福島第一原発1号機の原子炉圧力容器を支える鉄筋コンクリートの土台が損傷していた問題を巡り、原子力規制委員会の山中伸介委員長は25日の記者会見で、圧力容器の倒壊など緊急時の対処に「昨年にコンクリートの損傷が分かった時点で、東電は対応するべきだった」と、東電の検討が遅いことに不満を述べました。
フクシマ事故への東電の対応の遅さは驚くべきレベル(民間会社であればとっくに倒産)で、今回の耐震強度の検討についても数か月が掛かるとしています。
そもそも鉄筋コンクリートの強度は、鉄筋がコンクリートと完全に「付着」していることが条件なので、鉄筋が完全に露出されていれば単なるモルタルに過ぎません。そんなものの強度の算出に時間を掛けるのではなく、強度がほぼゼロであるとして、倒壊をどうして防ぐべきかを早急に検討すべきです。
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福島第一原発の土台損傷 原子力規制委員長「もっと早く対応するべきだった」東電に不満
東京新聞 2023年4月25日
東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)1号機の原子炉圧力容器を支える鉄筋コンクリートの土台が損傷していた問題を巡り、原子力規制委員会の山中伸介委員長は25日の記者会見で、圧力容器の倒壊など緊急時の対処に「昨年にコンクリートの損傷が分かった時点で、東電は対応するべきだった」と、東電の検討が遅いことに不満を述べた。
核燃料があった圧力容器真下の円筒形の土台(厚さ1.2メートル)は、昨年2月のロボットによる調査で、土台の開口部の壁が損傷し、鉄筋がむき出しになっていることが判明。今年3月には土台内部にロボットが入り、内側の壁が全周にわたって鉄筋が露出していることも分かった。
東電は今後、数カ月をかけて耐震性を評価する方針。だが、山中委員長は会見前の定例会合で、規制委事務局に「どういう対処ができるのか、早急に議論してほしい」と指示。会見でも「耐震評価には時間がかかり、待っていられない」と述べた。 (小野沢健太)
原子炉の土台損傷で対策要求 福島1号機で規制委員長
共同通信 2023/4/25
原子力規制委員会の山中伸介委員長は25日の定例会合で、東京電力福島第1原発1号機で原子炉圧力容器を支える土台に大規模な損傷が見つかったことに関し「問題があるとは思わないが、本当に安全なのかどうかをスピード感を持って確かめてほしい」と述べた。東電と原子力規制庁に、さらなる安全対策の検討を促した。
東電は土台の耐震性を再評価する方針だが、山中氏は時間がかかる評価結果を待たずに議論を始めるべきだと指摘。起こり得るリスクと対応策を先に考えておく必要があるとの認識を示した。
定例会合では杉山智之委員も「(東電と規制庁は)のんびりしている。世間の受け止め方を無視しているのではないか」と述べた。
(参考記事)
原子炉容器土台の全周で内壁が損傷、鉄筋むき出し 東電がパノラマ画像を公開 福島第一原発1号機
東京新聞 2023年4月14日
東京電力は14日、福島第一原発(大熊町、双葉町)1号機の原子炉圧力容器を支える土台内部のパノラマ画像を公開した。鉄筋コンクリートの円筒形の土台(厚さ1.2メートル)は、全周にわたって損傷し、内部の鉄筋が露出していた。東電は耐震性を評価する。
事故収束作業について議論する原子力規制委員会の会合で東電が報告。3月28〜31日に実施した調査で、水中ロボットが撮影した映像をつなぎ合わせた。
土台内部の半周弱は、ロボットのケーブルが引っかかるなどして接近できなかったが、遠距離から撮影した映像を解析。調査済みの場所と同様に、床から高さ約1メートルほどまでコンクリートがなくなり、鉄筋がむき出しになっていた。事故時に溶け落ちた核燃料(デブリ)の熱で、コンクリートが溶けた可能性が高い。
どれほどの厚さまで損傷しているかは現時点では不明だが、一部では壁の中心にある部材が見えていた。
土台内部は直径約5メートル。画像には、棒状の構造物やがれきのようなものが散乱している様子が写っていた。これらの堆積物は、高さ40〜50センチほど積もっているという。
東電は、土台の円周の6分の1が内部の鉄筋も含めてすべてなくなり、残りは壁が半分までなくなったとの想定で、耐震性を評価する。(小野沢健太)