2013年6月30日日曜日

プルサーマルも金喰い虫

 MOX燃料関電高浜原発に到着したのを機に、プルサーマルが既定の路線であるかのごとくに進めようとしている政府や電力会社への批判が高まっています。
 南日本新聞は29日付の社説で、これまであまり触れられなかった事実を指摘しました。
 それは「MOX燃料は使用後の扱いが極めて難しい」ということで、使用済みとなってからも崩壊熱量が高く毒性も強いために、現行の六ケ所村の再処理工場では処理ができず、新たな再処理施設を造るしかないということです。しかし使用済みMOX燃料の再処理技術は高度で海外にも開発例がないので、これから新しい再処理工場を作るとしたら一体どれだけ巨額の費用が掛かるのか分かりません。

 「巨費」といえばこれまでも原子力関係の新技術には際限がないほどの巨費が投じられてきました。しかしその結果はいまだに何の成果もないか、成果の程が良く確認できない状況になっています。
 「動燃」時代の1970年にスタートした「高速増殖炉もんじゅ」は、40年近くも巨費が投じられてきましたが全く動く気配はなく、停止している装置を維持するだけでも1日に5,500万円(5千5百万円/日)が掛かるといわれています。
 また満足に動いているのか良く分からない六ケ所村の再処理工場には、この先19兆円が掛かるといわれています。ここでの再処理は使用済み核燃料をガラス固化するところまでなので、それを地層に埋設(し少なくとも数百年間管理)する作業は別です。まだ着手の見通しも立っていませんが、この地層埋設の処理には当然莫大な費用が掛かります。
   ※ 「六ヶ所村にはまだ19兆円」 鎌田慧 公式ブログ 6月29日
   (「原発はもう負けてしまった技術なんです。技術史的には終わった、古い技術です。電気などなにも原子力に頼らなくてもつくれるし、充分に足りるということが、どんどんはっきりしてきています・・・・」と書き出された興味深い記事です)

 南日本新聞の社説を紹介します。
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[プルサーマル] 巨費をかけていいのか
南日本新聞 2013年6月29日
 東京電力福島第1原発事故後、停止したままのプルサーマル発電を再開しようという動きが慌ただしくなっている。関西電力がフランスに製造を依頼したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が高浜原発(福井県高浜町)に到着した。日本へのMOX燃料輸送は事故後初めてだ。
 関電は、7月の原発新規制基準施行後、速やかに高浜3、4号機の再稼働を申請し、まず3号機でのプルサーマルを再開させたい考えだ。MOX燃料の使用時期は未定だが、4号機への導入も視野に入れているようだ。
 高浜以外にも四国電力伊方3号機、九州電力玄海3号機もプルサーマルを前提に再稼働申請するとみられる。
 だが、電力各社が再開を目指すプルサーマルは重大な問題を抱えていることを見落としていないか。使用済み核燃料を再処理して作られるMOX燃料は使用後の扱いが極めて難しいことである。
 熱量が高く、毒性も強く、六ケ所村の再処理工場では再処理できない。新たな再処理施設を造るしかないが、使用済みMOX燃料の再処理技術は高度で海外にも開発例がないという。抜本策が見いだせない限り、国が推進する核燃料サイクルは行き詰まるというほかない。
 それでも電力各社が原発の再稼働と合わせてプルサーマルを進めようとするのは、原発内のプールにたまり続ける使用済み核燃料を六ケ所村の再処理工場にできる限り送り込む必要性があるからだ。
 各原発のプールに保管されている使用済み核燃料は約1万4000トンに上り、満杯状態に近づきつつある。再処理工場にもほぼ満杯の3000トンが貯蔵されている。再処理工場が早く稼働しないことには近い将来、貯蔵能力を超えてしまい原発が運転できなくなる。
 さらに問題なのは、核兵器の原料にもなるプルトニウムが増える懸念である。日本が保有しているプルトニウムは英仏に預かってもらっている約35トンと英仏から送り返された約9トンで、長崎型原爆5000発分にもなる。こうした状況を国際社会が許すはずがない。
 プルトニウムの消費を見込んだ高速増殖炉の開発が進まず、MOX燃料で肩代わりしている核燃料サイクルは無理がある。プルトニウム保有に対する厳しい目を正面から受け止める必要がある。
 いびつな核燃料サイクルを守るためプルサーマルに膨大な費用をかけることが果たしていいのか。脱原発依存から核燃料サイクル維持へと大きくかじを切った安倍政権の原発政策には疑問符が付く。