2024年6月3日月曜日

福島第一原発の廃炉は遠い道のり 読売新聞が現地取材

 読売新聞の記者が柏崎刈羽原発再稼働問題との関連で、東電はいま事故とどう向き合っているのか。福島で廃炉作業の現場を取材しました。

 東電は4151年に廃炉を完了させるとしていますが、肝心のデブリ取り出しを完了する目処はまだ全く立っていません。
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推定880トン、核燃料デブリ「どのくらいの量なのか正直わからない」…福島第一原発の廃炉は遠い道のり
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 東京電力が再稼働を目指す新潟県の柏崎刈羽原子力発電所は、技術的には近く運転可能な状態になる。再稼働の是非を巡る議論では、福島第一原発事故を起こした東電が再び原発を運転することへの懸念の声もある。東電はいま事故とどう向き合っているのか。福島で廃炉作業の現場を取材した。(大竹弘晃)

大量のがれき
 5月24日、新潟県柏崎市から車で福島第一原発を目指した。集合場所の福島県富岡町までは約300キロ。車を運転し、約4時間かけて着いた。集合場所からはバスに乗り換え、約20分後に原発に入構した。記者が同原発に足を踏み入れるのは初めてだ。
 構内をバスで移動し、事故を起こした1~4号機を望むことができる高台に向かった。事故から13年以上たつが、1号機は原子炉建屋上部の鉄骨がむき出しになっている上、現在も大量のがれきが残る。
 現場では、金属を削るような高い作業音が響いていた。建屋を覆う大型カバーの設置に向けた工事が進められている最中だった。
 カバーは、がれきを撤去する際に、放射性物質を含んだダストの飛散を防ぐ役割を果たすという。
 建屋上部は放射線量が高く、「人が長時間作業することはできない」と同行した東電社員から説明を受けた。作業は遠隔操作の重機で慎重に進めなければならず、通常の工事現場とは比べものにならないくらい時間がかかるという。

推定880トン
 2011年の事故では、1~3号機で核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)が起きた。その際にできた核燃料デブリは、計約880トンと推定されている。
 東電は全量を取り出す計画で、ロボットなどを用いて調査を行っている。だが、担当者は「実際どのくらいの量なのか、正直わからない」と明かした。
 デブリの試験的な取り出しは、今年8~10月に着手する方針だ。前例のない回収作業に向け、国内外の知見を集めながら試行錯誤し、取り出しを行う装置を開発しているという。
 すべてのデブリを取り出した上で、2041~51年に廃炉を完了させる。東電はそうした道筋を描いている。

巨大タンク
 構内の至るところで目についたのが数多くの巨大なタンクだ。石油コンビナートを訪れているような感覚で、かつては発電所だったことが信じられなくなるほどだ。
 タンクの数は1000基以上に上り、核燃料デブリを冷やした後の汚染水を浄化処理した「処理水」が入っている。多数のタンクが廃炉作業に必要な設備のスペース確保を妨げるとして、東電は昨年8月に処理水の海洋放出を始めた。
 取材した時には、6回目の放出が行われていた。処理水海洋放出は、廃炉完了まで続く見通しだという。
 事故の爪痕はいまも現場に生々しく残り、廃炉への道のりは長い――。福島で改めて現実を直視させられた。

事故対策 県民に説明を
 原発でひとたび事故が起きれば、廃炉作業は長期にわたり、世界的にも経験がない困難な作業を強いられる。今回の取材を通して、事故を防ぐ対策の重要性を改めて感じた。
 柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、新潟県内では、東電が再び原発を運転することへの懸念の声が根強い。だが、東電は原発事故の影響の大きさを痛感しているはずだ。
 東電は福島の教訓をどう生かしているのか。新潟県民にわかりやすく説明することが求められている。

教訓 柏崎刈羽に
 東京電力は「事故を起こした原発の廃炉」と「再び原発を運転する」という二つの課題に同時に取り組んでいるが、福島第一と柏崎刈羽原発で進めている取り組みには深い関連がある
 柏崎刈羽原発では、福島第一原発事故の教訓を生かし、自然災害などの発生に備えた「多重」かつ「多様」な対策を施している。電源対策を例に挙げると、外部からの電源供給が途絶えた場合に備えて、既存の非常用発電機に加え、構内の高台に電源車やガスタービン発電機車を配備する。
 福島第一原発は2011年3月の東日本大震災時、地震で外部からの電力供給が絶たれた上、津波で非常用電源も使えなくなった。電源を失ったことで核燃料を冷やせなくなり炉心溶融(メルトダウン)を招いた
 柏崎刈羽原発の電源対策はこうした事態への反省を踏まえたもので、事故を二度と起こさないために導入された新規制基準に沿っている