福島第一原発で地中への漏洩を起こした地下水槽のうち1,2号地下水槽については、6日にようやく水槽内の水を地上タンクに移す作業を終了し、引き続き今月の下旬から3、6号地下水槽の水を地上タンクに移送する作業に入るということです。
日量400トン発生する放射性廃液を、突貫工事で作り続けている地上タンクに貯蔵するという応急作業は、この先も際限なく続ける他はなくて大変な問題なのですが、それに加えて濃厚廃液を地上タンクに多数貯蔵することにより、敷地境界における年間放射線被曝量が7.8ミリシーベルト(規制値は1ミリシーベルト)に達するという新しい問題が発生しました。
もともと現在建設を続けている地上タンクは仮設のもので、側版をボルト止めして積み上げていく構造なので耐用年数は数年間とされています。従っていずれそれにどう対処するかの問題が発生します。
また記事に書かれているとおり、毒性が強く除去する方法のないトリチウムが排水中に含まれていることもあるなど、問題は他にも山積です。
以下に産経新聞の記事を紹介します。
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地上移送で被曝線量8倍 福島原発
産経新聞 2013年年5月7日
東京電力福島第1原発の地下貯水槽で汚染水の漏洩(ろうえい)が相次いだ問題で、東電は7日、汚染水を地上タンクに移した結果、同原発南側敷地境界の年間被曝線量が、目標としていた1ミリシーベルトを超え、約7.8ミリシーベルトになるとの試算を発表した。1、2号貯水槽の地上タンク移送は6日に完了したが、今月下旬には3、6号貯水槽の移送が始まる。5月中旬と6月には許容量が最も逼迫(ひっぱく)する見通しで貯水タンク不足に変わりはなく、依然ギリギリの対応が続いている。(原子力取材班)
東電は中長期計画の中で、同原発の敷地境界での年間被曝線量を、事故前の基準である1ミリシーベルト以下にすることを目標としている。今年3月には事故後初めて、1ミリシーベルトを下回る水準にまで下がっていた。
しかし、汚染水を地上タンクに移したことで放射線量が上昇。タンクのある敷地南側で放射線量が増加する見通しとなったという。
1、2号貯水槽からの移送完了で、漏洩が続く状況は回避されたが、思わぬ“副作用”に、東電幹部も「目標達成が遠のいた」と頭を抱える。
「4月危機」回避
微量の漏洩が確認された3号貯水槽(約8400トン)からの移送は今月下旬になる見通しだ。移送先のタンクが不足しているのが理由で、東電はタンクを増設して対応する。
しかし、原子炉建屋などに地下水が流入することで、汚染水は毎日約400トンずつ増加。タンク設置が遅れれば、汚染水が行き場を失う事態となる。
危機が迫ったのが4月18日。タンクの許容量は残り4300トンにまで達した。対策を取らなければ11日で許容量を超えてしまう状況だった。「4月危機」はなんとか乗り切ったが、東電の試算では5月19日には4200トン、6月4日には3600トンと許容量が再び逼迫するという。
東電は緊急用タンクを月内に120基(総容量4千トン)設置して、万が一の事態に備える方針だが、地下水が増えて汚染水を増やす梅雨も迫る。新たな漏洩が見つかるなど、不測の事態が発生すれば状況は一変する危険をはらんでいる。
未知数の抜本策
汚染水を減らす対策も進められている。3月30日に試運転を開始した新汚染水処理システム「多核種除去設備=ALPS(アルプス)」は、計60種類の放射性物質を取り除くことが可能だ。
現在は試運転中のため3系統あるうちの1系統のみが稼働しているが、東電は残り2系統の早期運転開始を原子力規制委員会に要請しており、許可が下り次第、稼働させる予定だ。また、地下水が原子炉建屋に流入し、汚染水と混じる前に、地下水をくみ上げる計画も立てている。
しかし、ALPSではトリチウムという放射性物質を除去できず、処理後も水を保管する必要がある。地下水のくみ上げも、流入量の減少にどれだけ効果があるかは未知数で、いずれも抜本的な解決になるかは不透明な状況となっている。