2021年10月23日土曜日

衆院選・トリチウム水 処分の具体策示した論戦を(福島民友 社説)

 福島民友がトリチウム水の処分に関して、衆院選において「具体策を示した論戦を」とする社説を出しました。それは大いに必要なことです。
 そもそもこの議論は、トリチウム水の処分方法には5通りほどの案があった中で、安倍政権時代に最も安価で安易な方法として当初から決めていたものを、一応公聴会に掛けるなどした後に、菅前首相が海洋放出に決めたのでした。それを選んだ理由は社説にあるように、トリチウム水の海洋放出は国内外を問わず原発で実施されており、事故前は第1原発でも行われてきたからというものです
 しかし(PWRでは)蒸気発生器を通過後の蒸気を、乃至は(BWRでは)タービンを回し終わった蒸気を海水で冷却した復水を脱塩装置に通してから原子炉に戻すのですが、その過程でトリチウムだけは除去されないためやむを得ず、常時海洋に放出していたものです。
 それは被覆された燃料棒から発生する「少量のトリチウムの連続的な放出」であるのに対して、福島第1では水中に全面的に露出した燃料デブリによって大量に発生するトリチウムなのでまず量的に異なります。
 現計画は百数十万トンのトリチウム水を20年~30年掛けて放流するというものですが、それと並行して1日最低140トンの汚水が生じるので、その間に新たなトリチウム水が100万トン~150万トンたまる計算になります。
 これでは海洋放出は今後果てしなく続き、海洋汚染も果てしなく続くことになるので、海洋放出ではない別の方法にすべきでしょう。
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社説 衆院選・原発処理水/処分の具体策示した論戦を
                         福島民友 2021年10月22日
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を加速させるため、たまり続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分は、避けて通れない喫緊の課題だ。活発な論戦を通し解決の道筋を示してもらいたい。
 政府は処理水の処分に関して、2023年春ごろにも海洋放出する方針を決定している。予想される風評被害対策として、水産物の需要が減った場合に一時的に買い取るための基金創設、被害者に寄り添う賠償方針などをまとめた。
 処理水の海洋放出は国内外を問わず原発で実施されており、事故前は第1原発でも行われてきた。しかし、4月に政府方針が決まってから、海洋放出への理解は深まっていない。漁業関係者らは反対の立場で、懸念を示す自治体もある。合意を形成するまでの道のりは、決して平たんではないと言っていいだろう。
 選挙公約で、与党は徹底した安全対策や漁業者らへの支援などを打ち出した。野党の中には、海洋放出反対の姿勢を明確にしている党が複数あり、違いがみえる。処分方法などについては、地上保管の継続や、処理技術の検討などを掲げている。
 各候補者は議論を先延ばしすることなく、理解の得られる処分の在り方を示すべきだ。
 処理水の処分は多方面に風評が広がる恐れがあり、漁業や観光などへの影響を心配する声は根強い。安全対策や透明性を確保して風評が生じないように進め、安心してなりわいを継続できる環境を整えておくことが求められる。
 処分が長期にわたるなかで想定されるさまざまな課題に責任を持って関わり、解決に導くことが政治の重要な役割であることを銘記し、不安払拭(ふっしょく)に努めてほしい。
 原発事故後、本県の農産物などに対して各国の厳しい対応が続いてきた。輸入規制している国・地域は減ったものの、中国、韓国、台湾など14カ国・地域が継続している。米国が県産米などを含め延べ100品目の輸入規制を撤廃し、EUが一部の規制を緩和したことは良い流れと言える。
 処理水の処分に当たっては海外への正確な情報発信が不可欠となる。誤解や不信感などから、規制撤廃の流れが逆戻りすることは避けなければならない。
 第1原発を廃炉にするまで30~40年かかるとされ、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しなど、作業は多くの難題を抱えている。安全性を最優先した廃炉は復興を成し遂げる大前提で、国政を預かる者の責務だ。