19日、原子力規制委員会は原発の新規制基準を決定しました。
それに対して、かねてから原子力規制委員会に対して新規制基準策定にしっかりと時間をかけ、原発被災者や国民の声を反映させるべきことを提言してきた「原子力規制を監視する市民の会」は、「新規制基準の拙速な決定に抗議します」とする声明を出しました。
以下にその声明文を紹介します。
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【声明】 危険な原発「新規制基準」の拙速な決定に抗議します
2013年6月19日
原子力規制を監視する市民の会
本日、原子力規制委員会は、原発の新規制基準を決定しました。私たちは当初から新規制基準策定にしっかりと時間をかけ、原発被災者や国民の声を反映させるべきことを提言してきましたが、これらの提言はまったく無視されてしまいました。規制基準は、検討のあり方からして問題でした。検討チームには、原発に対して慎重な意見をもつ専門家は加わっておらず、意見は電力会社から聞くだけで、立地地域住民、福島原発事故の被災者の意見を聞くことはしませんでした。
パブリック・コメントでは検討のあり方も含め、多くの意見が提出されました。外部事象の事故想定などごく一部の意見が取り入れられましたが、ほとんどが無視されました。
新規制基準には、福島原発事故の検証は未解明で、地震による影響ついて反映されていない、フィルタ・ベントを活用させ、格納容器の構造的欠陥に目をつぶる、可搬設備を多用するなどの問題があります。
さらに、立地審査指針を取り込まず、放射性希ガスと放射性ヨウ素による周辺住民への被ばく基準を外すことにより、大量の被ばくを容認していることは、安全性の大幅な後退です。特に放射性希ガスはフィルタを素通りして大量に放出されます。
規制委員会は代わりに「セシウム137 で100 テラベクレル/100 万炉年」という安全目標を打ち出していますが、セシウムに限定し、影響を小さくみせてごまかしています。そもそもこの安全目標は、パブコメにすらかけられておらず、国民の理解も合意もまったく得たものではありません。
また、加圧水型原子炉のフィルタ・ベントを含む特定安全施設について、5年の猶予期間を設けていますが、これは再稼働を急ぐ電力会社への便宜供与にほかなりません。
原子炉の寿命についても40 年廃炉の方針が、いつの間にか20 年延長を認めるものとなりました。
新規制基準適応の先取りともいえる大飯原発の評価会合では、基準地震動や基準津波について、基本は福島事故前の想定で構わない、免震事務棟も防潮堤も必要ないと主張する関電に対し、規制委員会側ははじめは抵抗して見せたものの、時間切れを理由にあっさりと認めてしまいました。電力会社が主導権を握り、まるで福島原発事故などなかったかのようです。
新規制基準は福島事故を踏まえておらず、いつまた大きな地震や津波が発生してもおかしくない現在の状況で原発の安全性を担保するものではありません。
私たちは、社会的合意なきままの「新規制基準」の決定に抗議するとともに、これにより、今後、再稼働のお墨付きを次々と与えるようなことがあってはならないと考えま
す。
連絡先:原子力規制を監視する市民の会
東京都新宿区神楽坂2-19 銀鈴会館405号
090-8116-7155 阪上武