原子力規制委員会の専門家会議が15日に、「原電敦賀原発2号機の真下を走る断層は活断層である」という報告書を取りまとめたことに関し、原電が専門家会議メンバーの5氏に対して、「厳重抗議」と題した異例の文書を送り付けたことが分かりました。
原電は5氏の宛名を書いた厳重抗議書を規制委事務局に手渡し、事務局は「原電への対応は規制委がする」とのただし書きをつけてそれを専門家に郵送したということです。
受け取った専門家たちは、「非常に嫌な気持ちだ。われわれの結論をどう扱うかは規制委の問題で、個人宛てに出すのはおかしい」、「一般的な諮問会議とかでは、あり得ないのでは。いい気持ちはしない」、「審査された側が、審査に協力した外部の専門家に抗議文を押しつけるのはいかがなものか」、などと不快感を顕わにしました。
記者会見で事務局の責任者は「科学的な観点で議論してもらうために、いい環境はつくっていきたい」と語るのみで、そうした抗議が専門家への圧力となる可能性について問われてもノーコメントでした。
原電の社長は17日、記者団に対して「専門家はわれわれの意見をほとんど無視したから抗議文を送った」と「言い放った」ということですが、とても審査を受ける側が審査する側に対して取る態度ではありません。
規制される側の業者の「異例で異様な行動」を規制委事務局は制止するどころか、言われるままに唯々諾々とその抗議文を専門家に郵送し、専門家に対する圧力ではないのかとの記者の質問に対してもノーコメントを通す規制委事務局の態度もまた異様です。
もはや軌道から大きく逸れているのでしょうか。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
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原電、専門家に個別抗議
東京新聞 2013年5月20日
日本原子力発電(原電)が、敦賀原発2号機(福井県敦賀市)の真下に活断層があると認定した原子力規制委員会の調査チームの専門家たちに、「厳重抗議」と題した異例の文書を送りつけた。専門家からは「個人として抗議されるのはおかしい」など戸惑いの声が出ている。今後、各原発での活断層調査に当たる専門家への影響も懸念される。 (大村歩)
十七日、議論のやり直しを要請するため規制委を訪れた原電の浜田康男社長は「専門家はわれわれの意見をほとんど無視した。だから抗議文を送った」と報道陣に言い放った。
専門家たちは規制委の依頼を受け、科学的なデータを基に断層が活断層かどうかを客観的に判断。その報告を基に、原発の運転を認めるのかどうかを判断するのは規制委。抗議するなら、その相手は規制委のはずだ。
原電は、評価に加わった五人の各専門家の宛名を書いた厳重抗議を規制委事務局に手渡した。
事務局は、原電への対応は規制委がするとのただし書きをつけ、専門家に郵送したという。
一方、受け取った専門家側は驚きと不快感を隠せない。
「非常に嫌な気持ちだ。われわれの結論をどう扱うかは規制委の問題で、個人宛てに出すのはおかしい」。京都大の堤浩之准教授はこう語る。東京学芸大の藤本光一郎准教授も「一般的な諮問会議とかでは、あり得ないのでは。いい気持ちはしない」と話した。
名古屋大の鈴木康弘教授は「審査された側が、審査に協力した外部の専門家に抗議文を押しつけるのはいかがなものか」と指摘。「研究者個人の勇気や使命感に頼った審査体制ではいけない」と規制委にも注文をつけた。
記者会見で、専門家が圧力を感じながら議論する問題点を問われた規制委事務局の森本英香次長は「科学的な観点で議論してもらうために、いい環境はつくっていきたい」と語ったが、具体策には触れずじまい。
こうした抗議が専門家への圧力となる可能性については「コメントを差し控えたい」と述べるにとどまった。