2013年4月17日水曜日

大飯原発停止の仮処申請を却下 大阪地裁 +

 
 16日、昨年3月に大飯原発3、4号の運転停止を求めて出された住民の仮処分申請が大阪地裁で却下されました。福島原発以外の運転の可否に対する司法判断が下されたのは、これが初めてということです。住民側は決定を不服として即時抗告する方針です

 裁判のなかで住民側は3つの活断層が連動する地震が起きれば、核分裂反応を抑える制御棒が原子炉に入るのが遅れると主張しましたが、決定は「3連動の地震は起きる可能性があるとして安全性を検討すべきだが、原子炉の制御棒の挿入時間が2.2秒(設置許可時の基準値)を超えるとは認めがたく、仮に少し遅れても危険性があるとは認められない」として、ことごとく退けました。

 福島の原発事故を踏まえて昨年夏には裁判官の研修会で、「これまでは国の手続きの適否を中心に審理して来たが、今後は安全性をより本格的に審理すべきだ」などの反省が出されたということですが、今回の決定は特に変わり目の感じられない結果でした。
 これまで20数件あった運転停止の訴訟で住民が勝ったのはたった2件で、残念ながらまたひとつ敗訴の実績が増えました。
 これは裁判官の保守性が大いに関係しているといわれています。
    ※ 1月19日付「原発訴訟はなぜいつも国側が勝利するのか」(平和の輪HP) 
              (URLをクリックすると元の記事にジャンプします)

 以下に東京新聞と福井新聞の記事を紹介します。
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大飯原発 停止認めず 大阪地裁 仮処分却下
東京新聞 2013年4月17日
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)は、地震によって重大な事故が起きる危険性があるとして、近畿を中心とした八府県の住民約二百六十人が運転停止を求めた仮処分の決定で、大阪地裁は十六日、「合理性がある安全上の基準を満たしている」として、住民の申し立てを却下した。
 
 3、4号機は昨年七月に運転を再開し、国内で唯一、運転中。東日本大震災以降、各地で原発の安全問題を追及する訴訟が相次いでいるが、東京電力福島原発以外の運転の可否に対する司法判断は初めて。
 小野憲一裁判長はまず、福島原発事故後に国が示した安全性に関する基準を検討。ストレステスト(耐性評価)の評価項目や再稼働に当たっての判断基準、緊急安全対策の内容は「福島事故の教訓を踏まえ、現在の科学技術水準に照らし、相当な根拠と合理性がある」と判断した。その上で3、4号機は対策を実施しており「国が示した基準を満たしている」と結論付けた。
 住民側は、三つの活断層が連動する地震が起きれば、核分裂反応を抑える制御棒が原子炉に入るのが遅れると主張したが、決定は「具体的な危険性があるとは認められない」として退けた。
 
 さらに「敷地内に活断層がある」との主張についても「現状では活断層と認める証拠はない」と否定。大津波の危険性についても「原発の安全限界を超える大津波が襲来する可能性は認められない」とした。
 住民側は昨年三月に申し立て、当事者の主張を聞く審尋が八回開かれた。仮処分は通常の民事訴訟で争っていては時間がかかることから、暫定的に行われる手続き。住民側は決定を不服として即時抗告する方針。

大飯原発差し止め却下に原告団憤り 大阪地裁の決定「ひどい判断」 
福井新聞 2013年4月17日
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転停止を求めた仮処分申し立てを却下した大阪地裁の16日の決定に、原告団は会見で「ひどい判断。政府や関電を後押しする決定だ」と憤った。福井県から加わった原告も「地元に住む者として不安が払拭されるどころか2倍、3倍にもなった」と無念さを隠せなかった。

 代理人弁護士は、争点となった「地震発生時に核分裂反応を抑える制御棒を、原子炉に挿入するまでに時間がかかり危険」との主張を、危険性は認められないと退けた点に「全く予想だにできなかった」と、あきれともとれる表情で述べた。
 
 大飯原発近くに三つの活断層が連動することについては「考慮すべき」との決定内容に一定の「進歩」と受け止めた。しかし、決定は「断層は地滑りが有力」との見解も示しており「断層調査は継続中で、結論は出ていない」と批判した。
 今後は抗告を含めて「有効な争い方を考えていきたい」とした。
 福井県から参加した原告団の一人、石地優さん(60)=若狭町=は主張の多くが認められなかったことで「日本の先行きが心配になった」と肩を落とした。一方「この結果を福井の人に伝えて、これからも頑張りたい」と先を見据えた。
 
 同じく原告の中嶌哲演さん(71)=小浜市=は「司法も行政の波に飲み込まれた」。福井地裁で係争中の同原発運転差し止め訴訟の原告団にも名を連ねており「福井は立地県だけに経済面や行財政界などの特別な影響がある。簡単ではないが、声を上げていくしかない」と力を込めた。