23日正午前に茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の実験施設で、少なくとも研究者4人が被曝する事故が起きました。残る51人の職員の中にも被曝した人がいる可能性があるということです。
大強度陽子加速器施設(J-PARC)のハドロン施設で、標的である金に陽子ビームを照射し素粒子を発生させる実験をしていたところ、ビーム取出装置が誤作動したことにより短時間に想定以上のビームが標的に照射されたため放射性物質が生成し、ビームライン装置から施設内に漏えいしました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
被ばく事故「認識が甘かった」
NHK NEWS web 2013年5月25日
茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の実験施設で、少なくとも研究者4人が被ばくした事故で、現場の安全管理責任者は、「これほどの事態になるとは思っておらず、被ばくの検査の遅れや、放射性物質を外に漏らしてしまったことなど認識が甘かった」と述べました。
この事故は、茨城県東海村にある原子力機構の実験施設で、23日の正午前、金に特殊なビームを当てて素粒子を発生させる実験中に装置が誤作動し、想定を超える放射性物質が発生したもので、少なくとも22歳から34歳の男性4人が放射性物質を体内に取り込むなどして、最大で1.6ミリシーベルトの被ばくをしたほか、放射性物質が施設の外に漏れ出ました。
事故について、25日午前、原子力規制庁で現場の安全管理責任者が記者会見し、研究者4人の被ばく量は、内規で国への報告が必要な数値を上回っていましたが、事故直後に行った汚染検査が不十分だったため、詳しい内部被ばくの検査を行わず、対応が遅れたことを認めました。
また、施設の外に放射性物質が漏れ出したのは、「実験室内で高まった放射線量を下げるために換気用のファンを回したことによる可能性が高い」と説明し、「本来、放射性物質を外に漏らすことはあってはならず、放射性物質の取り扱いに対する認識が甘かった」と述べ、謝罪しました。
原子力機構によりますと、実験施設周辺の放射線の値は、今は平常時と変わらず、放射性物質の外部への漏えいはないということです。
原子力機構では、当時、実験施設に出入りした残る51人について、内部被ばくの検査を進めており、被ばくした人の数は今後、増える見込みで、今回の対応のどこに問題があったかを詳しく検証し、対応策を検討するとしています。
労基署が事実関係調査
茨城労働局によりますと、今回の事故を受けて水戸労働基準監督署の署長ら3人が、25日午前中から茨城県東海村の日本原子力研究開発機構を訪れ、職員から事故の事実関係について聞き取り調査を行っているということです。
茨城労働局は、労働者の健康を確保する対策がきちんととられていたかや、原子力機構が原子力施設で働く労働者の被ばく管理などについて定めた規則に違反していないかどうかなどを確認したいとしていて、調査の結果を受けて、今後の対応を検討することにしています。
JーPARCとは
今回、事故のあった実験施設、「J-PARC」は、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が、茨城県東海村で共同で運営しています。
「J-PARC」は直径500メートルの大型加速器など3つの加速器と、3つの実験施設からなり、このうち事故があったのは、「ハドロン実験施設」と呼ばれる素粒子や原子核に関わる実験を行う施設です。
この施設は、幅60メートル、長さ56メートル高さ16メートルあり、加速器を使って光とほぼ同じ速さに加速された陽子を、金などの金属に衝突させて発生する素粒子の性質を調べています。
陽子が金属に衝突する際には、原子核をばらばらに壊す「核破砕反応」といわれる反応が起こり、素粒子のほかにさまざまな放射性物質が発生するということです。
「ハドロン実験施設」は5年前に完成して実験を開始しましたが、これまで放射性物質が漏れるなどのトラブルは起きていなかったということです。
被ばく事故 県などが立ち入り調査
NHK NEWS web 2013年5月25日
茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の実験施設で、少なくとも研究者4人が被ばくした事故で、25日午後、茨城県や東海村など地元の自治体が施設への立ち入り調査を行いました。
立ち入り調査をしたのは茨城県のほか、原子力機構と安全協定を結んでいる東海村を含む7つの市町村で、事故があった施設がある原子力機構の原子力科学研究所に20人が集まりました。
はじめに、茨城県原子力安全対策課の松本周一技佐が「今回の事故は、住民に大きな不安を与えるものと認識している。県や市町村への通報連絡も、もっと迅速に行えたのではないかと考えている」と話しました。
これに対して原子力科学研究所の近藤悟所長は「このたびは、大きな事象を起こしたことを大変申し訳なく思っている。改めておわび申し上げたい」と陳謝しました。
このあと、自治体の担当者たちは事故が起きた実験施設に向かい、▽放射性物質が外部に漏えいしたとみられている排気口の位置や、▽被ばくした研究員4人が当時作業していた位置などについて、説明を受けました。
調査を終えた茨城県原子力安全対策課の松本周一技佐は「内部の構造や、当時の状況などについてある程度の説明が得られた。放射性物質が外部に漏れ出す原因として、建物の構造の問題があるのかもしれない」と話していました。
+
24日も通常運転…原子力機構が虚偽発表
日本テレビ 2013年5月25日
日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、23日に事故を起こした施設が24日の時点でも「通常通り運転中」と虚偽の発表をしていたことが判明した。
これは、原子力機構の広報室が24日午後、「原子力機構週報」として各施設の稼働状況を発表したもので、23日正午前に事故を起こし、停止していたはずの茨城県東海村の実験施設は通常通り「利用運転中」とされていた。広報室によると、23日午後に東海村の実験施設に確認した際には「通常通り運転中」と報告を受け、事故の連絡を受けたのは24日午後10時頃だったためとしている。
広報室は「結果的に虚偽の報告になったことをおわび申し上げたい」とコメントした上で、2度と起こらないよう機構内の報告連絡体制を改めて検証したいとしている。