フジTV系のFNNオンラインが「 ~ 政策の要『原子燃料サイクル施設』のいま」と題して、青森・六ヶ所村にある原子燃料サイクル施設を取材しました。
同施設はウラン濃縮工場、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、低レベル放射性廃棄物埋設センター、再処理工場、MOX燃料工場の主に5つの部分で構成されていて、その概要がこの記事から分かります。
しかしこれらが完成したとしても、「高速増殖炉」が実現しないことにはサイクルは機能しないので、永遠に未完成のままで終わります。
そもそもこの核燃料サイクルは政策的にも経済的にも何のメリットもありません。仮に「高速増殖炉」が実現すれば核爆弾の材料になるプルトニウムが日本で生産されることになり、不要のプルトニウムは持たないという国際的な約束に反し、このシステムは基本計画が根本的に間違っていたのでした。
かつて経産省の若手官僚が「核燃料サイクルは16兆円の無駄遣い」という趣旨の反対運動を起こしましたが、政府によって圧殺されました。
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“原発”を最大限活用へ 政府が方針転換 政策の要「原子燃料サイクル施設」のいま
FNNプライムオンライン 2023/4/1
2022年12月、政府は原子力を最大限活用することなどを盛り込んだ、GX=グリーントランスフォーメーションに関する基本方針をとりまとめた。既存の原発は「安全最優先で再稼働を進める」としたほか、法律で最長60年と定められていた運転期間については、原子力規制委員会の審査などで停止していた期間を運転期間から除外し、実質60年を超えて運転ができるようになる。
また、これまで「想定していない」としてきた原子力発電所の新設、増設、建て替えについては、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」として方向性を大きく変えた。
東日本大震災の発生から12年。この基本方針に明記された「将来にわたる持続的な原子力の活用」の要となる、青森・六ヶ所村にある原子燃料サイクル施設を取材した。
原発最大限活用の要 “原子燃料サイクル施設”
青森県北部の下北半島に位置し、人口約1万人の六ヶ所村にある日本原燃の施設。ここは原子燃料サイクル関連施設が一カ所に集まる世界でも珍しい場所で、取材当日はあいにくの曇天で全景を見ることはできなかったが、大規模な施設が集積し、施設近隣には従業員やその家族が多く居住する「尾駮レイクタウン」という街も形成されている。
原子燃料サイクル施設は、ウラン濃縮工場、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、低レベル放射性廃棄物埋設センター、再処理工場、MOX燃料工場の主に5つの部分で構成されていて、この全てが連動することで、原子燃料サイクルが初めて機能することとなる。ただ、全施設がすでに完成しているわけではなく、まだ完全な循環型のサイクルとしては機能していない。
竣工時期の延期を繰り返す“再処理工場”
全国各地の原子力発電所から排出された使用済燃料は、施設内の再処理工場へと運ばれ、貯蔵プールにて冷却し、放射能を弱める工程に入る。原発内のプールでの工程と合わせると4年以上冷却、貯蔵され、放射線の量は数百分の一にまで減衰する。
次の過程では、燃料は約3~4センチの長さに細かく切り分けられ、いくつかの工程を経た上で「ウラン酸化物」と「ウラン・プルトニウム混合酸化物」の2種類の物質を作り出す。使用済燃料が、この2種類の物質に分けられるところまでの工程を「再処理」と呼び、この過程で生じる核分裂生成物を含む廃液、いわゆる「高レベル放射性廃棄物」は、ガラス原料と混ぜ合わせてステンレス鋼製容器に流し込み処分される(ガラス固化体)。
一方で、「ウラン・プルトニウム混合酸化物」は、敷地内のMOX燃料工場でMOX燃料として生まれ変わる。
しかし、このサイクルの中核を担う施設は1993年に着工するもまだ完成しておらず、2022年末には26回目の延期を発表し、新たな竣工時期を「2024年度上期のできるだけ早期」としている。
低レベル放射性廃棄物の埋設先は・・・
一方、各原子力発電所の点検や施設の解体作業などで出た放射能レベルの低い廃棄物は、低レベル放射性廃棄物埋設センターへと移送されてくる。原発で使用した水などを浄化するために使用したフィルター、金属、廃液などが該当し、各発電所内で、適切な処理を行った後に、セメントやアスファルトなどを使用して固形化され、ドラム缶に詰められた状態となっている。こうした低レベル放射性廃棄物が、この埋設センターに運ばれてくるのだ。
廃棄物は広大な大地に掘られた大きな穴に、鉄筋コンクリート製の埋設設備に埋められ、1号埋設施設、2号埋設施設ともに、約20万本分のドラム缶が埋設可能だ。現在3つ目の埋設施設も建設中で、2024年度の操業開始を目指している。容量が満杯になると、埋設設備ごと粘土や土砂で覆い、約300年間管理される。
「核のごみ」増えるも最終処分地は未だ決まらず
オレンジの蓋が無数に敷き詰められた部屋。ここには放射能レベルの高い廃棄物が、最終的に処分するまで一時的に保管されている。
日本の電気事業者は、現在、原子力発電所から発生する使用済燃料の一部をフランスやイギリスに委託して再処理していて、その過程で出る高レベル放射性廃棄物が、最終的に処分されるまでの30~50年間、ここで冷却・貯蔵されるのだ。
しかし、日本におけるその最終的な処分地はまだ決まっておらず、NUMO=原子力発電環境整備機構が主体となり、全国の市町村から候補地を募集している。現在は、北海道の寿都町と神恵内村の2自治体が調査の受け入れに名乗りを上げているが、政府はさらに調査地域を拡大したい考えだ。2023年2月には8年ぶりに最終処分の実現に向けた基本方針を改定することを決め、国がNUMOや電力会社とともに、全国100以上の自治体を個別に訪問することなどが盛り込まれた。
“オールジャパン体制”でサイクル施設完成へ
「我々はこの竣工時期を守って二度と遅らせないように、計画通り竣工させることが大事」
2022年12月、日本原燃の増田社長はこう強調した。再処理工場は、1993年に建設を開始し1997年の完成を目指していたが、試運転中のトラブルや原子力規制委員会に提出した工事計画の審査などが長期化した影響で26回の延期を発表している。取材当日も、日本原燃幹部は「竣工時期の延期を繰り返しているのは申し訳ない」と陳謝していたが、もう本当に延期はないと言えるのだろうか。取材の終了間際、その幹部はこう付け加えた。
「いま日本が置かれたエネルギーの状況を考えると、安全が確認された原子力の再稼働と私共のサイクルが、車の両輪になって進めていく必要がある」
政府は、原子力発電など「脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」との方針を打ち出しているが、先述したように国内における原子燃料サイクルが機能しない限り実現は難しい。今は、いわば片方の車輪が抜け落ちている状況だ。再処理工場の竣工、MOX燃料工場の竣工、最終処分場の選定など課題は山積している。脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給の両立に向けて、方針が大きく転換することになった原子力政策。その行方を注意深く見ていきたい。
(フジテレビ経済部 経済産業省担当 秀総一郎)