2023年8月23日水曜日

海洋放出決定 「振り出しに戻された」 半農半漁の福島・相馬市岩子地区

 政府は22日、漁協をはじめ多くの反対を押し切ってアルプス処理水の海洋放出めました。それに対して「半農半漁」を営みながら復興を目指してきた福島県相馬市の岩子地区の住民らは、「これまで積み上げてきたものが風評被害で破壊されかねない「振り出しに戻された気分だ」憤りをあらわにしました。日本農業新聞が報じました。
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処理水放出決定「振り出しに戻された」 半農半漁の福島・相馬市岩子地区
                           2023/8/23
漁業が駄目になれば、農業も駄目になる」
 東京電力福島第1原子力発電所の事故によって生じた処理水の海洋放出が22日、政府の方針として決定されたことを受け、「半農半漁」を営みながら復興を目指してきた福島県相馬市の岩子(いわのこ)地区の住民らが憤りをあらわにした。早ければ24日にも放出が始まるが、これまで積み上げてきたものが風評被害で破壊されかねないだけに、不安は根強い。
東京電力福島第1原発の敷地内に並ぶ処理水タンク
「岩子は農業と漁業の地域。漁業が駄目になれば、農業も駄目になる」「風評被害払拭(ふっしょく)の道筋も見えてこない」。政府の決定を受け、地区内では、地域の衰退を危惧する声が相次ぐ。
 同地区で水稲8ヘクタールとアオサノリ養殖を手がける菅野一規さん(48)は「振り出しに戻された気分だ」と悲痛な表情を浮かべる。
 同地区は、農業と漁業ともに生業とする「半農半漁」の人が多く暮らす。菅野さんによると、地区の漁業者の4分の1に当たる15世帯ほどが半農半漁。東日本大震災後、地区内のノリ養殖の網数は、震災前の2割に減少したという。

「これまでの苦労は何だったのか」
 そうした苦境の中にあっても、菅野さんは父から事業を継承し、2019年から本格的に農業と漁業を営んでいる。震災直後は、原発事故の影響で漁ができなくなったが「漁業の灯を消してはならない」と当時は会社員の傍ら、同市沖の松川浦で、がれき撤去に携わり、家業も手伝った。それだけに今回の政府決定に対し、「これまでの苦労は何だったのか」と語気を強める
 菅野さんは「決まった以上は新たなスタートと思うしかない。だからこそ、風評被害を何としても食い止めてほしい」と切望する。
 同地区で、水稲13ヘクタールとアオサノリ養殖を営む横山圭吾さん(31)も、「ただでさえ手取りは低い。これからどうしたらいいか」と今後に不安を隠せないでいる。(前田大介)