福島原発事故による避難に伴う賠償金を巡り、東電が昨春以降、社員に対し既に支払った1人当たり数百万円から千数百万円の賠償金を、事実上返還するよう求めていることが関係者の証言で分かりました。
避難者に対する補償の国の指針は、①精神的損害(月10万円) ②交通費など自宅への一時立ち入り費用 ③避難先で購入した家電製品 などの賠償を定めているので、東電社員にも他の被災者と同様賠償金を支払っていましたが、一昨年秋には賠償金の支払いを停止し、昨春以降は東電が社員に対し既に支払った1人当たり数百万円から千数百万円の賠償金を、事実上返還するよう求めるようになりました。
社員が「立ち入り制限のない区域の賃貸住宅に転居した時点で避難は終了」という理由によるものです。
ある社員が13年に原発ADRに申し立てたところ、ADRは東電の主張を退け「避難は現在も続いている」とし、賠償金の返還義務を否定したうえで、逆に数百万円の支払いを東電に命じる和解案を示しましたが、東電は拒否しました。
東電の冷たい仕打ちに、原発事故後高線量作業に震えながら耐えてきた若手社員たちは、続々退社しているということです。
(下記の記事はブログ「原発のウソ」より転載)
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福島原発事故避難: 東電 社員に賠償金返還を要求
毎日新聞 2014年1月4日
◇ADR和解案を拒否のケースも
東京電力福島第1原発事故による避難に伴う賠償金を巡り、東電が昨春以降、社員に対し既に支払った1人当たり数百万円から千数百万円の賠償金を、事実上返還するよう求めていることが関係者の証言で分かった。
確認されただけで、総額は1億円を超えるとみられる。中には、東電が尊重すると公表している政府の「原子力損害賠償紛争解決センター」(原発ADR)による和解案を、自ら 拒否したケースもある。
国の指針は、避難者に
(1)精神的損害(月10万円)
(2)交通費など自宅への一時立ち入り費用
(3)避難先で購入した家電製品−−などを賠償すると定める。
東電社員も他の被災者と同様、賠償金の支払いを受けてきた。
しかし、ある男性社員は、2012年秋に賠償を打ち切られた。「立ち入り制限のない区域の賃貸住宅に転居した11年夏の時点で避難は終了したとみなす」というのが理由だ。転居前も賃貸住宅に住んでいたのだから、別の賃貸住宅に引っ越した段階で避難は終了した、という。しかし、社員以外なら引っ越しを伴う以上、賠償は打ち切られない。
男性社員を驚かせたのは昨春、賠償実務を担う東電の「福島原子力補償相談室」(東京都千代田区)から届いた文書。「控除させていただく調整額について」との表題に続き「(既に)お支払いした金額と、正しく算出した金額が異なっていることが確認された」として、差額が数百万円に達すると記載されていた。東電側は、引っ越し(11年夏)以降に受領した数百万円の差額を「もらい過ぎ」と判断したとみられる。
男性社員が相談室に電話し「控除」の意味を聞くと「今後の支払いから相殺する」と答えた。賠償を打ち切られ、今後の支払いのない社員にとっては事実上の返還請求だ。男性が「今すぐ返せというのか」と重ねて聞くと「返還方法は決まっていない」と答えた。
男性社員は13年に原発ADRに申し立て。原発ADRは東電の主張を退け「避難は現在も続いている」とし、賠償金の返還義務を否定したうえで、逆に数百万円の支払いを東電に命じる和解案を示したが、東電は拒否した。
複数の証言を総合すると、返還請求を受けている社員は少なくとも15人おり、総額は1億円を超す。ある社員は取材に対し「賠償を打ち切られた社員は約100人。その多くが返還請求を受けている」と話した。
東電は10月、福島県内で執行役ら幹部と社員との意見交換会を開いた。毎日新聞が入手した、その際のやり取りを記録した音声データによると、社員らは「振り込まれた金まで返せということで、皆の怒りが爆発している」と憤った。幹部は「よく調べてみます」と述べたが、その後も対応は変わらないという。【高島博之、小林直】