1日付の京都新聞の社説に続いて、高知新聞が3日付で同趣旨の「原発運転延長 もはや『例外』と言えず」という社説を出しました。
運転延長の根拠が不明のまま一挙に20年も「延長可能」とするのは暴挙というべきものです。
(関連記事)
(6月1日)高浜40年超運転 なし崩しは認められぬ 京都新聞社説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【原発運転延長】もはや「例外」と言えず
高知新聞 2024.06.03
来年で運転開始40年となる関西電力高浜原発3、4号機(福井県)について、原子力規制委員会が20年の運転延長を認可した。
これで国内では、4原発計8基の運転延長が認められたことになる。高浜原発では1、2号機も2016年に認可済みで、既に40年を大きく超えた運転となっている。
原発の運転期間は現在、原子炉等規制法で「原則40年、最長60年」に制限されている。東京電力福島第1原発事故を重く受け止めて制度化された。
しかも当時の野田佳彦首相は40年を重視。それを超える運転は「極めて例外的なケース」との認識を示していた。
ところが現状はどうだろうか。8基もの運転延長が認められ、しかも申請があった原発のすべてが認可されている。もはや「例外的」とはいえまい。
さらに岸田文雄・現政権は、この「原則40年、最長60年」を見直し、来年6月から60年超の運転を可能にする。運転期間の規制は形骸化したといってよい。
確かに日本は、二酸化炭素の排出削減の強化という難しい課題を抱える。エネルギーの安定供給も欠かせない。とはいえ事故の教訓があまりに軽んじられていないか。立ち止まって論議する必要がある。
原発はもともと、30~40年の運転を想定しているとされる。時間の経過とともに配管やコンクリートなどの機能や強度が低下。放射線が当たる原子炉圧力容器も劣化しやすいからだ。
特に高浜3、4号機はプルサーマル発電である。通常の核燃料より放射線が強いプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を利用するため、原子炉圧力容器などがもろくなりやすいという。
それでも定期的な調査や交換などで適正に管理すれば、60年間の運転が可能とされてきた。
しかし、世界最悪レベルの原発事故を経験し、多くの国民が原発のリスクの高さを痛感。脱原発を望むようになり、運転の継続にも厳格な規制を期待した。「原則40年」の制度は極めて重いものだったはずだ。
ところが、政権が旧民主党から自民党に交代すると、原発回帰が始まる。運転延長が相次いだのも無関係ではないだろう。
事故後に運転を停止した原発の再稼働が遅々として進まない中、「40年」にこだわっていてはエネルギー供給や脱炭素の取り組みは簡単には実現できなくなる。政府のそんな思惑が見て取れる。
原発回帰は岸田政権になってからさらに加速。原発の「最大限の活用」方針まで表明した。「原則40年、最長60年」の見直しはその表れの一つといえる。
東日本大震災の後、熊本地震や能登半島地震も起きた。日本では地震や津波がいつ発生してもおかしくない。再び原発に依存してよいのか。いま一度、原発の今後について国民的な議論が求められる。