2024年6月19日水曜日

福島原発事故 国を免責の最高裁判決の克服ヘ 原発の危険に向き合う判断を

 最高裁第2小法廷は22年6月17日、福島原発事故に関する生業訴訟、群馬訴訟、千葉訴訟、愛媛訴訟の4つの国家賠償請求訴訟を一括して審議し〝想定外の津波がきたので、事故前の予測に基づいて対策の基本である防潮堤をつくっても、事故は防げなかった。だから国に責任はない″とする判決を出しました。
 注目すべきは判決文11頁の極めて簡略なもので実質判断部分はわずか4頁でした。
 これは極めて異様というべきで、最初に「国を免罪するという結論があったからと見るしかありません。実質判断部分がわずか4頁であったのは、「国に責任はない」という結論を「精密な検証」に整合させることが出来なかったからです。
 2小法廷を構成した4人の判事中、3人がこの判決に賛成で 反対三浦守判事1人でした。三浦判事の反対意見は判決とは対照的に29頁にわたり国の責任を冷静かつ論理的に立証するものでした。

 何故そんな「世にもお粗末な最高裁判決」になったのか ですが、賛成した3人の判事を調べると、菅野裁判長は最高裁判決を出した翌月の22年7月に退官し、日本の大法律事務所の一つ「長島・大野・常松法律事務所」の顧問に就きました。岡村判事もかつて「長島・大野法律事務所」「長島・大野・常松法律事務所」の前身に所属し草野判事もかつて5大法律事務所の一つ「西村あさひ法律事務所」の代表経営者を務めていました
 要するに政府や東京電力などとズブズブの関係にある巨大法律事務所と関係の深いメンバーが、(政府または)弁護士グループから最高裁判事に推薦されているということです。
 以上はしんぶん赤旗日曜版 2023年7月2日号でフリージャーナリストの後藤秀典さんが語っているところです。
   23.7.1) 最高裁もズブズブ 原発事故免罪人脈を暴く(しんぶん赤旗)

 この異例の最高裁判決2周年に当たる17日(及び18日)にしんぶん赤旗がいくつかの記事を出しましたので紹介します。タイトルは下記の通りです。
 「福島第1、国を免責 最高裁判決の克服ヘ 原発の危険向き合う判断を17日付)
  ノーモア原発公害市民連絡会の発起人の一人、吉村良一・立命館大学名誉教授に聞く
 「原発・司法 今一度問う 研究者・市民らシンポ開催17日付)
  16日、「6・17最高裁共同行動市民シンポジウム」東京都内で開催
 「原発事故の責任 人間の鎖 最高裁を囲む(18日付)
  17日、6・17最高裁共同行動があり、約1000人が最高裁を取り囲む人間の鎖に
  取り組みました
 「原発推進 最高裁判決後」 院内シンポで専門家ら指摘18日付)」
  17日午後、国会内で原発問題に詳しい象門家らのシンポジウム原発推進 最高裁判
 決後」を開きまし

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  (23.8.9)「原発事故は国の責任です!」~ 6.17最高裁判決を正すつどい

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福島第1、国を免責 最高裁判決の克服ヘ 原発の危険向き合う判断を
                        しんぶん赤旗 2024年6月17日
 東京電力福島第1原発事故の被害者らが国と東電に賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷は2022年6月17日、国に責任はないとする判決を出しました。これを乗り越えようと、17日に「司法の劣化を許さない6・17最高裁共同行動」が開かれます。同実行委員会の加盟団体の一つノーモア原発公害市民連絡会の発起人の一人、吉村良一・立命館大学名誉教授に行動の意義を聞きました。   (松沼環)

