2013年10月6日日曜日

被災者支援法の基本方針案は不十分の極み

 政府は近く「子ども・被災者生活支援法」の基本方針を閣議決定する意向とうことです。しかし先に復興庁が発表した基本方針案は恐ろしく不十分なものであり、それをそのまま追認するような決定はすべきではありません。

 支援法では「一定の基準以上の放射線量が計測される地域」の住民を支援対象と定めていますが、基本方針案では基準線量値は示さずにいきなり福島県東部の33市町村に限定しまし支援対象を拡大すると財政支出増加することを嫌ったためしか考えられません。
 
 支援の内容も問題です。基本方針案に盛られた施策の殆ど既に実施されている施策に過ぎません。被災者からの要望が強い福島県外での健康調査実施や、医療費の減免措置県外避難者のための家賃補助復活などは盛り込まれていません。
 
 支援法は、被災者たちが支援対象地域に居住し続ける場合も、他の地域へ移動したり、移動前の地域へ帰還したりする場合も、いずれも被災者自身の選択する権利を尊重して支援すること(第8条、9条)とし、胎児を含む子どもの健康影響の未然防止や放射線の影響を調査する健康診断を行い、被ばくによる疾病への医療費は減免し、被ばくと疾病との因果関係の立証責任は被災者が負わない(第13条)などとされています。
 しかし復興庁が示した基本方針案は、そうした支援法の精神・理念を二重・三重に裏切っています。

 以下に毎日新聞の社説を紹介します。
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(社説被災者支援法 基本方針案は見直せ
毎日新聞 2013年10月6日
 東京電力福島第1原発事故によって被災した人たちを支援する「子ども・被災者生活支援法」の基本方針案を復興庁が公表した。
 パブリックコメント(意見公募)を実施し、9月23日に締め切った。15日間の予定だったが、短いとの批判を受け10日間延長し、約4900件集まった。一方、説明会は福島と東京の2カ所で開催しただけだ。
 政府は近く、基本方針を閣議決定する意向とされる。だが、昨年6月に法律が成立してから1年以上基本方針案が示されなかった経緯に照らせば、性急だ。中身も不十分であり、市民や自治体などの意見を十分踏まえた内容に見直すよう求めたい。

 法律は、支援対象地域の「居住者」「帰還者」「避難者」いずれの選択も尊重して支援するとうたう。基本方針案では、支援対象地域を、事故後に「相当な」放射線量だった福島県東部の33市町村に限定した。
 法律では、「一定の基準以上の放射線量が計測される地域」の住民を支援対象と定めたが、結局、基準線量値は示さなかった。一般人の被ばく限度量である年間1ミリシーベルトを超える地域の指定を求める被災者の声が多かったが、反映されなかった。
 福島県外への支援対象拡大に伴う財政支出の増加を嫌ったとの見方が出ている。だが、福島県外にも放射線量の高い地域は存在する。コストだけで線引きしたとすれば疑問だ。
 実際に対象から外れた千葉や茨城、栃木県などの相当数の市が批判の意見書を復興庁に出した。
 問題は、支援対象地域だけではない。既に実施されている施策が支援内容の大半だとの批判が強い。被災者からの要望が強い福島県外での健康調査実施や、医療費の減免措置は検討課題として先送りした。また、避難者への対策が手薄だ。既に打ち切られた県外避難者のための家賃補助復活は盛り込まれなかった。
 福島県はふるさとへの帰還を呼びかける。もちろん、帰りたい人が帰れる環境づくりは大切だ。だが、事故収束に向けての原発内の厳しい作業や、除染の現状に照らせば、避難を選択する住民の意思も尊重されるべきだ。それが法律の理念だ。
 法律の担当者だった元参事官は「白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」とネット上に書き込み、更迭・処分された。その後、法律をめぐる関係省庁との会議録が作られていないことが明らかになった。
 説明責任を放棄していると思われても仕方ない。法律に実効性を持たせようと国会議員100人以上が名を連ねる議員連盟も、基本方針案や政府の姿勢を批判している。パブリックコメントも参考に、国民の声をくみ取った内容にすべきだ。