来日するなどして福島原発事故の被ばく問題について調査していた国連人権理事会のアナンド・グローバー氏の報告書(暫定版)がまとまり、近く人権理事会に報告されます。
それによると現在行われている福島県民の健康管理調査は不十分だとして、尿検査や血液検査を実施し内部被ばく検査を充実すべきこと、年間1ミリシーベルトを上回る被曝地域はすべて健康調査をすべきこと、児童の甲状腺検査についても内部被曝検査を併せて行い、診断結果は速やかに保護者に渡すべきことなどを求めています。
また国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点については、「避難地域・公衆の被曝限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被曝を年間1mSv以下に低減するようにすること」※と厳しく指摘しています。
つまり年間被曝20ミリシーベルトは現行の放射線管理区域(3ヶ月間で1.3ミリシーベルト)の4倍にも当たるもので、そんなところに住ませようというのは明らかに「地域住民の人権の侵害」であるというわけです。
追記 同氏の調査報告書 (5月23日暫定版)の仮訳は下記でご覧になれます(ヒューマンライツ・ナウによる仮訳)。
※ 「避難の権利」ブログ
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福島第1原発事故:国連報告書 「福島県健康調査は不十分」
毎日新聞 2013年05月24日
東京電力福島第1原発事故による被ばく問題を調査していた国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏の報告書が24日明らかになった。福島県が実施する県民健康管理調査は不十分として、内部被ばく検査を拡大するよう勧告。被ばく線量が年間1ミリシーベルトを上回る地域は福島以外でも政府が主体になって健康調査をするよう求めるなど、政府や福島県に厳しい内容になっている。近く人権理事会に報告される。
報告書は、県民健康管理調査で子供の甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病などの発症も想定して尿検査や血液検査を実施するよう求めた。甲状腺検査についても、画像データやリポートを保護者に渡さず、煩雑な情報開示請求を要求している現状を改めるよう求めている。
また、一般住民の被ばく基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被ばくをする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう政府に要求。国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点に触れ、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と指摘した。
このほか、事故で避難した子供たちの健康や生活を支援する「子ども・被災者生活支援法」が昨年6月に成立したにもかかわらず、いまだに支援の中身や対象地域などが決まっていない現状を懸念。「年間1ミリシーベルトを超える地域について、避難に伴う住居や教育、医療などを支援すべきだ」と求めている。【日野行介】
◇グローバー氏の勧告の骨子
<健康調査について>
・年間1ミリシーベルトを超える全地域を対象に
・尿や血液など内部被ばく検査の拡大
・検査データの当事者への開示
・原発労働者の調査と医療提供
<被ばく規制について>
・年間1ミリシーベルトの限度を順守
・特に子供の危険性に関する情報提供
<その他>
・「子ども・被災者生活支援法」の施策策定
・健康管理などの政策決定に関する住民参加