復興庁が示した「子ども・被災者支援法」基本方針案の修正版でも、対象地域は変更されないなど、被災者たちが求めてきた内容になっていません。
被災者たちは9日、「問題点が多い」として見直しを求める要望書を復興庁に提出しました。
被災者たちは、「私たちが望んでいることとは違う」、「放射線の影響が分からないからこそ健康調査で確かめながら暮らしたい」、「支援法を唯一のともしびのように感じていた。法律の原点に返るべきだ」と訴えています。
方針案は11日に閣議決定される予定ですが、こんな内容で決まるのであれば支援法の理念からはほど遠いものになります。
オバマ氏の要求であればなんでも聞くのに、国はなぜ被災者たちの最低限度の要求にも耳を貸そうとしないのでしょうか。
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被災者訴え届かず 対象地域限定・県外避難の補助除外
東京新聞 2013年10月10日
東京電力福島第一原発事故を受けた「子ども・被災者支援法」で、復興庁が示した基本方針案の修正案の概要が九日、判明した。十一日に閣議決定される見通し。修正後も、支援対象地域は福島県東部に限定され、被災者らが求めてきた中身になっていない。被災者らは同日、「問題点が多い」として見直しを求める要望書を復興庁に提出した。
支援法は、放射線量が一定基準を上回る地域の住民を支援対象にすると規定。被災者らは一般人の被ばく限度である年間一ミリシーベルトの放射線量を基準にするよう求めてきたが、方針案は対象を福島県東部の計三十三市町村に限り、基準の線量は示さなかった。それ以外の高線量地域は「準対象地域」として一部の施策の対象にするとしていた。
修正案でも、対象地域の決め方は変わっていない。準対象地域で行う施策に除染事業も含まれることが明記されたが、既に実施ずみ。県外避難者が求める住宅補助は含まれていない。
準対象地域の健康管理調査について「適切に支援する」と文言は加わったが、被災者が求めてきた県外でも必要な医療や健診を受ける仕組みには言及がない。
新たに加わった中身としては、合同面接会など避難先での就職支援や、基本方針の見直しにあたって被災者を支援する民間団体と連携することなどにとどまっている。
基本方針の策定は、法律上、当事者の意見を聞くことが要件。被災者らは全国で公聴会を開くことや、常設の協議機関の設置を求めてきたが、復興庁は九月に福島市と東京・江東区でそれぞれ一回、平日に説明会を開いただけだった。
国民の意見を聞くパブリックコメントは実施したが「取りまとめ中」として結果はまだ公表していない。
復興庁の説明などによると、パブリックコメントには約四千九百件の意見が寄せられ、そのうち「数十」は自治体からだった。
支援対象地域に関する意見が一番多く、千葉県野田、我孫子市などは、年間放射線量が一ミリシーベルトを超えるところはすべて支援対象地域に指定するべきだと要望。栃木県も、県境にとらわれず福島県と同等の支援を求めていた。
◆支援法基本方針案
「復興庁は急いで閣議決定したがっているが、私たちが望んでいることとは違う」。九日、復興庁に要望書を提出した被災者らは記者会見を開き、意見を聞かない国の姿勢を批判した。
昨年六月に子ども・被災者支援法が成立してから丸一年は、どんなに求めても基本方針を策定するという情報はなく、動きも見えなかった。被災者の一人は「目の前をものすごいスピードで通り過ぎようとしている」と違和感を表現した。
放射性物質は広く拡散し、健康影響も十分解明されていない。だからこそ支援対象地域について「年間一ミリシーベルト」の基準にこだわったが、自治体で線引きする従来の考え方は覆らない。福島県に隣接する宮城県丸森町の太田茂樹さん(44)は「影響が分からないからこそ健康調査で確かめながら暮らしたい。福島に限らず健康調査をしてほしいと訴えてきたのに」。
郡山市から静岡県内に自主避難した長谷川克己さんは「パブリックコメントの結果が公表されず、何の説明もない段階で閣議決定をするのは、私たちの市民感覚からすると、ルール違反。私たちの意見を聞く場を持つのが普通ではないか」と疑問を投げかけた。
南相馬市から横浜市へ避難する村田弘さん(70)は「事故後たまらない気持ちで過ごし、支援法を唯一のともしびのように感じていた。法律の原点に返るべきだ」と訴えた。
要望書は、福島県内外に住む被災者四百三十四人の連名。支援対象地域の拡大や避難希望者への生活支援、福島県以外での健診や医療の提供をあらためて求めた。