原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場に関して、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日、処分場選定に向けた「文献調査」を受け入れる考えを表明しました。町内には九州電力玄海原発があり、原発立地自治体では初となります。
今月1日に資源エネルギー庁幹部が町を訪れ、調査受け入れ申し入れ書を脇山町長に手渡したのを受けてで、町長は「最終処分場への関心が高まり、国民的議論を喚起する布石となればとの思いだ。なし崩し的に最終処分場になることはないと考えている」などと説明しました。
玄海町に隣接する伊万里市の深浦弘信市長は7日、第1段階「文献調査」実施の手続きについて「今のやり方には非常に疑問がある」と異議を唱えています。
唐津市の峰達郎市長も4月26日の定例記者会見で、「最終処分場選定のプロセスに、制度上同じ土俵に上がれない」と同種の指摘を行っています。
島根県の丸山知事は9日、仮に県内で同様の申し入れがあった場合に断固反対するとの考えを示しました。理由は島根原発の再稼働を認めることでリスクを負っている」との考えを示しました
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核のゴミ最終処分場「文献調査」受け入れ、佐賀・玄海町長が表明…「議論喚起の布石となれば」
読売新聞 2024/05/10
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場に関して、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日に開かれた町議会全員協議会で、処分場選定に向けた「文献調査」を受け入れる考えを表明した。文献調査が行われるのは全国3例目。町内には九州電力玄海原発があり、原発立地自治体では初となる。
全員協議会は同日午前10時から、非公開で行われた。終了後に記者会見した脇山町長は、受け入れを判断した理由について、「熟考し、受け入れる決断に至った。最終処分場への関心が高まり、国民的議論を喚起する布石となればとの思いだ。なし崩し的に最終処分場になることはないと考えている」などと説明した。
文献調査は3段階ある処分場選定の第1段階で、地層に問題がないか資料で調べる。町議会は4月26日に、町内3団体から出された調査実施を求める請願3件を、議長を除く9人中賛成6、反対3で採択。請願では「(核のゴミの)発生原因を有する自治体の責務として、国に協力すべきである」などとしていた。議会の採択について脇山町長は「重く受け止めている」とし、大型連休後の5月中に判断する意向を表明した。
今月1日には資源エネルギー庁幹部が町を訪れ、調査受け入れを申し入れる斎藤経済産業相名の申し入れ書を脇山町長に手渡した。7日には斎藤経産相が東京で脇山町長と面会し、調査実施を要請していた。
脇山町長はこれまで、町議会答弁で「町の方から文献調査に応募する、もしくは国からの調査申し入れを受け入れる考えはない」などと調査実施に否定的な考えを繰り返していた。斎藤経産相との面会後は「議会と、自分の考え方との間で板挟み的に悩んでいる」などと語っていたが、最終的に町議会の意思を尊重した形だ。
文献調査は北海道の 寿都町と 神恵内村で行われている。文献調査後は、ボーリングで地質などを調べる概要調査(第2段階)、地下施設での精密調査(第3段階)を経て処分場選定に進む。
概要調査以降は地元市町村長と知事の同意が必要だが、佐賀県の山口 祥義知事は、玄海原発を念頭に「新たな負担を受け入れる考えはない」と処分場建設に否定的な考えを示している。
佐賀県玄海町での核ゴミ文献調査、伊万里市長が苦言「周辺の首長に関わりなくやれる」
読売新聞 2024/05/08
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定を巡る佐賀県玄海町での動きについて、隣接する伊万里市の深浦弘信市長は7日の定例記者会見で、選定の第1段階「文献調査」実施の手続きについて「今のやり方には非常に疑問がある」と異議を唱えた。
文献調査の実施に際しては市町村長が手を挙げるか、国からの申し入れを受け入れる手続きが必要。この点について深浦市長は「隣接、近隣の首長は何の権限もない。そういう点で不安、不満、危機感がある」と述べた。
また、「(文献調査を)『やりたい』と言えば、周辺の首長に関わりなくやれる。地続きで影響がないわけではない」とし、「おそらく長崎県側、福岡県側の関係する自治体の首長も同じ思いだろう。じくじたる思いではないか」と語った。
玄海町が九州電力玄海原発の立地自治体であることについて、「原子力防災訓練への参加など、隣接市として十分負担をしている。さらなる負担は避けてほしい、というのが本音」と述べた。
唐津市長も指摘
同様に隣接する唐津市の峰達郎市長も4月26日の定例記者会見で、「最終処分場選定のプロセスに、制度上同じ土俵に上がれない」と同種の指摘を行った。
処分場について「地上には市民が暮らしている。そういう人たちの理解は絶対のことだ」と強調し、「国が責任を持って行う事業なのだから、国が説明責任を果たしてもらいたい」と語った。文献調査に唐津市として手を挙げることについては、「全くございません」と言下に否定した。
“核のごみ”最終処分場は「断固反対」原発立地の島根・丸山知事「再稼働でもリスク負っている」
TSK山陰中央テレビ 2024/5/9
佐賀県玄海町が5月10日に受け入れの可否を表明するいわゆる「核のごみ」の最終処分場選定の調査について、島根県の丸山知事は9日、仮に県内で同様の申し入れがあった場合に断固反対するとの考えを示しました。
島根県・丸山知事
「そんなことを島根県で受け入れるつもりは私はない、仮にそんな話があがってくれば、断固反対。島根県知事としてできることは全部やって反対する」
9日の定例会見で、島根県の丸山知事が語気を強めて反対したのが、原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場の受け入れについてです。
この最終処分場をめぐっては、九州電力の玄海原発が位置する佐賀県玄海町が、国から選定の第一段階である「文献調査」の申し入れを受けていて、10日に町側が可否を判断する見込みとなっています。
丸山知事は建設地の選定をめぐり、仮に国から最終処分場の文献調査の申し入れがあったとしても断固反対すると話し、その理由について「島根原発の再稼働を認めることでリスクを負っている」との考えを示しました。
島根県・丸山知事
「再稼働を認めること自体でリスクを負っているわけですよ。それに加えてそんなことまで引き受けなきゃいけない、そんな責任なんてないでしょ、万が一の事故の時になんとか、策定している避難計画をもとに円滑に避難してもらう、その責任を果たすので手一杯です」
丸山知事はこのように述べ、原子力発電所が立地する自治体として「最終処分場まで受け入れる余裕はない」との考えを強調しました。