国連科学委員会は31日、福島原発事故の周辺住民への健康影響について、2年間に及ぶ約80人の専門家による調査の結果、住民が被ばくした放射線量は低く、「これまで健康に影響していない。将来的にも影響しないだろう」との見解をまとめました。
そのとおりであるならば大変な朗報ですが、日経新聞によると、1歳の乳幼児が事故後1年間に甲状腺に浴びた放射線量は、福島県の避難区域外で33~66ミリシーベルト、区域内でも最大82ミリシーベルトと推定されるものの、それは発がん率の増加が予想されるレベル100ミリシーベルトを下回っているので発がんの危険性はないとしています。
また事故後に見つかっている児童の甲状腺がん※は、被曝とは無関係のものであるともしています。
※ 福島県では第1回目に健康調査をした児童3万8,114人中から3人の甲状腺がん患者と7人の疑いのある子どもが見つかりました。小児甲状腺がんは通常100万人に1人といわれていますが、3万8千人中の3人は100万人あたり79人、(3+7)人の場合は263人になります。したがって極めて重大な影響があったと考えられますが、第2回目以降の甲状腺がん患者数については何故かいまだに発表がありません。
100ミリシーベルト以下では健康への影響はなく、見つかったがん患者は被曝とは無関係だと切り捨てれば、当然前記のような楽観的な結論になります。しかしそれでは被爆者や保護者の不安はとても晴らせません。
以下に関係の記事を紹介します。
日経新聞の記事は下記のURLでご覧ください。
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東日本大震災 : 福島第1原発事故
国連科学委、発がん危険性を否定 被ばく調査結果を発表
毎日新聞 2013年06月01日
【ウィーン樋口直樹】 国連科学委員会は31日、ウィーンで記者会見し、東京電力福島第1原発事故の周辺住民への健康影響調査結果を発表した。放射性ヨウ素131とセシウム137の甲状腺被ばく線量の推計値はいずれも発がん率の増加が予想されるレベルを大きく下回っているとして、被ばくによる発がんなどの危険性に否定的な見解を示した。
記者会見を前に毎日新聞の取材に応じた同委員会のバイス議長は、甲状腺がんが「今調査で推計された被ばく線量によって増えることはない」と言明。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)に比べ、福島原発ではチェルノブイリ原発にはなかった格納容器が放射性物質の放出量を減らし、危険度の高いストロンチウムやプルトニウムの拡散を防ぐことができたと指摘した。福島県が未成年者を対象に行った甲状腺検査で多数の受診者から小さな嚢胞(のうほう)などが見つかった点については、「香港や韓国でも同様の事例がより多くみられる。原因は不明だ」と述べた。
被ばく量最大10分1に=「迅速な避難」と評価
-福島原発事故で国連科学委
時事通信(2013/06/01-01:19)
【ベルリン時事】東京電力福島第1原発事故が住民の健康に及ぼす影響を調査している国連科学委員会は31日、住民が被ばくした放射線量は低く、「これまで健康に影響していない。将来的にも影響しないだろう」との見解をまとめた。
同委は事故後に住民を迅速に避難させた結果、被ばく線量を最大で10分の1に抑えられたと評価。このような措置を取っていなければ、「今後数十年の間にがんの発生率は高まり、他の疾患も増加した可能性がある」との見方を示した。
また、放射性ヨウ素に汚染された牛乳で子供の甲状腺がんの発生率が高まったチェルノブイリ原発事故と異なり、日本では汚染された食品の摂取を早期に規制したと指摘した。
同委はウィーンで27日から開いた総会で、2年間に及んだ約80人の専門家による調査の報告書案をめぐり意見交換した。報告書案は9月の国連総会に提出される。