東京新聞に、栃木県那須塩原市の有志が、きめ細かく地域の線量を調べる「汚染マップ」の作成に取り組んでいることが報じられました。
それによると、東電福島原発事故から2年が経過した今も、同市では国が目安とする一般人の被ばく許容線量(0.23マイクロシーベルト/時)以下に収まるところは一箇所もなく、大きく上回る汚染状況だということです。
正常な放射線量は大体0.05マイクロシーベルト/時といわれているので、許容線量レベルはその約50倍に当たります。それを大きく上回るとなれば数百倍のレベルなのでしょう。それなのに同市でもやはり、放射線についておおっぴらに語り合えない雰囲気があったということです。
この話しは良く聞くことでそのこと自体が大変な問題です。そしてそういうところに住まざるを得ない親たちが、低線量被ばくに曝される子どもたちの健康を心配する気持ちが思いやられます。
マップを作る中でそういう雰囲気も改善されていったそうですが・・・
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那須塩原市民が放射線地図
東京新聞 2013年5月10日夕刊
首都圏の汚染状況重点調査地域の中でも空間放射線量が高いとされる栃木県那須塩原市の住民が、きめ細かく地域の線量を調べた「汚染マップ」の作成に取り組んでいる。市の測定地点だけでは不十分として、生活道路などを最短五十メートル間隔で測定。マップからは、東京電力福島第一原発事故から二年が経過した今も、国が目安とする一般人の被ばく許容線量を大きく上回る汚染状況が読み取れる。 (石井紀代美)
「この地域は高いと聞いていたけど、やっぱりなという印象。国の基準(毎時〇・二三マイクロシーベルト)を下回る所は一つもないですよ」
マップを作成した「関谷・下田野地区 未来を考える会」メンバーで、小学四年と中学三年の子どもを持つ八木沢勉さん(42)はつぶやく。考える会は、関谷、下田野両地区の自治会組織の一部として昨年七月に発足。子育て真っ最中の三、四十代から六十代まで、幅広い世代の二十五人が参加する。
昨年十一月、独協医科大の木村真三准教授を招いた勉強会で「まずは放射能汚染の現状を知ることが必要」と言われ、マップ作りに取り組み始めた。
市は毎月、山間部を除いた計三百十七カ所で線量を測定し、ホームページなどで結果を公表しているが、測定地点は一平方キロメートルごとに一カ所程度。継続して測定するには、予算や人員が限られる。
「子どもの被ばく量をできるだけ抑えるために、注意すべき場所がどこにどれだけあるか知りたい」。同会は市から線量計を借りて、月に一回、小中学校の通学路を中心に五十~百メートル間隔で測定。地表面と地上一メートルでの数値をA4判のマップに記入し、回覧板で回している。毎月、測定場所を変えており、月を追うごとにきめ細かいマップになる。
二~四月の三回で六十カ所以上を計測したが、全ての地点で国の基準を上回った。最高値は地上一メートルで毎時〇・八五マイクロシーベルト。地表面では最高七・一七マイクロシーベルトを記録した。
市の測定では、最高値(地上〇・五メートル)は〇・五二マイクロシーベルトだが、同会は危険な場所を把握するため、あえて草むらや道路の側溝など線量が高くなりやすい場所も測定する。
両地区周辺には酪農の牧草地や温泉旅館があり、以前は、近所で放射線について語り合えない雰囲気もあったという。しかし、同会の高田昇平会長(63)は「住民の意識が変わってきた。『こんなに線量が高いの?』とか『家に孫がいるけど、除染した方がいいのかい?』と言う人も出てきた」と実感する。
メンバーの平山徹さん(36)は「子どもたちは住む環境を選べない。低線量被ばくの影響が分からない中、安心して暮らしていくためには大人たちが動かないと」と力を込めた。
<汚染状況重点調査地域> 自然由来の放射線を除く、年間の被ばく線量が1ミリシーベルト(毎時換算で0・23マイクロシーベルト)を超える地域を持つ市町村を、放射性物質汚染対処特措法に基づき国が指定する。首都圏や東北地方に101市町村あり、国から補助を受けて除染を実施している。