東電は19日、福島第一原発の1、2号機共用の排気筒(直径約30cm)の撤去作業を10カ月ぶりに再開しましたが、改良して大型化した切断装置が排気筒に近付けず、作業を断念しました。
東電は昨夏以降工法を見直し、新たな切断器具などを搭載した装置で、現場とは別の所に作られた模擬排気筒で切断の練習をしたということですが、模擬の排気筒周りが忠実に現場を再現していなかったためこの不具合に気が付きませんでした。
東電の廃炉作業に伴うトラブルの多くはこうした初歩的なミスに拠っています。作業の対象にアクセスできるか否かは最も基本的な事項です。この10か月間、莫大な費用と時間を掛けて一体何をしていたのでしょうか。
これでは東電への信頼など生れようがなく増々失墜するばかりです。
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10カ月ぶり再開もまた失敗 福島第一原発の汚染配管撤去 切断装置大型化したら配管に近付けず…ずさんさ露呈
東京新聞 2023年4月19日
クレーンで吊された切断装置。1号機(左)と2号機(右)の間にある汚染配管の切断に失敗した(東京電力のライブカメラより)
東京電力は19日、福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の1、2号機間にある高濃度に汚染された配管(⇒排気筒)の撤去作業を10カ月ぶりに再開した。ところが、改良して大型化した切断装置が配管に近付けず、作業を断念。事前の現場把握が不十分だったとみられる。失敗続きでほとんど進まない撤去作業は、再開後もずさんな運用が改善されない。
福島第一原発1、2号機間の汚染配管
2011年3月の事故直後、原子炉格納容器の破裂を防ぐため、炉内の汚染蒸気を放出するベント(排気)に使われて高濃度に汚染した。直径約30センチ、長さは1号機側が約65メートル、2号機側が約70メートル。1号機使用済み核燃料プールからの燃料取り出しに向け、水素爆発で上部が吹き飛んだ建屋にかぶせる大型カバーの工事の障害になり、撤去の必要がある。
◆作業前には発電所構外で配管などの配置を模して訓練したが
東電によると、作業は19日午前1時ごろに開始。昨年6月の作業で、両端を切る必要がある配管の片側を9割ほど切った状態で中断した部分を含め、約8メートル分を切断する予定だった。
てんびん状の切断装置(長さ約18メートル、重さ約40トン)を大型クレーンでつり上げ、遠隔操作で切断地点に下ろそうとしたが、近くにある別の配管の部材が邪魔で近付けなかった。作業を断念し、午前6時ごろに切断装置を回収した。
東電は昨夏以降、工法を見直し、装置に新たな切断器具などを搭載。従来の長さ約12メートル、重さ約12トンから大型化した。作業前には、発電所構外で配管などの配置を模して訓練したが、広報担当者は取材に「現場の再現が十分にできていなかった可能性がある」と説明した。装置に追加した部品を外すなどして、作業再開を目指すという。
撤去作業は昨年3月に開始。計約135メートルを26分割にして撤去する計画だったが、これまでに撤去できたのは1本目の約12メートル分にとどまっている。
東電は工程も変更し、別の工事の障害になる約100メートル分に絞って8分割にして撤去し、残りは後回しにする。当面の撤去を5月中をめどに終える計画だったが、作業初日に切断装置の改良が裏目に出る想定の甘さを露呈し、再び振り出しに戻った。(小野沢健太)