2013年5月29日水曜日

政府は「福島」住民保護政策の根本的転換を

 国際人権NGO ヒューマンライツ・ナウが、「国連『健康に対する権利』特別報告者の勧告に基づき、日本政府は今こそ、原発影響後の住民保護について、抜本的な政策転換を図るべき」とする声明を発表しました。

 先の国連特別報告者アナンド・グローバー氏の福島調査報告に基づいてのもので、健康管理調査の改善を求める報告者の勧告を支持・歓迎する立場から、政府は安全な環境、少なくとも年間1mSv以下の環境で生きる権利を人々に保障すべきこと、年間1mSv以上の地域に居住するすべての住民と原発労働者に対して包括的で長期間にわたる健康調査を実施すべきこと、その健康調査も血液・尿検査も含めすべての可能性のある疾患・症状に調査範囲を拡大すべきこと、また子どもに対する甲状腺検査のあり方を抜本的に改めるべきことなどを要求しています。

 日本政府は国連特別報告に対して27日、特別報告者の勧告には多くの誤解があるとして、「年間被ばく線量が最大20mSvまでなら居住しても安全と明言したことはない 日本政府は国際放射線防護委員会(ICRP)の見解に従っており問題はない」などと反論したようですが、「特定避難勧奨地点」に指定する条件が年間線量20mSv以上ということは、「それ以下であれば居住すべし」ということに他なりませんし、英国のNPO民間団体であるICRPは「年間100mSvを超えなければガンなどの被害は確認されていない」と主張し低線量被曝を認めていない団体なので、そこの基準に準拠してみてもとても国民の被曝による被害は防止できません。

 以下の記事はヒューマンライツ・ナウ事務局長伊藤和子弁護士のブログからのものです。ブログに「是非拡散してください」と書いておられるのでそのまま紹介します。 
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国連特別報告者の勧告を受け、福島原発事故後の対応の抜本的な改善を
 2013年5月28日
人権は国境を越えて 弁護士伊藤和子のダイアリー

 ジュネーブに来ています。国連人権理事会に出席していますが、主な目的は、国連特別報告者アナンド・グローバー氏の福島調査報告の傍聴と意見表明、関連イベントです。
 井戸川元双葉町長ほか、住民の方とご一緒です。
  この報告書・勧告ですが、たいへん素晴らしいものです。こらちでみなさんがもりもりがんばってくださり、すべて和訳しましたので、是非ご確認ください。
 ヒューマンライツ・ナウでは、以下のステートメントを公表しました。
 これが一つの転機になることを強く望んでいます。是非拡散いただけると嬉しいです♪

福島: 国連「健康に対する権利」特別報告者の勧告に基づき、日本政府は今こそ、原発影響後の住民保護について、抜本的な政策転換を図るべき

 2013年5月27日、国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏は、国連人権理事会に対し、福島原発事故後の人権状況に関する事実調査ミッションの報告書を提出し、日本政府に対する詳細な勧告を提起した。
 この調査ミッションは2012年11月の特別報告者来日時に実施されたものである。
 東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)は、この報告書と提言が示す明確な結論を歓迎する。

 福島原発事故により放出された放射性物質の影響により、今も周辺住民、特に妊婦、子ども、若い世代は深刻な健康リスクにさらされている。多くの人々は、政府の設定した「年間20ミリシーベルト」という避難基準のもと、放射線量の高い地域に住み続け、移住・避難のための経済支援も十分な健康対策も図られていない。政府は、「100ミリシーベルト以下の低線量被曝は安全」との見解を普及し、低線量被曝の影響を過小評価し、すべての政策をこうした見解に基づき、住民の意見を十分に反映しないまま決定・実行してきた。
 こうした状況のもと、特別報告者は、低放射線被ばくの健康影響に関する疫学研究を丁寧に指摘し、低線量被曝の影響が否定できない以上、政府は妊婦や子どもなど、最も脆弱な人々の立場に立つべきだと指摘し、「避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること」(勧告78(a)) を勧告した。また、帰還について「年間被ばく線量が1mSv以下及び可能な限り低くならない限り、避難者は帰還を推奨されるべきでない」と指摘した。
 これは公衆の被ばくを年間1mSv以下にするよう明確な基準を求めた、極めて重要な勧告である。
 私たちは、日本政府に対し、この勧告を受け入れ、公衆の被ばく限度を厳格に見直し、安全な環境、少なくとも年間1mSv以下の環境で生きる権利を人々に保障するよう求める。
 同時に、特別報告者の勧告に従い、学校教育その他の情報提供にあたり、低線量被曝の安全性でなく、リスクを正確に教育・情報提供するよう求める。
 特別報告者が正確に分析している通り、健康影響調査は極めて限定的で不十分であり、私たちは健康管理調査の改善を求める特別報告者の勧告を支持・歓迎する。
 政府は、年間1mSv以上の地域に居住するすべての住民と原発労働者に対して包括的で長期間にわたる健康調査を実施すべきであり、血液・尿検査も含め、すべての可能性のある疾患・症状に調査範囲を拡大すべきである。
 また、特別報告者が詳細に指摘する通り、検査の頻度、情報へのアクセス、セカンド・オピニオンの保障の点で、子どもに対する甲状腺検査のあり方を抜本的に改めるべきである。
 政府は、原発被災者への対応を怠っており、20126月に成立した基本法である「子ども被災者支援法」については、約1年経過後も、基本計画を策定せず、原発被災者の切実な要望を放置している。
 この点、特別報告者は、同法によって支援を受けるべき人々は、事故当時居住していた地域が1mSvを超えて汚染されたすべての地域であるべきだ、と指摘する。そして、政府に対し、「移住、居住、雇用教育、その他の必要な支援を、年間1mSv以上の地域に居住、避難、帰還したすべての人に提供する」よう求めている。
 これは、健康の権利を保障するために、重要かつ合理的な勧告である。私たちは、政府に対し、この勧告を直ちに実現し、影響を受けたすべての地域の居住者・避難者を対象とする包括的な施策の実施を進めるよう求める。その際には、住民、特に子どもや母親など、脆弱な立場に置かれた人々の声を十分に聴き、政策決定への参加を求めるべきである。
 このほか、特別報告者の報告・勧告は、事故原因、緊急対応、復旧、生活再建、放射線からの保護に関する日本政府のこれまでの政策を包括的・客観的に検証し、健康の権利の視点から明確で具体的な改善点が勧告として提示されている。
 政府はひとつひとつの指摘に誠実に向き合い、政策の改善・変更を行い、明確なタイムテーブルを決めて直ちに実行すべきである。
 福島原発事故から2年以上が経過したが、政府の対応は、チェルノブイリ事故等の住民保護政策から見ても著しく劣悪であり、極めて不十分な対策しか講じられないまま今日に至っている。
 私たちは、今回の国連特別報告者の調査報告書提出を契機に、日本政府と東京電力に対し、改めて原発事故の影響を受けた人々に対する政策の問題点を真摯に反省し、勧告を誠実に実施するとともに、人権の視点に立った抜本的な政策の改善を求める。
 それは、子どもや将来世代への深刻な健康影響を防ぐ唯一の道であると考える。
 以 上