2024年1月31日水曜日

31- 「本当に来るんだ」津波がわずかな時間で到達 その時、上越市住民がとった行動は

 テレビ新潟が能登半島地震時に津波に襲われた上越市の様子を報じました。
 原発と直接の関係はありませんが、津波の襲来が予想されるとき、原発事故時に5~30キロ圏内の住民が「当初は屋内退避」とされているのが、「絵空事」であることが分かります。
 気象庁によると津波が陸をはい上がり到達した高さ上越市で58メートルでした。
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【能登半島地震】「本当に来るんだ」津波がわずかな時間で到達 その時、住民がとった行動は 上越市を襲った津波 速度は新幹線より速い《新潟》
                        TeNYテレビ新潟 2024/1/30
能登半島地震からまもなく1か月。
地震がもたらした課題と教訓について住民の証言をもとに振り返ります。
今回は「津波からの避難」についてです。
上越市の海岸沿いの地区では10分ほどで津波に襲われました。
どのように避難したのか地域の住民がアンケート調査を行うと課題が浮かび上がってきました。

沿岸部のまちに押しよせた津波
勢いよく川を遡上する津波。
地震からわずか20分後、防波堤を越え沿岸部のまちを襲いました。
「津波きてるぞー!上あがれ!」
上越市港町。海抜は2メートルから3メートル。
津波は堤防を越え住宅地に押し寄せてきました。
海水浴場にはがれきが散乱、浜辺の土産物店には押し流されてきた大型の厨房機器も・・・。
県内の観測地点のうち、柏崎市鯨波で40センチ、新潟市と佐渡市鷲崎で30センチの津波を観測しました。
現地調査を行ったのは、長岡技術科学大学の犬飼直之准教授です。
上越市など観測地点が無かった地域では「2メートル」ほどの津波が押し寄せていたと分析します。
【長岡技術科学大学 犬飼直之准教授
「直江津あたりが突出して津波の痕跡高が高くなっている。到達した津波の高さは2メートルくらいはあったんじゃないかと考えています」
さらに、気象庁は津波が陸をはい上がり、到達した高さが上越市で5.8メートルだったと明らかにしました。

住民が語ったその瞬間
そして、今回の津波。
特徴のひとつが地震発生から到達するまでの「速度」です。
視聴者から提供されたこの映像が撮影されたのは午後4時34分。
津波警報が発表された22分後でした。
<住民は>
「津波警報でた後10分後くらいに津波が押し寄せて家でウロウロしていたら玄関まで波が入ってきたんですよね。逃げたかったけどまごまごしていたら津波が来ちゃったからとりあえず2階へ・・・逃げる余裕なかったもの」
<住民>
「外に出ようとしたら玄関の鉢とか花瓶がだだっと倒れた…下駄箱の上の物が全部落ちて。下が水浸しになった。それだけ片づけてって言ったら(夫が)“おーい死んじまうじゃねぇか” って。それで外に出たんです。振り向いたら津波1分もしないうちに車に行ってエンジンかけてバックしたら津波が車にずっと来ちゃって」

津波の速度は新幹線より速い
犬飼准教授の試算によると今回の津波・・・。
第一波が到達した時間が上越市で19分、糸魚川市では8分で到達していた可能性があるといいます。
【長岡技術科学大学 犬飼直之准教授】
「津波が伝播するスピードは水深だけで決まってくる。だいたい時速350キロメートルくらい。新幹線よりも速いスピードで伝播している」

住民はどう動いたのか
東日本大震災では津波により多くの命が奪われました。
今回は地震の発生直後に津波警報が発表・・・。
その時、住民はどう動いたのでしょうか。
元日の上越市港町で・・・
「津波きてるぞー!上あがれ!」
この動画を撮影した上越市港町に住む高校1年生高原楽歩さん、そして、父の一歩さんです。
父の高原一歩さん
「まさか、あの高さを超えてくると思っていなかったので・・・車も通り人もいたので、大きい声を叫んで、津波きてるよ、早く上がれと叫んだと思う」
地震発生当時、自宅のリビングで家族4人、団らんの時間を過ごしていました。
大きな揺れが襲ったのはその時でした。
息子の高原楽歩さん
「人生で経験したことのない揺れでこれはただごとじゃすまないなと少し覚悟をしましたね」
午後4時12分。
テレビから聞こえてきたのは「津波警報」を伝える声。
その1分後、家族4人、すぐに家の外に飛び出しました。
高原一歩さん
「(家から)出てこられていない方もいらっしゃったので私はとにかくあそこに向かいながら大声を出しながら”津波来るよ”ということを伝えながら、まずとにかくあそこの旧学校の玄関を目指しました」
避難場所に指定されていたのはかつて小学校だった建物。
一歩さんは近所に避難を呼びかけながら100メートル先の避難場所へと走りました。

開かなかった避難所のカギ・・・とっさの行動に
午後4時14分。
到着すると玄関の前にはすでに数人の姿が・・・。
カギを管理する住民も到着していましたが焦りからか開けることができません。
そこで、とっさの行動をとったといいます。
<高原一歩さん>
「(カギを)預かったんですけどカギが開かなかったんです。何回やっても、もう時間がないと思ってこれそのままの残骸ですけどこのブロックを投げてこのガラスを割ったんです」
一刻を争う事態にガラスを割るという判断。
撮影された動画からこの地域に津波が押し寄せたのは遅くとも午後4時34分。
20分ほどの時間で最大で100人を超える人が避難をしたといいます。
<高原一歩さん>
「本当にくるんだ、と。津波って、本当にくるんだ。今回以上に高い津波がきたときに、もっと早く到達したときにどうしようと考えなければいけないと考えさせられた」

住民へのアンケートでわかったこと
この地域では東日本大震災のあと、自主的に防災組織を立ち上げ、年に1回、津波を想定した訓練をおこなってきました。
今回の地震や津波を受け、緊急のアンケート調査を実施。私たちが取材をした日までに51人から回答がありました。
津波警報を受け数分以内に避難を開始した人は3割ほど・・・7人は「避難しなかった」と回答しました。そして・・・。
【アンケートの回答より】
「足が悪い主人を置いていけない」
「港町は高齢者が多く避難の方法を考えなければいけない」
「高齢者の避難対策、避難タワーの建設などを早急にお願いしたい」
「子どもがいたので助かったが普段は1人なので心配」
高齢者や体の不自由な人などいわゆる「災害弱者」が避難できるのか。
帰省中の家族がいたため今回は避難できていても普段はひとり暮らしの高齢者は命を守ることができるのか。
課題が浮き彫りとなりました。
<アンケートを実施した防災士は>
「避難訓練はたくさんやってきたが、自分事として訓練している人が少なかったのかもしれない。そこは大きな反省点」

「強い揺れを感じたら直ちに避難を開始する行動を」
気象庁は地震の発生後、2分から3分を目標に津波に関する情報を発表するとしています。しかし、今回のようにわずかな時間で到達するケースも・・。
【長岡技術科学大学 犬飼直之准教授
「日本海沿岸域の地震の発生域は他の領域に比べて比較的陸地に近く、津波が発生した場合、陸地に早い時間で到達しやすい。津波に関する情報をみて避難行動をしたのでは2分ロスし、遅いと考えられる。強い揺れを感じたら直ちに避難を開始する行動をとってほしい」
高原一歩さん>
「津波警報がきたら、すぐ逃げないととは家族で話をしてましたし。やはり避難訓練の経験があったからなのかなというふうには思います」
わずかな時間で押し寄せる津波・・・。

命を守るために揺れたら すぐに避難行動をとることが大切です。