立命館大学名誉教授 吉村良一さんに聞く
 ー最高裁判決の多数意見の問題点は?
 国の責任を考える上では、被害発生を予見できたかが点目のポイントです。予見可能だとすれば、それを防ぐために国にどういう権限があったのかが2点になります。
 その上で規制権限を行使していれば、被害の発生を防げたのか、その順序で考えていきます。これまでの判例もそうしてきました。ところが最高裁判決の多数意見は、1、2点の判断を示していない。非常に奇妙な判決です。
 多数意見は、仮に規制権限を行使していても津波による浸水を防げなかった可能性があるとして責任を否定してしまっています。法的な論理からすると重大な不備があります。

最高裁の二面性
  -なぜ、そのような判断となったのでしょうか。
 最高裁には二つの顔があります。
 一つは、大きな被害が発生した時にそれを救済するという顔です。もう一つは、国の政策にかかわることについてはそれを肯定するか、あるいは判断しないことで事実上肯定するという
顔です。
 今回、最高裁の多数意見で出てしまったというのが、私の受け止めです。
 その裏にはジャーナリストの後藤秀典さんが指摘するように、大手の法律事務所を介した最高裁の裁判官と原子力村との癒着という問題もあると思います。

 -判決は、どんな影響がありますか。
 司法試験を目指す学生が最高裁の多数意見のような答案を書いてくれば不合格だと思います。下級審の裁判官もそれは分かっている。しかし、判決が出てしまうと右にならえしてしまう。
 6・17最高裁判決が出る前は、国の責任を認める判決のほうが多かった。判決後の高裁・地裁の判決は、全部「国に責任なし」です。裁判官に飾持(きょうじ)はあるのかという思いがします。

推進政策が加速
 -今後について、どう考えますか。
 過去の公害問題でも、弁護士や学者の主張や理論だけでなく、社会の動向や運動が車の両輪になって、裁判所を変えてきました。
 判決後、一気に岸田政権の原発推進のギアがあがりました。汚染水も放出されましたし、老朽原発の延命化も言い出した。岸田政権の暴走にプレーキが利かなくなってしまった。
 この判決を克服しないと原発推進に車止めがかからないことになってしまう。2度回、3度目の重大な原発事故が起きかねないと思います。
 最高裁に判断の欠落をきちんと認識させて、正面から原発の危険に向き合う判断をさせることが運動の焦点です。


原発・司法 今一度問う 研究者・市民らシンポ開催
                        しんぶん赤旗 2024年6月17日
 原発事故の被害、原発と地震、司法のあり方を問い直す6・17最高裁共同行動市民シンポジウム」が16日、東京都内で開かれました。日本環境会議が主催し、6・17最高裁共同行動実行委員会が共催しました。
 日本環境会議理事長の寺西俊ー・一橋大学名誉教授は、「東京電力福島第1原発事故は史上最大の公害問題」だと述べ、事故をめぐって国の責任を否定した2022年6月の最高裁判決をはね返すために「ノーモア原発公害市民連絡会」を発足させ、判決から2年となる17日に行う最高裁を取り囲む要請行動について紹介しました。
 シンポでは事故をめぐって多角的に議論しました。
 「ふるさとを返せ!津島訴訟」の原告・三瓶春江さん(64)は、「ふるさとを汚されたまま放置していいはずがない。もとに戻すこは国の責任だ」と述べ、広く帰還困難区域になったふるさとで原状回復を求めて裁判をたたかっている思いを語り、「ふるさとに帰りたい思いはどうしてもかなえたい」と述べました。
 3人が講演。フリーライターの吉田千亜さんは、被災県にいた子どもたちの被害を聞き取った内容を紹介。福島県浪江町の歌人・三原由起子さんは自作の短歌を交え、「復興の名のもとに原発事故がなかったことにされていく空気感を打ち破りたい」と述べました。
 関西電力大飯原発の差し止めを命じた判決を出した元裁判官・樋口英明さんは地震と原発の問題をはじめ、人が管理できなくなった時の事故の被害は想像を絶するほど大きいという原発の本質を踏まえれば、現政権が平気でやろうとしている老朽原発が許されないことなどを指摘。2年前の6・17の最高裁判決のカ月後には、東電の旧経営陣4人に計13兆円支払うよう命じる東電株主代表訴訟の判決があり、最高裁の意向に反する裁判官はいるとして、「最高裁判決をひっくり返し時のことを想像してください」と呼びかけした。


