政府は、小泉元首相が使用済み核燃料の最終処分場(の建設の見通し)がないのに原発を推進するのは間違っているとする「原発ゼロ」発言が国民に浸透するのを警戒して、処分場の適地を提示して今年中にも調査を申し入れたいとしています。
処分地の選定については、原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)が2002年に立地の公募を始め、これまで約500億円の経費を使いましたがまったく進捗していません。
また日本学術会議は2年がかりで検討した結果、2012年9月に、「地中深くに埋める国の最終処分計画は安全とは言えない。地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しい。」との結論を出し、核燃料処分に関する政策の白紙見直しを求める提言をまとめています。
処分地の選定は地球規模でも容易ではなく、処分地が決定したのはフィンランドとスウェーデンの2カ国だけというのが実情で、地震や火山などの地下活動が活発な日本列島で適地を探すのは無理だということです。
そうした実情にもかかわらず、ここで政府が何の優位性もない原発推進のために、やにわに適地を決めてしまおうというのは明らかに無謀です。学術的に保証出来ないものを政治優先で決めようというのは正に「政治的決定」であって、誰をも説得できません。まして一内閣の独断で決めてしまうなどということは許されません。
そんな無理(=虚構)をしないと原発が推進できないというところに、原発の不合理性があります。
日本学術会議の提言、NUMO=ニューモの記事も併せて紹介します。
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「核のごみ」の処分地選定急展開か
政府、小泉元首相の「原発即ゼロ」発言浸透を警戒
地域議論置き去りとの批判も
北海道新聞 2014年1月5日
高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定問題が今年、急展開しそうだ。政府が、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ発言」の浸透を警戒し、脱原発派が追及する「処分地選びの遅れ」を一気に解消しようとしているからだ。春にも科学的な観点から道内を含む全国の「適地」を提示。その後、複数の候補地域に絞り込み、今年中にも調査を申し入れたい考え。だが、強引な進め方に有識者からは異論も相次いでいる。
処分地の選定をめぐっては、原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)が2002年に立地の公募を始めたが、作業はまったく進んでいない。政府は今春をめどに最終処分に関する基本方針を改定。自治体が応募する従来の方式から国が候補地を示す方式への転換が柱で、それを踏まえ、時間を置かずに適地を提示する見通しだ。
政府が選定に向けた動きを早めるのは、小泉元首相の発言があったからだ。小泉氏は「再稼働すれば核のごみはまた増える。原発は即ゼロにした方がいい」などと主張、安倍晋三政権に「大変なインパクト」(政府関係者)と動揺が走った。
一方、処分地選定のあり方を検討している総合資源エネルギー調査会の放射性廃棄物作業部会(増田寛也委員長)は、政府の“急発進”に反発を強める。昨年12月の会合では「『地域主体で』と議論していたのに、なぜ急に、国が調査を申し入れることになったのか」「国民が求めているのは合意形成の共有だ」と批判が相次いだ。
海外でも選定作業は容易ではない。処分地が決定したのはフィンランドとスウェーデンの2カ国だけで、米英独などは未定だ。日本国内では、地質の頑丈さに対する不安や原子力行政への不信感が強い。政府の思惑通り選定にこぎ着けるか、予断を許さない。
核のごみ 地中廃棄「白紙に」 学術会議 原子力委へ提言
東京新聞 2012年9月11日
地中深くで最終処分するとしながら、原発で使った核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の行き先は一向に決まらない。打開策を検討していた日本学術会議(会長・大西隆東大大学院教授)は11日、地中深くに埋める国の最終処分計画は安全とは言えないとし、処分に関する政策の白紙見直しを求める提言をまとめ、原子力委員会に提出した。
使用済み核燃料を再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物は、毎時1500シーベルト(150万ミリシーベルト)と人がわずか20秒で死に至る放射線を放つ。国は2000年、廃棄物をガラスで固め、地下300メートル以上の地層に埋める「地層処分」とするよう関連法で決めたが、処分地は白紙のままだ。
今回の提言は、原子力委から打開の糸口を見つけてほしいと要請された学術会議が、原子力工学や地質学、歴史、社会、経済など各分野の研究者で検討委をつくり、二年がかりで検討してきた。
提言は、地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しいと指摘。
処分場が決まらない理由は、どれくらいの量の核のごみなら受容できるか社会的な合意がないまま、一部の関係者で原発の稼働、そこから出る核のごみの処分といった方針を決定してきたことにあると批判。交付金などのお金で処分地を決めようとする方針は、「かえって問題を深刻化させる」と根源的な問題があると指摘した。その上で、「政策をいったん白紙に戻す覚悟で見直すべきだ」と結論付けた。
安全な処分方法が見つかるまでの数十~数百年の間は、地中深くではなく、いつでも移送できる形で暫定的に保管するよう提言。保管を担う地域には交付金などで無理やり納得させるのではなく、保管地に政府機能の一部を移転して安全性への信頼を得るべきだと訴えた。
ただ、提言内容の通り、将来に安全な処分方法が確実に見つかる保証はない上、暫定的に保管といっても、事実上の最終処分になってしまわないか、地域の懸念をなくすのは難しい。提言の実効性には疑問があり、核のごみの根源的な問題点を見せつけた。 (榊原智康)
原発ごみ処分場探し487億円 12年間で候補地ゼロ
朝日新聞 2012年9月2日
原発で使い終わった核燃料から出るごみを地中に埋めて捨てる「最終処分場」を探すために、昨年度までの12年間で計487億円かかっていたことが朝日新聞の調べでわかった。おもな電力会社が集めた電気料金ですべてまかなわれ、処分場探しを担う組織の人件費や広報費として大半が使われてきた。だが、処分場はいまだに決まらず、処分計画は宙に浮いたままだ。
「脱原発」を進める場合には、処分場の必要性がより高まる。このため、経済産業省は今後、お金の使い方や処分場探しの方法を見直す方針だ。
処分場探しを担う「原子力発電環境整備機構(NUMO〈ニューモ〉)」の財務資料を集計し、NUMOができた2000年以降に使われたお金の流れが明らかになった。
11年度の費用は計35億円で、テレビCMなどの広報活動に8億円、人件費に12億円が使われた。東京電力福島第一原発の事故後、広報費を以前の3分の1に減らしたが、それでも広報費と人件費だけで費用全体の6割弱を占めていた。