2023年8月26日土曜日

原発汚染水 海洋放出中止せよ 放出回避の手立てある

 しんぶん赤旗日曜版が掲題の記事を出しました。
 政府は福島原発のアルプス処理水の海洋放出を24日から行っています。それは「(漁業者ら)関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という約束を踏みにじる暴挙、断じて許されるものではありません。
 海洋放出する量とその間に生じる新なアルプス処理水量はほぼ同じなので放出が50年で終了することはなく、水バランス的に見るとむしろ半永久的に続くことになります。
 政府は盛んに世界の原発がトリチウムを合む水を排出していると主張しますが、事故炉から生じた汚染水が意図的に海に流されたことは一度もありません。
 また現在タンクにためた水の7割近くにトリチウム以外の放射性物質が排出濃度基準を超えて残っているのを、政府・東電はもう一度アルプスで処理して基準以下にして放出するとしていますが、一度吸着剤層をスルーした物質が2度目で除去できるという保証はないし、その検討もしていません。

 共産党の志位委員長は「関係者の声を『聞く耳』を持たず、約束も守らない岸田首相の政治姿勢は民主主義の根幹を揺るがすもの」と厳しく批判し、先ずは汚染水の増加を止める広域遮水壁を追設するとともに、「大型タンク貯留」「モルタル固化」など海洋放出を回避する手だての真剣な検討を求めました。
 しんぶん赤旗日曜版の記事を紹介します。
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原発汚染水 海洋放出中止せよ 
      放出回避の手立てあるー政府は真剣な検討を
                    しんぶん赤旗日曜版 2023年8月27日号
 東京電力福島第1原発事故で発生した汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を、24日にも開始すると決定(22日の関係閣僚会議)した岸田政権。「汚染水の海洋放出は30年続くのか、50年続くのか。とても受け入れられない」(福島県の漁業者)と怒りの声が上がっています。「(漁業者ら)関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という政府の国民、福島県民への約束を踏みにじる暴挙日本共産党の志位和夫委員長は22日の記者会見で、「断じて許されるものではない」として海洋放出の中止を強く求めました

 福島県漁連をはじめ沿岸各県漁連、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が、こぞって海洋放出に反対しています。21日に岸田文雄首相と面会した全漁連の坂本雅信会長は改めて反対を表明。首相は20日に福島県を訪問したのに、地元の漁業関係者や自治体首長らと面会もしませんでした。
 志位委員長は「『聞く耳』を持たず、約束も守らない岸田首相の政治姿勢は民主主義の根幹を揺るがすもの」と厳しく批判。汚染水の増加を止める広域遮水壁の設置、「大型タンク貯留」「モルタル固化」など海洋放出を回避する手だての真剣な検討を求めました

原発汚染水 50年以上続く海洋放出
 東京電力の計画では、汚染水の海洋放出の終了は「約30年後」。しかし、海洋放出の前提となっている原発の廃炉計画は、溶け落ちた核燃料の取り出しに何年かかるかもわからず、見通しがまったく立っていない状況です。福島県「廃炉に関する安全監視協議会」の専門委員を務める柴崎直明・福島大学教授は、「凍土」の効果が上がらず、原子炉建屋への地下水の流入が続き、汚染水が増え続けている現状から、海洋放出は今後、少なくとも50年以上続くと指摘しています。
 半世紀以上の長期にわたって、放射性物質を含む汚染水を海に流し続けることに道理はありません。
 政府は、「(海洋放出は)国際的な安全基準に合致する」とした国際原子力機関(IAEA)の包括報告書(7月4日公表)で、安全性が証明されたかのように説明しています。
 しかし、報告書の序文でIAEAのグロッシ事務局長は「処理水の放出は日本政府の決定であり、この報告書はその政策を推奨したり支持したりするものではない」と強調しています。

IAEAは。安全の根拠にならない
 市民や有識者らでつくる原子力市民委員会(座長・大島堅一龍谷大学教授)は、IAEAの報告書は「海洋放出の『科学的根拠』とはならない」と指摘し、次のように詳しく批判しています。(7月18日発表の「見解」)
 ▽IAEAは原子力利用を促進する機関で中立的とはいえない。報告書は政府の決定を前提にして追認したにすぎない
 ▽世界の原発がトリチウムを合む水を排出しているというが、事故炉から生じた汚染水が意図的に海に流されたことは一度もない
 ▽タンクにためた水の7割近くにトリチウム以外の放射性物質が排出濃度基準を超えて残っている。政府・東電はアルプスの2次処理によって基準以下にして放出するとしているが、報告書はアルプスの2次処理の性能を評価していない
 ▽報告書は大型タンク保管やモルタル固化など他の選択肢を検討していない。これはIAEA自身の安全基準に反する
 ▽関係者の理解なしに放出しないとの約束を無視した不誠実で不透明なプロセスを完全に見逃している

