2023年4月12日水曜日

敦賀原発2号機の申請書不備 8月末までに修正し再提出の方針

 日本原電敦賀原発2号機の再稼働に向けた安全審査の資料で誤りが相次いだため規制委が審査の再中断を決めた問題で、原電の村松衛社長は11日、審査の申請書の一部を修正して8月末までに提出し直す方針を明らかにしました。これを受けて規制委は来週、再提出するよう原電に行政指導する見通しです

 京都新聞はこれに関連して「敦賀原発の審査 事業者として資質に欠ける」とする社説を出しました。経過の概要に触れていますので併せて紹介します。
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敦賀原発2号機の申請書不備 8月末までに修正し再提出の方針
                            毎日新聞 2023/4/11
 日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に向けた安全審査の資料で誤りが相次いだため原子力規制委員会が審査の再中断を決めた問題で、原電の村松衛社長は11日、審査の申請書の一部を修正して8月末までに提出し直す方針を明らかにした。この日、規制委の臨時会が開かれ、出席した村松社長が表明した。これを受けて規制委は来週、再提出するよう原電に行政指導する見通し。
   地図でわかる】敦賀原発ってどこ?断層はどこ?
 規制委は5日の定例会で、申請書のうち原子炉直下の断層に関する部分を修正するよう原電に行政指導する方針と、審査の中断を決定。意思確認のため村松社長を呼んだ。敦賀2号機の審査は、断層データの無断書き換え問題が発覚して約2年間中断し、昨年12月に再開されたばかりだった。
 村松社長は「当社の審査資料の作成の業務プロセスを(書き換え問題を受けて)見直したにもかかわらず、新たな誤りを確認したことを重く受け止めている」と陳謝。「申請内容について8月31日までに一部補正を行う」と述べた。
 山中伸介委員長は村松社長に対して「審査ができない状態が続くのは非常に好ましくない状態だ。これが最後というつもりで、審査ができる資料を提出していただきたい」と述べた。【土谷純一】


社説:敦賀原発の審査 事業者として資質に欠ける
                            京都新聞 2023/4/11
 原発の安全に責任を持つ事業者として、資質に欠けると言わざるを得ない。
 原子力規制委員会は、日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に向けた審査を、再び中断する方針を決めた。
 原電が審査資料の誤記などを繰り返し、改善がみられないためだ。審査再開からわずか数カ月でのストップは異例の事態だ。
 改めて原電に対し、申請書を補正し、8月末までに提出し直すよう行政指導する。
 山中伸介委員長は、審査について「打ち切りも含め、最後の決断をしないといけない時期だ」との認識を示し、再稼働を不許可とする可能性も示唆している。
 安全性審査への不誠実な対応から見れば、当然だろう。原電の存在意義そのものが疑われている。
 敦賀原発を巡っては、規制委の調査団が2013年、2号機原子炉直下にある断層を将来動く可能性がある「活断層」と指摘した。新規制基準では、重要施設の直下に活断層があれば再稼働できない。原電側は15年に再稼働の審査を申請し、反論してきた。
 だが、地震や津波対策に関する審査資料で、千カ所以上もの記載不備が発覚した。20年2月には、地質データで80カ所も無断で書き換えていたことが判明し、審査は約2年間にわたり中断された。
 昨年12月に再開されたが、原電は根拠を示さず157カ所を修正した資料を提出。先月には、地層の観察場所を間違えるミスがわかった。規制委側が指摘しなければ見つからない可能性があった。
 常識的にありえない不手際で、故意にしろ能力不足にしろ、原発事業者として許されない活断層を否定しきれないため、自分たちに有利な証拠が見つかるまで、時間稼ぎをしているようにも見える
 原電が所有する原発は、敦賀2号機と東海第2原発(茨城県)だけである。いずれも東京電力福島第1原発事故後、停止したままだ。原発専業の電力会社のため、廃炉になれば収益源を失い、事業継続が難しくなる可能性がある。
 原発は停止中であっても、巨額の管理費や安全対策費がかかる。受電契約を結ぶ東京、関西、中部など電力各社は、維持費に相当する「基本料金」を支払っている。電気を受け取ることができなければ、コストだけが膨らむことになる。
 結果的に電気代に上乗せされ、消費者の負担につながる。原発再稼働の見通しが立たない原電を、このまま存続させておく必要性があるのか、電力各社は改めて検討すべきだ。
 活断層の上にあるリスクを踏まえれば、敦賀原発は廃炉にするしかないのではないか。規制委には厳正な判断を求めたい。