宮城県丸森町の住民が「福島県側と同等の賠償をしてほしい」として、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)に調停を申し立てました。
同町の筆甫地区は福島第1原発から45~55キロ圏内で、2011年7月末の放射線量は地区14カ所の平均で毎時0.7マイクロシーベルトを計測し、同時期地区平均で毎時約0.2マイクロシーベルト以下の福島県いわき市平地区よりも高い数値でした。しかし福島県外ということで東電はより低額な精神的損害賠償しか支払わなかったので、行政上の区分けによって低額に抑えられる理由はないとして差額を請求するものです。
被災者たちが原発ADRに申し立てをせざるを得なくなった背景には、「原発被災者支援法」が成立してからまもなく1年にもなろうというのに、いまだに何も具体化されていない※のに加えて、現在審議されている「時効特例法」による救済範囲も極めて限定されているということがあります。
※ 2013年5月5日「原発事故被災者支援法をなぜ早く施行しないのか」
被災者たちにとっては自衛上の申し立てなのですが、弁護士を立てるには勿論費用も掛かります。前述した国側の怠慢によるしわ寄せは、こうした形でもすべて被災者の肩に重くのしかかっています。
以下に河北新報の記事を紹介します。
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「福島と同等の賠償を」丸森町民、きょうADR申し立て
河北新報 2013年05月21日
東京電力福島第1原発事故で受けた精神的損害の慰謝料増額を求め、裁判外紛争解決手続き(ADR)を原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てる宮城県丸森町筆甫地区の住民代表が20日、同地区で記者会見し、「福島県側と同等の賠償をしてほしい」と訴えた。21日に東京で申し立てを行う。
会見には住民代表3人と担当弁護士が出席。申立人は筆甫地区の全住民の約9割に当たる272世帯698人(うち22人は地区外に避難)で、請求総額は7024万円。福島県外での集団申し立ては初めてとなる。
筆甫地区振興連絡協議会の引地武男会長(71)は「地区は福島県と接し、放射線量も原発からの距離もほぼ同じなのに区別されている」と住民の思いを代弁。「現状を理解し同等の賠償をしてほしい。時間が掛かっても地区の暮らしを取り戻したい」と語った。
「子どもが外で遊んだり、祖父母と一緒に野菜を収穫したりした光景は原発事故後、もう見られない」。小学生と幼稚園の3児の母の引地睦美さん(32)は地区の状況を説明し、「放射能による将来への影響に不安を感じ、悩み続けてきた」と訴えた。
協議会の吉沢武志事務局長(36)は「福島県外の原発事故被災地にもっと目を向けてほしい」と呼び掛けた。
筆甫地区は福島第1原発から45~55キロ圏内で、2011年7月末の放射線量は地区14カ所の平均で毎時0.7マイクロシーベルトを計測。同じ時期に地区平均で毎時約0.2マイクロシーベルト以下だったいわき市平地区よりも数値は高かった。
丸森町ではこれまで、精神的損害賠償として18歳以下の子どもと妊婦に28万円、大人に4万円が東電から支払われた。一方、いわき市や隣接する相馬市など福島県内23市町村の「自主的避難等対象区域」では、子どもと妊婦に52万円(避難した場合72万円)、大人に12万円が賠償された。
筆甫地区住民は、被害は自主的避難等対象区域と同程度として、差額分の賠償金を請求する。