2023年8月5日土曜日

05- 高速炉「常陽」審査合格(詳報)

 原子力規制委員会は26日、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書」を決定し、正式に審査合格としました詳報として紹介します。

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   6月24日)高速実験炉「常陽」公開 25年再稼働目指す
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高速炉「常陽」審査合格 茨城・大洗の原子力機構 25年再稼働目指す
                        茨城新聞クロスアイ 2023/7/27
原子力規制委員会は26日、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書」を決定し、正式に審査合格とした。機構は2025年3月の再稼働を目指す。運転再開には安全対策工事が必要で、工事に対する茨城県と大洗町の「事前了解」が今後の焦点となる。
規制委では意見公募の結果などが報告され、委員長を含む5人の委員全員が審査書に賛成した。一方、運転停止の原因となった07年の実験装置トラブルで原子炉容器内に脱落したとみられる部品の影響について、伴信彦委員が審査書で触れるべきと指摘。規制委は今後の検査などで確認することにした
山中伸介委員長は、会見で「ナトリウム冷却材の火災や再臨界を慎重に審査を進めた。(安全対策では)ケーブル類の劣化、火災防護が重要だ」と述べた。

常陽の運転再開に向けては、機構は今後、詳細設計をまとめた工事計画と運用ルールに当たる保安規定の認可を規制委から受ける必要がある。
常陽は国内唯一の高速炉で発電設備はない。廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の前段階に位置付けられる研究施設。1977年に運転を開始したが、実験装置のトラブルで2007年から運転を停止している。
使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」を使用。冷却材は燃えやすい性質のナトリウムを使う。機構は運転再開後、停滞する高速炉開発や、高速中性子を利用した医療用の放射性同位体の製造に活用する方針を示している。
再稼働に向け、機構は格納容器の破損を防ぐ断熱材の設置や、中央制御室外への原子炉停止盤の新設、炉心や制御棒などの安全対策工事を予定する。着工には原子力安全協定に基づき、県と大洗町の「事前了解」が必要となる。

機構の担当者は県庁での会見で、県との今後の調整を前提とした上で、本年度内に事前了解を得られれば目標とする25年3月の運転再開に間に合うとの見方を示した。着工については「当然、事前了解後の着手になる」とし、来年度になるとした。
事前了解を巡っては、県は原子力施設の安全性を検証する「県原子力安全対策委員会」と、原子力政策を審議する「県原子力審議会」の2機関で独自に安全性を審議し、隣接市町村の意見聴取をした上で、判断する方針を示している。


高速実験炉「常陽」審査通過 意見公募では異例の対応も
                            毎日新聞 2023/7/26
 原子力規制委員会は26日の定例会で、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県)が新規制基準に適合したことを示す審査書を決定した。正式な審査通過となる。
  【図でわかる】新しい原発点検制度、何がどう変わる? 
ただ、5月に了承した審査書案に対する30日間の意見公募で出た意見に対し、新たな対応をとることを決める異例の一幕があった。
 常陽は1977年に運転を始めたが、2007年に炉内の装置が破損するトラブルを起こし、小さなピン6本が炉内に落下したままになっている。
 意見公募では、このトラブルについて「審査書で触れていない」との指摘があった。伴信彦委員も「トラブルを前提にした審査ではないのか」と疑問を呈し、審査書に追記することを提案した。
 定例会で議論した結果、落下したピンがもたらす影響について、今後実施する保安規定の審査で具体的な対策を確認することを決め、意見公募の回答に追記した。一方、審査書自体を修正する必要はないと判断した。
 原子力機構は常陽の25年3月の再稼働を目指している。高速炉は核燃料サイクルの中核とされ、国も次世代原発の一つと位置づける。しかし、同じ高速炉だった原子力機構の原型炉「もんじゅ」(福井県)が相次ぐトラブルで16年に廃炉が決まり、実用化に向けた道筋はいまだ不透明だ。【高橋由衣】