発事故の責任 人間の鎖 最高裁を囲む
                        しんぶん赤旗 2024年6月18日
「原発事故は国の責任!」「忖度(そんたく)判決おことわり」「司法の独立どこ行った」-。東京竃カ福島第1原発事故をめぐる国の賠償責任を否定した2年前の最高裁判決を正そうと17日、6・17最高裁共同行動がありました。全国各地の裁判の原告や市民、約1000人が最高裁を取り囲むヒューマンチェーン(人間の鎖)に取り組み、司法の公正さを求めて声を上げました。

責任否定の判決正そう
 実行委員会には、原発事故被害者訴訟の原告団体や原発問題、環境問題などに取り組む16団体が加盟、多くの団体と個人が賛同しています。
 実行委員会は、福島原発事故の国に対する各地の賠償訴訟が上告された場合に公正な審理を行うよう求める約3万人分の要請書を最高裁に提出しました。

手を取りあって
 伊東達也実行委員長が「本日の共闘が未来に通じる希望となる。手を取りあって進んでいこう」と宣言。「だまっちゃおれん!原発事故人権侵害訴訟・愛岐阜」の岡本早苗原告団長は、「矛盾と欠落に満ちた判断を社会に残してしまったら、国がとるべき対策を怠って、私たちのように苦しむ人がまた生まれるかもしれない。未来に胸を張って手渡せる社会にしていこう」と訴えました。
 ノーモア原発公害市民連絡会代表世話人の寺西俊一・一橋大学名誉教授は「最高裁の名に
に恥じない公正な対応を強く強く求めたい」と呼びかけました。
 ヒューマンチェーンに参加していた阿部節子さん(67)は、4月に最高裁が国の責任を求めた上告を棄却したいわき市民訴訟の原告。「次の人たちのために立ち上がっています」と話しました。

最高裁判決から
 福島原発事故をめぐっては、避難者らが賠償を求めて全国で約30件の裁判がたたかわれています。2年前の最高裁第2小法廷は、同様の四つの訴訟に対して、国の賠償責任を否定する統一判断を出しました。それまで複数の裁判所が国の責任を認める判断を示していましたが、最高裁判決後の下級審の判決はすべての責任を否定しています


「原発推進 最高裁判決後」 院内シンポで専門家ら指摘
                         しんぶん赤旗 2024年6月18日
 6・17最高裁共同行動実行委員会は17日午後、国会内で原発問題に詳しい象門家らのシンポジウムを開きました。専門家は、事故に対する国の責任を否定した2年前の最高裁判決以降、国が原発推進の政策に転換したと指摘しました。
 シンポでは龍谷大学教授の大島堅一さんが基調講演。「岸田文雄政権は、最高裁判決から2ヵ月ほどでそれまでの政策を転換し、GX(グリーントランスフォーメーション)として原発推進にかじを切った」と指摘。「原発事故を軽視し、推進へのきっかけをつくった最高裁判決は、覆されなければならない」と強調しました。
 東北大学名誉教授の長谷川公一さんは、最高裁判決をはじめとして「日本の司法が社会的な監視機能を果たさず、安全規制が空洞化した」と述べました。
 ジャーナリストの後藤秀典さんは「最高裁判事のうち4人は弁護士出身だが、いずれも企業法務を担っていた。もっと、町場の感覚のある弁護士に入ってもらいたい」と語りました。

 「司法よ本来の姿を取り戻せ」と題する集会宣言を満場の拍手で採択。「かけがえのない人権が守られるまでたたかいを続ける」と訴えました。
 野党各党の国会議員が参加。日本共産党から、岩淵友参院議員が出席しました。