日本原燃は7日、青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場の稼働に向け、新規制基準に基づく安全審査を原子力規制委員会に申請しました。
再処理工場は、高速増殖炉「もんじゅ」とともに核燃料サイクル計画の柱に位置づけられるものですが、この核燃料サイクルには安全性、経済性、そして核拡散防止のいずれの観点からも問題があります。
再処理工場は1993年に着工し97年には完成の予定でしたが、トラブル続きで完成時期が20回も延期され、当初見込んでいた約7600億円の建設費も約2兆2000億円に膨らみました。また工場が設置されている下北半島の沖には「大陸棚外縁断層」(延長85キロ)が南北に走っているため、その活動性を慎重に調査する必要もあります。
核燃料サイクルのもう一つの柱である高速増殖原型炉「もんじゅ」も、既に1兆円以上の費用を投じましたがいまだに動く見込みはありません。従ってこのままでは、仮に再処理工場でプルトニウムを取り出したとしても、それを燃やすあてはありません。
またこの高速増殖炉は水や空気に触れると爆発する液化ナトリウムを熱媒体に使うので、一旦事故が起きれば対処の方法がないという、危険極まりない設備です。
日本はこれまでイギリスに使用済み核燃料の再処理を依頼しており、既に44トンのプルトニウムが蓄えられています。この先も核兵器の材料となるプルトニウムをためこむばかりでは、国際社会の懸念を招くし、テロの脅威も増します。
ところで核燃料の再処理には膨大なコストが掛かり、採算性は全くありません。
電気事業連合会は、再処理工場を40年間稼働させた場合、処理し切れない「核のごみ」の管理費などを合わせると、約19兆円かかるという試算を、10年前に行っています。
原子力委員会の小委員会も一昨年、使用済み核燃料の全量直接処分(=地中埋設)が、全量再処理や再処理・直接処分併用よりも安上がりだという評価をしています。
このように技術的に見通しが立たず、極めて危険である上に採算性もなく、運転するには膨大なコストのかかる核燃料サイクルシステムに、一体いつまでこだわるのでしょうか。
昨年春、「もんじゅ」の実証研究の継続の可否について審議した文科省の有識者会議は、「重要な技術なので継続する」という、何の緊張感もない結論を出しました。文科省に「もんじゅ」は止めるという決断がなければ、そうした不毛の結論になるのは自明のことです。
見通しの暗い技術に、国民から集めた電気料や税金をこの先も無尽蔵に注ぎ込もうというのでしょうか。核燃料サイクルを推進してきた政府と原子力関係者は、もうこの辺でその破綻を認めるべきです。
以下にしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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破綻の核燃サイクルに固執 再処理工場の稼働申請
日本原燃 安倍政権の原発推進と一体
しんぶん赤旗 2014年1月8日
日本原燃は7日、青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場の稼働に向け、その前提となる新規制基準への適合性審査を原子力規制委員会に申請しました。
再処理工場は、政府・電力会社が高速増殖炉「もんじゅ」とともに核燃料サイクル計画の柱と位置づけており、全国の原発再稼働の前提となる施設。未確立の技術でトラブルが続き、原発以上に危険と指摘される同工場の審査申請の背景には、国民の強い反対の声を無視して、原発の再稼働を進める安倍政権の暴走があります。
規制委は昨年12月18日、再処理工場など核燃料サイクル施設の新規制基準を策定。過酷事故への対応などを盛り込みました。
原燃は、新基準に対応するとして、移動式ポンプや放水設備の配備、防水扉などの設置のほか、想定する地震の揺れ(基準地震動)を450ガルから600ガルに見直し、一部設備の耐震補強工事などを進めています。工場完成は今年10月をめざしているといいます。
原燃は再処理工場のほか、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料加工施設などについても申請しました。
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核燃料サイクル 原発の使用済み核燃料からウランやプルトニウムなどを取り出し、再び燃料として利用する仕組み。国策として進められてきました。
撤退しかない
核燃料サイクル立地反対連絡会議代表委員・共産党青森県議 諏訪益一氏
新規制基準は過酷事故を想定していますが、一度過酷事故が起これば、もはや制御できないということを東京電力福島第1原発事故は教えているのです。
再稼働、本格稼働を前提とした新規制基準は、新たな安全神話を生むだけです。選択すべきは、原発、核燃サイクルからの撤退以外にありません。防災計画、避難計画も、過酷事故が発生したら、機能しないと指摘されています。そういった問題も解決していないで、適合性審査の申請は許されるものではありません。
解説
完成時期20回も先延ばし
再処理工場は、全国の原発で発生した使用済み核燃料を集め、燃え残りのウランと、生成したプルトニウムを取り出す「放射能化学工場」です。使用済み核燃料に含まれるさまざまな放射性物質(高レベル放射性廃棄物=「死の灰」)も同時に取り出されます。
1993年に着工し、97年に完成予定でしたが、事故やトラブルが続出し、完成時期を20回も先延ばしせざるを得ませんでした。世界各地の再処理工場では爆発事故などが相次ぎ、工程自体、確立されていないことを示しています。
また、再処理工場など原子力施設が集中する下北半島の東側の海底には長さ約84キロの「大陸棚外縁断層」があり、その南側の活断層とつながって、M(マグニチュード)8級の地震が発生する可能性が指摘されています。
取り出したウランとプルトニウムからつくる混合酸化物(MOX)燃料を燃やす「もんじゅ」も事故続きで稼働の見通しが立っていないどころか、廃炉が焦眉の課題となっています。
また、高レベル放射性廃棄物は、地中に埋める(地層処分)としていますが、そのめどはありません。
しかし、安倍政権は、今月に閣議決定しようとしている「エネルギー基本計画」案で、核燃料サイクル政策を「着実に推進する」と明記しています。至る所で行き詰まった核燃料サイクルを無理やり進めれば、いっそう深刻な事態を引き起こすことになりかねません。
(「原発」取材班)