福島原発の事故処理作業を監視するため、国際原子力機関(IAEA)の専門家グループが日本入り(14日)したのを機に、15日の「ロシアの声(The voice of Russia)」 が福島原発事故についての国際原子力教育センター所長 ヴィクトル・ムロゴフ氏のコメントを掲載しました。
ヴィクトル氏は次のように述べています。
「以前は原発事故を起さないためにはどうすべきかが問題であったが、いまは事故を起すと核の管理が出来なくなるという事態が認識されている。事故後の日本の対応を見ると危機管理能力は高くないようだ。世界レベルの広範な協力が必要とされる。」
事故当初は東大教授などの原子力学者たちが盛んにTVに登場しては、「大丈夫」、「安全です」を連呼していましたが、不思議なことに、事故が日ごとに進展・拡大して行っても何一つ具体的な提案するでもありませんでした。そして局が見かねたのかどうか、いつの間にかTVに登場しなくなりました。
要するに官・民・学とも安全神話に完全に酔いしれていたために、事故対応については何も学ばずにいて何の知識も持っていなかったのでした。
原子炉から解け落ちた核燃料が現在何処にあるのか、その所在を突き止めることは非常に重要なことなのですが、その方法論もいまだに提案されていません。
利権意識だけが発達した原子力村に、その種の知恵を求めるのはもともと無理なのかも知れません。
所長も言うとおり、「世界レベルの広範な協力」を得て先ずは福島原発を収束させることが、日本の義務であり責任です。
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放射能と必死で闘う日本人
ロシアの声 2013年10月15日
放射能汚染地域の除染プロセスを調べるため、国際原子力機関(IAEA)の専門家グループが日本入りした。その主たる目的は、福島第1原発事故で被災した地域の事故処理作業の遂行を監視することにある。同原発では最近、深刻な放射能汚水漏れが発生したため、汚染土壌の除染問題は国内外のマスメディアの注目から外れてしまっている。日本の前に立ちはだかる課題は容易なものではない。福島県およびその近隣地域の200万立方メートルを超える土壌を除染、処理するために、日本政府は少なくとも1兆円は拠出せざるを得ない。
福島第1原発では、最も深刻な問題はいまだに放射能汚水であり続けている。汚水の漏洩についてはほとんど毎週のように様々なニュースが飛び込んできているが、原子力エネルギー開発にこれだけ高いレベルを有し、つい最近まで54基もの原子炉が稼動していた日本が、なぜフクシマの事故処理をなかなか進めることができないのだろうか。 オブニンスク原子力エネルギー大学の教授で国際原子力教育センターの所長を務めるヴィクトル・ムロゴフ氏はこの状況を次のようにコメントしている。
「以前問題になっていたのは、原発事故を起こさないようにするにはどういった要件が必要かということだったが、いまや状況は全く異なり、国が核技術の開発を行う権利を有すためには何が必要とされるか、ということが問題となっている。産業文化、インフラ、管理機構、世論の理解の視点からいうと、核技術で最も恐ろしいのは管理が及ばないことだ。放射能とかかわるものはすべて、核医学でも農業でアイソトープを使う場合でも、これはすべて管理されたなか、核文化のなかで扱われるべきものだ。核技術はグローバルな技術で、これを有す国は全地球の状況に影響を及ぼしてしまう。この例となるのが北朝鮮であり、チェルノブイリ、フクシマの事故である。国際的な制度は国家主権のうえに立脚している。それぞれの国が自らの政策を決めており、核技術分野もこれに含まれる。ではグローバルな利益と個々の国益をどのように一致させることができるだろうか? 現在、核大国クラブには第2世代であるベトナム、トルコなどの国が入ろうとしている。これらの国の核文化はどれほど発達しているだろうか? ひょっとすると全人類にとって高くつきかねないこうした技術をすべての国が信じてしまってもいいのだろうか? アジアで最も発展した国に数えられる国、日本がこんな災害を起こしたのだ。日本の物理・原子力学者らの管理能力を見くびりたいとは思わない。だが、日本のマネージメント、核施設の管理メカニズムのレベルはどうやら、そう高くないようだ。この件では世界レベルの広範な協力が必要とされる。」
IAEAの専門家が到着する前日、東京では大規模な抗議運動が展開された。参加者らは政権に対し、事故原発の状態について住民と情報を分かち合うよう呼びかけた。この運動には、94年にノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎氏も参加しており、集会で大江氏は、事故を起こした原発の状態はいまだに明らかにされておらず、市民は福島から逃げ続けていると語った。
10月21日、IAEAの専門家らは日本政府に対し、報告書を提出し、放射能レベルを効果的に下げるための助言を行う。 (リュドミラ サーキャン)