電力会社、政府、財界はなぜか原発の再稼動を焦っていますが、これまで出された9つの原発の再稼動申請では、昨年末までに必要な全27の項目の資料を提出できた電力会社はありませんでした。
審査項目で最も重要な耐震性を評価する基準となる「地震の規模の想定」については、いずれも従来通りの想定になっていて「妥当」と評価された原発は1つもありませんでした。これは要するに現有の装置強度で耐えうる地震の規模しか、電力会社は想定していないということに他なりません。
想定される地震の規模に対して耐震強度が不足すれば、当然装置を作り直しするか十分に補強することが要求されて大変な出費になるからです。
日本では震度6ですべての原発が壊れるといわれています(武田邦彦氏)。
東日本大震災以前で一番大きな水平加振力が加えられた地震は中越沖地震で、柏崎刈羽原発には2000ガル以上が加わり3600箇所が破損しました。東日本大震災では更にそれを上回りましたので、つなみが襲う以前の段階で装置のあちこちで水が噴出したことが朝日新聞の「プロメテウスの罠」などで明らかにされています。
問題はそうした柏崎刈羽原発や福島第1原発が実際に受けた地震による加振力が、新規の安全審査基準に盛られていないことです。まず申請者側に想定させて、それを規制委が判定するというやり方のようです。なぜなのでしょうか。
建築基準法では、1934年(昭和9年)9月に西日本を襲った室戸台風で史上最大風速60m/秒を記録したことをベースにして、その風速(=風力)にも耐えられるようにと、2000年に改定されるまでは耐風強度基準を61m/秒にとってきました。これが本来の設計基準のあり方で、たとえ1回でも生じたことであればそれに耐えるように基準を決めるという精神です。
煙突が倒れたり建築物が損壊するのも大変な災害ですが、それでも原発の被害とは比較になりません。
原子力規制委には勇気を持って対処して欲しいものです。
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原発審査長期化で運転再開見通せず
NHK NEWS WEB2014年1月1日
原子力発電所の運転再開の前提となる国の安全審査は、3年前の原発事故を踏まえた新たな基準に基づいて行われ、今月中旬で半年を迎えます。
しかし、重要な項目となっている地震の規模の想定を、「妥当」と評価された原発は1つもなく、当初、半年かかるとされた審査はさらに時間がかかる見通しで、運転再開の時期は見通せない状況です。
東京電力福島第一原発の事故を踏まえ、原子力規制委員会は、去年7月、深刻な事故への対策を初めて義務づける、新たな規制基準を設け、電力会社7社から合わせて9つの原発について運転再開の前提となる安全審査が申請されました。
規制委員会による新基準に基づく審査の会合は65回開かれましたが、初期から審査が続く6原発では、必要な27の項目の資料を計画どおり去年のうちにすべて提出できた電力会社はありません。
また、重要な項目となっている、耐震性を評価する基準となる地震の規模の想定については、いずれもこれまでの想定を変えずに対策が進められていて、「妥当」と評価された原発は1つもありません。
このため、6原発でも原子炉など安全上重要な施設が、大きな地震に耐えられるかを見極める確認作業はこれからで、当初、半年かかるとされた審査はさらに時間がかかる見通しです。
規制委員会の田中俊一委員長は先月25日の会見で、「今は審査会合を見ている段階で審査がいつ終わるのかという見通しがあるわけではない」と話しています。
電力会社は経営上の理由などから早期の運転再開を目指していますが、審査終了後には地元自治体の同意を得ることも不可欠で、再開の時期は見通せない状況です。