東電福島第1原発の敷地境界で計測される放射線量が、12月の段階で規制値・1ミリシーベルト未満/年 の8倍に上昇したことが、規制委の発言からわかりました。
境界線量は昨年3月では最大で0・5ミリシーベルト/年 でしたが、4月に地上タンクに汚染水を移したことなどにより12月には最大で7・8ミリシーベルト/年 まで上昇したということです。
これはタンク内の汚染水に含まれるストロンチウム90などから出るベータ線が、タンクの鉄材と反応して「制動放射」でエックス線を発生させるためで、密集したタンクから大量のエックス線が出て周囲の空間線量が上がったものです。
「制動放射」、「エックス線」などと聞くとただびっくりしますが、この現象は放射線の専門家にとっては基礎知識に過ぎないようで、ウィキペデアの「ベータ線」「遮蔽」の項には、下記のとおり記載されています。
「ベータ線 遮蔽」
ヘリウム4の原子核であるアルファ粒子は一枚の紙で遮蔽できる。ベータ線の実体である電子では 1 cm のプラスチック板で十分遮蔽できる。電磁波であるガンマ線では 10 cm の鉛板が必要となる。
透過力は弱く、通常は数 mm のアルミ板や 1 cm 程度のプラスチック板で十分遮蔽できる。ただし、ベータ粒子が遮蔽物によって減速する際には制動放射によりX線が発生するため、その発生したX線についての遮蔽も必要となる。
遮蔽物に使われる物質の原子番号が大きくなるほど制動放射が強くなることから、ベータ線の遮蔽にはプラスティックなどの低原子番号の物質を使い、そこで発生したX線を鉛などの高原子番号の物質で遮蔽する、という二段構えの遮蔽を行う。
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東電がこうした事柄を自分からは決して言い出さない点は、これまでどおりのことです。
幸い原発敷地の周辺には住民はいないので影響はなさそうですが、現場にいる人たち、特に定期的に汚水タンクを巡回監視している人たちの健康への影響はどうなのでしょうか。
まことに次から次にいろいろな事態が発生するものです。
根本的に解決するためには汚染水から(トリチウム以外の)放射性物質を取り出すしかありません。多核種除去装置=ALPSはクレーンの故障が収まったので運転を開始しましたが、非常に不安定な装置のためフル稼働とは程遠い状態です。
10日付Sankei Bizの記事を紹介します。
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福島第1、敷地境界で基準の8倍線量 規制委が低減求める見解
Sankei Biz 2014年1月10日
原子力規制委員会は10日、東京電力福島第1原発の構内と外部を隔てる敷地境界で計測される放射線量について、廃炉の実施計画で定めた年1ミリシーベルト未満とする目標の約8倍に上る状態が続いていることを問題視し、東電側に期限を決めて低減するよう見解を示した。専門家や東電を交えた検討会で議論した。
規制委によると、境界線量は昨年3月に最大で同0・5ミリシーベルトだったが、同4月に地下貯水槽の汚染水漏れでタンクに移水などにより、同12月には最大で同7・8ミリシーベルトまで上昇した。
タンク内の汚染水に含まれるストロンチウム90などから出るベータ線がタンク鉄材と反応し、透過能力が強く遠くまで到達する「制動エックス線」が発生。タンク増設で大量のエックス線が周囲の空間線量を上昇させたことが主な原因だ。
検討会合で規制委の更田豊志委員は「(年1ミリ未満とした)目標値が青天井で続いているのは良いことではない」と述べ、監視体制強化の必要性を強調。一方、高木郁(いく)二(じ)京都大教授は「(原発周辺に)住民はいない中で、放射線防護を適応するのはどうか。一時的に規制を緩めた方が収束が早くなるのではないか」などの異論も出た。