生産者と消費者 力あわせ反対 岩手県生協連専務理事 吉田敏恵さん
「全責任をもって対応する」(岸田文雄首相)とか、「処理水最後の一滴が安全に放出し終わるまで、IAEAはここにとどまる」(グロッシ事務局長)とか、安全に責任を持つかのような発言がありますが、ずいぶん簡単に言うなあと腹が立ちます。ご本人の役職だっていずれ代わっているでしょうし。
 この先ずっと海が汚され続けると思うと、後世の人たちに申し訳が立たないと思います。
 私たちは、福島や宮城の生協、漁協と協力して「アルプス処理水海洋放出に反対する署名」を集め、25万人分を超えました。
 これまでの生産者の方々の努力を足蹴にし、苦しめるような政府の対応には、消費者としても耐えられません。生産者の人たちがいるから、私たちは食べていけます。生産者と消費者が地域の中で一緒に生きていくために、これからも力をあわせていきたい


生活のめどやっとついたのに 福島・新地町の漁師 小野春雄さん
 いま福島の魚は非常に高値で、シラスは震災前の3倍、ヒラメは10倍もしています。いろんな理由があるようですが、驚くほどです震災後、操業を再開しても風評被害で安値が続いたときもありましたが、これでわれわれも安心して生活していけるめどがついたところです。
 ここでトリチウムなどを含む汚染水を流したら、風評被害で台無しになるんじゃないか。海洋放出は30年続くのか、50年続くのか、100年続くという人もいます。そんな事はとても受け入れられません
 IAEA(国際原子力機関)の基準をクリアしたと言いますが、彼らは私たちの話を聞いたわけではありません。日本の政府に頼まれて見解を出しただけで、最初から政府寄りです。IAEAの報告を読んだ専門家もおかしいと言っています。


「聞く耳」持たぬ首相民主主義揺るがす 
            日本共産党 志位委員長が会見
 日本共産党の志位和夫委員長は22日、政府 の汚染水海洋放出の決 定について、会見で次のようにのべました。
                   ◇
 一、岸田政権は、24日にも東京電力福島第1原発の汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を行うことを決定した。これは「漁業者など関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という政府の国民、福島県民への約束を公然と投げ捨てるものであり、断じて許されるものではない。海洋放出の中止を強く求める。
 21日に首相と面会した全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長は、「海洋放出については依然として反対するという立場を堅持する」と明言している。岸田首相は、20日に福島視察を行ったが、福島の漁業関係者、自治体首長とは面会もしなかった。「聞く耳」をもたず、約束も守らない、細田首相の政治姿勢は民主主義の根幹を揺るがすものと言わざるを得ない。

 一、核燃料が溶け落ちたデブリに接触して汚染された水は、アルプスで処理しても、放射性物質のトリチウムは除去できず、「規制基準以下」とはいえセシウム、ストロンチウムなどトリチウム以外の放射性物質も含まれていることを、政府も認めており、関係者の同意が得られないのは当然である。

 一、汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を強行すれば、漁業のみならず加工・輸送・卸業や観光へのさまざまな影響が出ることは避けられず、福島の復興に重大な障害となる。原発事故を引き起こした東京電力や政府が、その責任を脇に置いて、福島の復興に大きな障害をもたらすことを、被害者に押しつけることは許されな

 一、福島第1原発の建屋内への地下水の流入を止めない限り、汚染水は増え続けることになる。重大なことは、「凍土壁」などの対策がj十分な効果をあげていないにもかかわらず、政府が汚染水の増加を止めるための有効な手だてをとっていないことである。政府は、広域の遮氷壁の設置など汚染水の増加を止めるための手だてを真剣に講ずるべきである。
 専門家から「大型タンク貯留案」や「モルタル固化処分案」など、放射性物質の海洋放出を回避する手だてが提案されている。問題を解決するための真剣な検討と対策を行うべきである。