20日に公表された自民党の参院選公約には、原発の再稼働に向けて「地元自治体の理解が得られるよう最大限努力する」と、再稼動を目指すことが明記されました。半年前の衆院選では「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」と公約したのですから、明らかな変節です。
衆院選の公約は、言うまでもなく原則4年間の任期中に実施することを約束するものです。それを僅か半年しか経たないうちに正反対の原発依存に転換するというのでは、政権を取ったとたんに有権者を裏切った民主党の菅政権・野田政権と全く変わりません。
東京新聞は21日付で「自民の原発公約 『変節』は見過ごせない」と題する社説を掲げました。茂木経産相記者会見のNHKニュースとともに紹介します。
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【社説】 自民の原発公約 「変節」は見過ごせない
東京新聞 2013年6月21日
自民党の参院選公約は、原発再稼働に大きく踏み出した。昨年の衆院選で公約した、原子力に依存しない経済・社会の確立も、すっぽり抜け落ち、ほごにされた。変節を見過ごすわけにはいかない。
参院選は七月四日公示、二十一日投票の予定だ。補欠選挙を除くと、昨年十二月の第二次安倍内閣発足後初の国政選挙。約半年間の安倍政権の中間評価が問われる。
有権者は昨年の衆院選で、公約を基に自民党に再び政権を委ねた。この公約は議員任期の四年間有効な有権者と自民党との契約だ。よほどの状況変化が生じたならまだしも、一方的に変えることは許されない。
自民党がきのう発表した参院選公約はどうか。見過ごせない点がいくつかある。まずは原発だ。
公約は再稼働を前提に「地元自治体の理解が得られるよう最大限努力する」と踏み込んだ。安倍内閣の成長戦略「日本再興戦略」に原発再稼働が盛り込まれたため、それに合わせたのだろう。
しかも、衆院選で公約した「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」との文言は全く抜け落ちている。
再生可能エネルギー導入に死力を尽くした上での方針転換ならまだしも、舌の根も乾かぬうちに原発依存に転換するのは有権者を裏切る行為だ。二〇〇九年衆院選マニフェスト違反の消費税増税を強行した民主党とどこが違うのか。
「原発事故で死者が出ている状況ではない」として原発再稼働に踏み込んだ高市早苗政調会長に、脱原発を掲げる自民党福島県連が抗議するのも当然である。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還問題も同じ構図だ。
党本部は公約に名護市辺野古への「県内」移設推進を明記したが、基地負担の抜本的軽減を求める地元沖縄県連は「県外」移設を地域公約に盛り込む方針だという。
党本部はなぜ地域の事情や思いを十分くんで公約に反映しようとしないのか。それとも「二枚舌」で構わないと考えているのか。
今年に入り静岡県や名古屋、さいたま両市など主要首長選で自民党推薦候補が相次いで敗れた。安倍内閣の支持率は依然高いが、地域と向き合わない姿勢が、これまで自民党の強みとされていた地方での支持離れにつながっているのではないか。
選挙のときには甘言を弄(ろう)し、政権に就いてしまえば、あとはやりたい放題が続くのなら、有権者の政治不信は高まるばかりである。
経済産業相「原発運転再開に地元理解を」
NHK NEWS WEB 2013年6月21日
茂木経済産業大臣は閣議のあとの記者会見で、原子力発電所の新たな規制基準が決まったことについて、原子力規制委員会が各原発の安全性を確認した段階で運転再開に地元の理解が得られるよう、国としても最大限、努力する考えを改めて示しました。
この中で、茂木大臣は「個別の原発の運転再開の申請については、各事業者が行うものだが、原子力規制委員会による安全性の評価や確認が、新基準に基づいて、速やかに実施されることが望ましい」と述べました。
そのうえで、茂木大臣は「運転再開に当たっては、地元の理解を得ていくことが極めて重要だ。事業者任せにするのではなく必要に応じて自治体も含めた関係者の理解を得るために、国としても最大限に取り組みたい」と述べ、原子力規制委員会が各原発の安全性を確認した段階で運転再開に地元の理解が得られるよう、国としても努力する考えを改めて示しました。