16日に、泉田知事とフリージャーナリストたちがメディア懇談会を行いましたが、その際に泉田知事がインターネット中継を通じて、原子力規制委員会の田中委員長に公開質問したことを、18日、田中龍作氏がブログで公開しました。
質問のポイントは、原発の安全審査は運用側の観点で行うのかそれとも住民を被曝させないという観点で行うのかという点と、メルトダウンが起きたときにどうするのかを考えているのかの2点です。どうしても電力側に擦り寄っている感じの規制委にとって、どちらも虚を衝かれる質問になっています。
知事がそういう観点に立っているのは心強いことです。
以下に田中龍作ジャーナルの記事を紹介します。
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【新潟報告】 泉田知事 「田中委員長、公開質問します」
田中龍作ジャーナル 2013年10月18日
原発再稼働の大前提となる原子力規制委員会の安全審査は、原子炉設備に偏り、「住民避難」は二の次となっている。これに疑問を唱える新潟県の泉田裕彦知事が16日、インターネット中継を通じて原子力規制委員会の田中俊一委員長に公開質問した。
泉田知事は自らが経験した中越沖地震と福島原発事故を教訓に、住民の安全が確保されないとして規制庁がまとめた「原子力災害対策指針」を批判してきた。
原子力規制委員会が発足した翌月の昨年10月29日に、泉田知事は1回目の質問状を送付した。最初の規制委員会の回答は今年2月に届いたが、わずか2ページ(内容は1ページ)の薄い内容のものだった。
4月22日、池田克彦原子力規制庁長官に会った時、泉田知事は再度、田中委員長への質問状を渡し田中委員長との面談を求めた。回答は7月末に届き、今度は4ページに増えていた。しかしまだ内容が不十分と考える知事は委員長との面談を毎月のように申し入れているが、一向に実現する気配はない。
田中委員長は「他の自治体の首長が納得しているなか、かなり個性的な発言をしている」と述べ、面会するつもりがないことを強調している。
“個性的な” の部分は原発推進勢力が泉田変人説を流布するのに利用している。
こうした経緯を踏まえ筆者は16日、新潟県庁で開かれたメディア懇談会で泉田知事に質問した。「田中委員長に公開質問状を出すとかIWJの画面を通じで公開質問するとかのお考えはないのですか?」と。
泉田知事は「今やりましょうか?」とやる気満々で応じ、次のように公開質問した―「田中委員長、ぜひですね、設備の基準を、運用する側の観点で審査するのか。住民の被曝を避けるという観点で審査されるのか。どちらか、まずお答え頂けないでしょうか? ここ重要な所だと思うんです」。
筆者「ハードに偏ってますからね」。
泉田知事「断層を分析する班と設備班しかないんですよ。それでどう住民の安全を守るつもりなのか、ぜひご説明頂きたい」。
泉田知事は設備の安全審査についても疑問を投げかけた―
「世界はメルトダウン事故があると考えて対策を講じているのに、日本はメルトダウン事故が起きないという形でやる。これでは“世界の基準に合わせます”の答えになっていない(田中委員長は“世界一厳しい規制基準”と豪語している)」。
“メルトダウンは起きませんよ”というのは第二の安全神話である、と泉田氏は指摘したうえで、次のように話した―
「メルトダウン事故が起きた時にどう対応するか? ヨーロッパではコアキャッチャー(※)だし、アメリカは(軍の)冷却部隊ということになっている。日本は両方やらないことになっている」。
住民の避難対策はまともに検討されず、メルトダウンはしないことが前提。第二の安全神話を作り出そうとしている原子力規制委員会に異を唱えるのは、3.11以降、原発を抱える自治体の長であれば当然のことだ。
泉田知事に会おうとしない田中委員長こそ、世界標準から見た場合“個性的”なのではないだろうか。
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※コアキャッチャー:
原子炉格納容器の底部に設けられる装置。溶融(メルトダウン)したデブリ(堆積物)が冷却 設備に導かれる仕組みになっている。