、四月五日に発覚した汚染水漏れ事故は防げていた可能性が高い。
東電の計画は、セシウム以外の放射性物質も除去できる新たな除染装置が昨年九月に稼働することを大前提とし、新装置でさらに浄化された水を池に入れる予定だった。しかし、新装置の安全面の問題により、昨年九月と十二月の二度にわたり稼働を延期した。
計画は新装置が予定通り動かない場合の備えをせず、汚染水量がタンク容量をぎりぎり超えない程度の甘い内容だった。慌ててタンクを増設したが、年明けには水量がタンク容量を超えてしまうことが確実になった。
このため東電は一月八日、3番池に一万一千トンの汚染水を入れ始めた。続いて二月一日には、2番池にも一万三千トンを入れ始めた。
だが東電はその事実を説明せず、毎週公表している汚染水処理状況の資料で、厳しいながらもタンク容量は順調に増えていることを記載していた。
一月九日の記者会見で、本紙記者がタンクの残り容量が一週間分の処理量(約二千八百トン)を下回った点をただすと、尾野昌之原子力・立地本部長代理は「タンクは約三万トンの余裕があり、足りなくなることはない」と強調し、池に汚染水を投入したことには触れなかった。
一月十五日付以降の処理状況を示す公表資料では、実際にはタンク増設は全く進んでいないのに、池に投入した汚染水の量をタンク容量が増えた形にして公表していた。タンクが増設されたのは、二回の池への投入が終わった後の三月になってからだった。
東電広報部は「タンクの増設はすべて計画通り進めており、問題はなかった。地下貯水池に(新装置で浄化していない)汚染水を入れることも想定していた。漏れたら別の池に移し替えるつもりだったが、全ての池が使えなくなる状況は考えていなかった」とコメントした。