福島県民健康管理調査の甲状腺検査(福島原発事故時18歳以下対象)は、26年度から2回目の検査に入りますが、25市町村の対象者約21万人のうち、約3万人がまだ1回目の検査を受けていないことが分かりました。
震災後、進学・就職に伴い転居した人や就学前の子どもに未受診者が多いということで、対象者の約15%に上ります。
検査を受けないと当然甲状腺がんなどの発見がその分遅れます。なぜこれまで放置されていたのでしょうか。
検査を実施している福島医大は3月に追加検査を行うということです。
福島県の甲状腺検査ではこれまで実に多くの問題点が指摘されてきました。
まず受診者の36%とか44%の甲状腺に「しこり」や「のう胞」が認められましたが、その結果を受診者や父兄たちに丁寧に説明しなかったこと※1に始まって、受診結果をチャンと渡さなかったり他の医院での受診を事実上禁止したりなどしました。
それに対してヒューマンライツ・ナウ(HRN)や市民団体は、福島医大に抜本的改善を求めました※2。
また健康管理調査について議論する検討委員会が、明らかになった“がん”患者について、事前に秘密準備会を開いて「原発事故との因果関係はない」と答えるのを申し合わせた※3ことも明らかにされました。
※1 2012年9月13日「衝撃!!福島市18歳以下の甲状腺に“しこりやのう胞あり”が
44%」
44%」
(青字のURLをクリックすると当該の記事にジャンプします。以下同)
※2 2012年9月5日「福島医大による甲状腺検査体制の抜本的改善を求める意見書が」
2012年9月24日「市民団体が福島医大に甲状腺検査の改善を求める」
※3 2012年10月3日「福島健康調査でも『秘密会』という暗闇が・・・」
そうした中でも最大の問題点は、2013年8月の段階で甲状腺がんの確定数が18名、がん疑い者数が25名という極めて深刻な事態が確認された※4ことです。
※4 2013年8月21日「福島児童のがん確定数は18人に(平成25年度)」
※4 2013年8月21日「福島児童のがん確定数は18人に(平成25年度)」
18歳未満での通常の発生比率は100万人当たり1~2人といわれています。それに対して福島県での発生率は下表の通りで、まさに桁外れに大きいものです。
福島児童 甲状腺がん 検査結果 累計数 (H25 年8月) (単位:人)
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受診児童数
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がん確定数
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がん疑い者数
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(確定+疑い)数
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213,366 ⇒ 183,000
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18
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25
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43
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100万人当たり換算
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84 ⇒ 98
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117 ⇒ 137
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201 ⇒ 234
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註. 原表は 2013年8月21日「福島児童のがん確定数は18人に(平成25年度)」 に掲載。
青字は受診児童数を3万人減(⇒約183,000人)として算出し直した数字です。
元の表では8月当時 受診児童数が公表されなかったので、該当者全員が受診したと考えて比率を求めました。青字は受診者総数を約3万人減にして再計算した結果です。
いずれにしても実に膨大な比率なのですが、不思議なことに福島医大や検討委員会はいまでもがん患者が原発事故時の被曝に起因することを認めていません。それなら一体何が原因でこの異常事態が発生しているというのでしょうか。
チェルノブイリ原発事故では、ベラルーシの児童の甲状腺がんは事故後4年目から爆発的に増加しました。福島では来年が4年目に当たります。果たしてどうなるのか、恐ろしいというほかはありません。
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甲状腺検査3万人未受診
福島民報 2014年1月25日
東京電力福島第一原発事故を受けた県民健康管理調査の甲状腺検査(東日本大震災発生時18歳以下対象)で、平成26年度に2回目の検査が開始される25市町村の約21万人のうち、約3万人が1回目の検査を受けていないことが分かった。福島医大は県民の健康管理に向けたデータ蓄積に支障があるとして3月、緊急的に追加検査を実施することを決めた。
26年度から2回目の検査に入るのは、原発事故の避難区域や比較的放射線量の高い県北地区と県中、県南の一部の25市町村。1回目の検査は原発事故発生後、3年以内の甲状腺の状態を把握するのが目的。今後の検査結果と比較する上で、データ蓄積が不可欠となっている。
さらに検査を受けないと、甲状腺がんなどの発見が遅れる可能性もある。
県は学校などで受診する機会を設けたが、震災後、進学・就職に伴い転居した人や就学前の子どもで検査を受けていない場合が多いという。未受診者は対象者の約15%に上る。
さらに、震災時に居住していた市町村内や周辺地域での検査が原則となっていたため、自主避難を含め転居したケースでは受診しにくい状況にあった。県は受診率向上に向け、追加検査を現在の居住地に近い会場などで受け付けるようにする。
追加検査は1回目の検査の未受診者を対象に3月中旬から下旬にかけ、福島、郡山、西郷、会津若松、南相馬、いわきの6市村のホテルや商業施設などで実施する。1日1会場で行う。
検査を担う福島医大の担当者は「現状を把握し、県民の健康を見守るためには、甲状腺の現状を把握することが欠かせない。多くの人に受診してほしい」と呼び掛けている。
県外避難者の未受診者に対しては、県と提携している県外46都道府県の80医療機関での実施を促す。
甲状腺検査は2回目の検査以降、対象者が20歳になるまで2年に1度実施。その後は5年に1度調べる。
※甲状腺検査
震災時に18歳以下だった県民約37万人が対象。1回目の検査でしこりの大きさなどを調査。軽い方から「A1」「A2」「B」「C」と判定し、BとCが2次検査を受ける。県は2回目の検査に向けた態勢を拡充し、41医療機関で実施できるようにした。今年8月ごろから検査を開始する方針。