2023年8月9日水曜日

アルプス処理水 海洋放出に中国のみが反対 世界はデブリ冷却水と炉内水の特性の違いを無視

 ウィーンで開催中の26年核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会で8日、福島第一原発の「アルプス処理水」海洋放出を「国際的な安全基準に合致している」と認定した国際原子力機関(IAEA)の報告書への支持表明が相次ぎました。発言した57か国・組織で明確に反対姿勢を示したのは中国だけでした。
 通常の原発から出るトリチウム水の海洋放出が許されているのは、正常な原発では原子炉内を循環する炉内水はジルコニウム菅内に収納されているウランに触れることはないため、「純水中に僅かなトリチウムが混在している状態」であるのに対して、デブリの冷却水はウランやウランの分解過程におけるあらゆる物質に直接触れた水をアルプスで吸着除去処理したに過ぎない水のため、トリチウム以外にも60種ほどの放流基準値を上回る汚染物質が含まれています。
 海の憲法である「国連海洋条約」や「ロンドン条約」は、あらゆる発生源からの放射性汚染源の海洋放出(投棄)を禁止し、「実行可能な最善の手段を用いる」ことが定められています。それに対してデブリ冷却水は、「海洋放出」以外の多くの処分方法があるため、国連海洋条約の精神に照らせば海洋放出は到底認められないものです。
 その点が、希薄なトリチウム水が連続的に発生する「通常の原発」からのトリチウム水に対しては「実行可能な最善の手段」が全くないことと決定的に異なっている点です。
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「処理水」の海洋放出、NPT準備委で支持相次ぐ…中国のみ「核の汚染水」と反対
                       読売新聞オンライン 2023/08/09
【ベルリン=中西賢司】ウィーンで開催中の2026年核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会で8日、東京電力福島第一原発の「処理水」海洋放出を「国際的な安全基準に合致している」と認定した国際原子力機関(IAEA)の報告書への支持表明が相次いだ。発言した57か国・組織で明確に反対姿勢を示したのは中国だけだった。
 IAEAの報告書について、米国代表は「日本の計画を公平かつ事実に基づいて審査、報告したIAEAを評価する」と指摘。英国代表は「誤情報の拡散を防ぐため日本がIAEAと緊密な協力を続けていることを歓迎する」と述べた。イタリアやフランス、マレーシア、豪州なども明確に賛意を示した。韓国代表は「IAEAの徹底監視が排出過程のあらゆる段階で実施されることを期待する」と述べた。

 一方、中国の代表は処理水を再び「核の汚染水」と呼び、IAEAは限定的な審査しか行わなかったなどとして放出計画を批判する声明を読み上げた。これに対し、在ウィーン日本政府代表部の引原毅大使は「日本は何度も反論しているのに、中国が政治的理由から議論をしてくるのは残念だ」と述べ、「排出されるのは放射性物質の濃度が規制基準をはるかに下回る水だ。『汚染水』ではない」と中国側に科学に基づく対話を求めた。
 中国はその後も答弁権を行使して同様の反論を重ねた


処理水放出、中国のみ反対 韓国が容認、米欧は理解 NPT準備委
                            時事通信 2023/08/09
【ベルリン時事】ウィーンで開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会で8日、東京電力福島第1原発の処理水放出計画に関する発言が各国から相次いだ。
 多くの国が計画の妥当性を認めた国際原子力機関(IAEA)の見解に支持を表明する中、中国だけが放出に頑強に反対する構図が鮮明になった。
 中国の代表は改めて「放出計画を強行するな」と訴えた。IAEAの審査について「権限が限られているため『汚染水』のデータの信頼性や正確性を確認しなかった」などと主張した。一方、国内で放出を懸念する声が根強い韓国は「IAEAが放出のあらゆる段階で徹底した監視を行うことに期待している」と述べ、容認する構えを見せた。
 また、ニュージーランドの代表は「(IAEAに)全幅の信頼を置いている」と強調。米英もIAEAの立場を強く支持し、放出に理解を示した。