ニューヨーク・タイムズは30日、福島原発から「放射能が太平洋に流出する惧れがあるのに、東電には一貫した戦略がなく、場当たり的にこなしているだけ」と東電の対応を批判しました。
また当初、事故への対処に協力したいとの米国の申し出を政府が断ったことについても、「同原発を原子力産業のコントロール下に置き続けたかったからだ」と述べました。
日本に対しては遠慮のないことを書く米紙だけに、外国人が抱く本音や懸念がそのまま伝わってきます。
いまだに何の根本策も持たないでいる東電や政府のありようは、海外に対しても恥ずかしい話です。
東電福島廃炉の調査に4月に来日したIAEAのメンバーも、空き地を埋めつくすように林立している貯水タンクの群れにまず驚き、「東電は信頼性を向上させるために、包括的な戦略を見直すべき。不具合が発生した場合は、迅速に問題を突き止める能力と対応する能力を備えることが大切」、という辛口のコメントを残して離日したばかりでした。
河北新報も30日付で、貯水タンク群が今後も“限りなく”拡張される実態についての記事を載せました。
以下に二つの記事を紹介します。
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福島第1原発の汚染水「最新の危機」「東電に戦略ない」 米紙
産経新聞2013年4月30日
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は30日までに、東京電力福島第1原発で増え続ける汚染水が同原発事故の「最新の危機」だと報じた。汚染水が漏れ出し、太平洋に流出する危険を指摘したほか、東電に「一貫した戦略がない」とし、次々に表面化する問題の処理を場当たり的にこなしているとも批判した。
記事は、東電と政府が事故後の対策に外部専門家らの関与を拒んだと指摘。同原発を原子力産業のコントロール下に置き続けたかったためだと指摘している。
汚染水増加の原因である地下水の流入を止めるため、原子炉建屋の周囲にコンクリートの壁を地下約18メートル以上の深さまで設置する提案も東電は拒否し、代わりに地下貯水槽を急造するなどの暫定策を取ったが、結局、貯水槽が水漏れを起こしたと伝えた。(共同)
福島第1原発 遠い廃炉 貯水タンク群、拡張の一途
河北新報2013年4月30日
福島第1原発の施設規模が原発事故後、拡大し続けている。廃炉作業で大型の関連施設が次々に新設された。原発をなくす作業のために、かえって施設が肥大化する裏腹な経過をたどっている。
新設施設は(1)貯水タンク(2)地下貯水槽(3)多核種除去設備(4)貯蔵プールに代わって使用済み燃料を保管する乾式キャスクの仮保管設備-など。
タンクは放射能汚染水をためる。大きさは主に直径12メートル、高さ11メートル、容量1000トン。数は940基に上り、配列されたタンク群は構内を覆い尽くす勢いだ。
汚染水は1日400トン排出され、2日半でタンク1基が満杯になる。そのタンクに代わる貯蔵設備が地下貯水槽だ。最大で縦60メートル、横53メートル、深さ6メートルの7基が設けられた。だが、4月に水漏れトラブルが相次ぎ、東京電力は使用を中止。巨大施設が無用の長物になった。
東電は使用中止を受け、貯水槽の水をタンクに移す対策に乗り出した。600基以上のタンクが増設される見通しで、タンク群は拡張を続ける。
多核種除去設備は汚染水から放射性物質を取り除く。縦横60メートル、高さ20メートルで無数のタンクと配管が白い巨大テントに覆われている。乾式キャスクの仮保管設備には設置場所として縦95メートル、横80メートルのスペースを確保した。
原発敷地は350ヘクタールで、事故前は大半が森林だった。事故後は関連施設の用地を確保する必要に迫られ、敷地全体の6分の1を超す60ヘクタールの森林を伐採した。
事故を起こした原発を廃炉にするために関連施設が増える事態はチェルノブイリ原発でも見られ、原子炉を閉じ込める巨大なコンクリート製の「石棺」が建設された。石棺の老朽化が進み、さらに鉄製の巨大ドームで覆っている。
福島市に避難する元原発作業員男性(57)は「汚染水が増えている以上、処理施設の増設は仕方がないが、増える一方ではいつか限界が来るのではないか。収束どころか施設がどんどん増えるようでは避難者の帰還が遠のく」と話した。
東電は「廃炉作業を迅速、着実に行うために設備を設置している。今後も必要な物を設け、作業を進める」としている。