2014年1月8日水曜日

原発の安全審査より避難計画の作成が先 しかし・・

 毎日新聞が「原発の安全審査 避難計画の作成が先だ」とする社説を掲げました。
 原発の周辺自治体のうちで、原発事故に備えて避難の経路や手段を定めた避難計画を作成できたところは、まだ4割に過ぎませんその中でも、机上で作成した避難計画の通りの時間スケジュールで、避難が実行できることを確認しているところは、皆無なのではないでしょうか。
 
 避難計画はただ作ればいいというものではなく、でき上がった避難計画の妥当性・実効性をきちんと評価することが、死活的に重要です。避難時の交通事情の解析には、必要ならスーパーコンピューターも活用すべきでしょう。
 そうした作業の中で、人口密度の高い日本に原発を設置したことの無謀さが、あぶりだされるにちがいありません。
 
 社説は、法的には避難計画整備は再稼働の必要条件ではないことにふれ、安全審査に加え自治体の避難計画作成と実効性の確保も再稼働の必要条件だとしています。
 その点米国では法的に確立されているらしくて、避難計画を立てられなかったため廃炉になった原発もあるということです謀略国家、侵略国家、マルチスタンダード等々と、米国を批判する言葉には不自由しませんが、その一方で、そうした考え方を持っている米国の合理性はさすがです。日本もそういう点をこそ学び取り入れるべきです。
 
 では、避難計画が完全でその実効性が100%確認されたなら、原発は再稼動できるのでしょうか? 勿論そんなことにはなりません。
 事故直後に住民が大量の被曝をすること自体は防げても、その後に無数の「流離の民」が生まれることまで防ぐものではありません。そして彼らに対して国が何もしてくれないことはもう明らかにされています。
 
 仮に冬季に柏崎刈羽原発が過酷事故を生じた場合には、中越地区は勿論、関東地域一体も放射能で汚染されるので、国は破綻状態になるでしょう(福島原発事故では時間帯の90%以上が西風でしたが、それでもあれだけの放射能汚染を生じました)。
 そんなリスクを背負ってまで、何のメリットもない原発の再稼動を進めるなどは狂気の沙汰です。
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(社説原発の安全審査 避難計画の作成が先だ
毎日新聞 2014年01月07日
 昨年末、東北電力が女川原発2号機(宮城県)の安全審査を原子力規制委員会に申請した。東日本大震災の被災地で、原発再稼働の前提となる安全審査の申請は初めてだ。これで、昨年7月の原発新規制基準施行から約半年の間に、7電力会社の9原発16基が申請されたことになる。
 経営状況の改善を理由に電力各社は再稼働を急ぐが、周辺自治体の多くは原発事故に備えて避難の経路や手段を定めた避難計画を作成できていない。法的には、避難計画整備は再稼働の必要条件ではないものの、避難計画なしの再稼働は原発の安全神話を復活させることに等しい。
 政府は、安全審査に加え、自治体の避難計画作成と実効性の確保も再稼働の必要条件だと明言すべきだ。
 
 最近の世論調査を見ても、多くの国民が脱原発依存を望んでいる。
 ところが、政府が年末にまとめたエネルギー基本計画の素案は原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけ、将来にわたり一定の規模を確保する方針を打ち出した。規制委の審査で安全性が確認された原発は再稼働を進めるという。
 新規制基準は達成すべき最低限のものだ。安倍政権も原発依存度を引き下げる方針を掲げる。ならば、事故のリスクと共存する中で、原発をどれだけ動かす必要があるかを政府主導で見極め、地震の恐れや老朽化の度合いが高い原発から順次廃炉にしていくのが筋である。
 女川原発は大震災で想定を超える揺れや津波に襲われた。主要機器は健全だったと東北電は言うが、事故への不安から、再稼働に反対する周辺自治体があることもうなずける。
 
 大震災後、国の原子力災害対策指針が見直され、原発30キロ圏の全国135市町村で、事故に備えた住民の避難計画を作成することになった。
 だが、内閣府の調査(昨年12月2日時点)では、作成済みの市町村は4割にすぎない。安全審査を申請した女川原発と東京電力柏崎刈羽原発では、対象市町村すべてで避難計画ができていない。今年度中に安全審査を申請予定の中部電力浜岡原発でも、作成済みの自治体はゼロだ。大震災による被災や周辺人口の多さなど、避難計画の作成にはさまざまな困難が伴う。
 仮に避難計画ができたとしても、訓練を繰り返して、実効性を確認しなければ意味がない。本来なら、新規制基準で、避難計画の作成を原発稼働の前提としておくべきだった。米国では、避難計画を立てられず廃炉になった原発もある
 政府は昨年秋から、市町村の避難計画作成の支援に乗り出している。支援の充実を図るとともに、でき上がった避難計画の妥当性をきちんと評価する必要がある。