2023年8月12日土曜日

アルプス処理水問題 まだやることはある(福島民報)

 岸田首相は17日からの訪米時に実施する日韓首脳会談で尹錫悦大統領に海洋放出の安全性を改めて示し、バイデン大統領を含めた日米韓首脳会談でも理解を求めた上、帰国後の関係閣僚会議で放出を開始する時期を最終判断する段取り?を考えているようです。

 岸田首相は7日「漁業者との信頼関係は少しずつ深まっていると認識している」と表明しましが、面会した漁業関係者は「何を捉えてそう言っているのか、私には理解できない」と一蹴しました。
 また海洋放出の最終段階には、岸田首相が県内の関係者に直接 説明する機会を設ける方針ということですが、福島民報はこの時期にきても政府の目は県内にしか向いていないのはおかしいことで、やるべきことは他にもあるのではないかと述べています
 岸田氏が考えている段取りは悉く的を外していると思われます。
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【原発処理水】まだやることはある
                            福島民報 2023/8/10
 政府は東京電力福島第1原発事故後、構内にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水について、今月下旬にも海洋放出を始める方向で調整を進めている。再三、本欄で指摘しているが、科学的な安全性が確保されても、安心につながる理解が広がらなければ被災地は再び風評にさらされる。
 岸田文雄首相は17日からの訪米時に実施する日韓首脳会談で尹錫悦[ユンソンニョル]大統領に安全性を改めて示す。米国のバイデン大統領を含めた日米韓首脳会談でも理解を求めるとみられる。帰国後の関係閣僚会議で開始時期を最終判断すると、今月下旬の日程が浮上する。お盆を過ぎ、海水浴シーズンも終わる。7、8月と休漁していた本県の底引き網漁が再開される状況を考慮すれば、政府にとって今月末は「最適」といえるのだろう。
 国際原子力機関(IAEA)が海洋放出計画について国際的な安全基準に合致するとの包括報告書を公表して以降、政府の動きは急だ。西村康稔経済産業相、渡辺博道復興相は本県と青森、岩手、宮城、茨城各県の漁業関係者との面会を重ねてきた。こうした現状を踏まえ、岸田首相は7日、「漁業者との信頼関係は少しずつ深まっていると認識している」と表明した。

 その認識は甘いと言わざるを得ない。面会した漁業関係者は「絶対反対」の姿勢を崩さず、県漁連の野崎哲会長は岸田首相の表明に対して「何を捉えてそう言っているのか、私には理解できない」と一蹴した。今後、全国漁業協同組合連合会(全漁連)会長に面会して、理解を求める意向というが大きな進展は見込めないだろう。
 西村経産相と漁業関係者の面会では、出席者から「漁業者以外にも説明すべき」との発言があった。内堀雅雄知事は処理水について「福島県だけでなく、日本全体の問題」と指摘している。両者の発言はまさにその通りで、政府が最も力を入れなければならないことを言い当てている。

 海洋放出の最終段階には、岸田首相が県内の関係者に直接、説明する機会を設ける方針という。日本全体の問題だというのに、この時期にきても政府の目は県内にしか向いていないように映る。やるべきことは、他にもあるのではないか。(安斎康史