2024年1月15日月曜日

アメリカが約50年ぶりに「溶融塩原子炉」の建設を許可

 アメリカ原子力規制委員会(NRC)は23年12月12日、溶融塩原子炉の建設許可を出しました

 現行の原子炉はタービン駆動用の高温高圧蒸気を発生させるためすべて軽水(原子炉に対して「冷却水」とも呼びます)を用います。タービン駆動用に安定な高温高圧蒸気を得るためには約300℃前後に上げる必要があるので、沸点をそこまであげるには約160気圧の高圧を加える必要があります。原子炉の厚さが約20cmほど必要なのはそのためです。
 それに対して沸点が低い「溶融塩」を冷却材に使えば圧力はずっと低くて済み、原子炉の厚みを薄くすることが出来ます。この原理は基本的なものなので誰しもが気づきますが、これまで実現しなかったのにはそれなりの理由があったからです。
 果たして実現性はあるのか 大いに注目されます。
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アメリカが約50年ぶりに建設許可を出した「溶融塩原子炉」とは(海外)
                  BUSINESS INSIDER JAPAN 2024/1/12
溶融塩原子炉が最初に建設されたのは1950年代だが、アメリカでは1970年代以降、使用されていなかった。
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アメリカ原子力規制委員会(NRC)は2023年12月12日、溶融塩原子炉の建設許可を出した
プロジェクトを主導するケイロス・パワー社は、2027年までに完成させたいとしている。
アメリカはこれまでとは異なる種類の原子炉を建設する許可を出した。
溶融塩原子炉と呼ばれるこの原子炉により、将来的には、現在よりも小型で建設が容易な原子炉が実現し、いずれは送電網(グリッド)に接続していない船舶などの場所での電力供給が可能になるかもしれない。
この原子炉と、従来の原子炉との違いは、水の代わりに溶融塩を用いて炉心を冷却することにある。
現在稼働しているほぼすべての原子炉は、冷却に水を用いている。原子炉の炉心は華氏572度(摂氏300度)に達することもある。これは、水の沸点である華氏212度(摂氏100度)よりもはるかに高い

水と塩の違い
そうした高温下で、水の蒸発を防いで液体に保つためには大きな圧力が必要とされる。そしてその結果、技術・空間・資金面でのコストが増す。
それに対して、一部の塩は沸点が水よりもずっと高いので、水を用いる場合のような高コストの高圧環境は必要ない。
こうした高温条件で利用しても、沸騰しません
アイダホ国立研究所で塩化物溶融塩実験炉のプロジェクトディレクターを務めるニコラス・V・スミス(Nicholas V. Smith)は、Business Insiderにそう話した。

冷却材を封じこめる、大きくて分厚い圧力容器は必要ありません
たとえば、カリフォルニア大学バークレー校工学部によれば、1950年代にテストされた最初の溶融塩炉は飛行機に収まるほど小さかったのに対し、カリフォルニア州にあるデアブロキャニオン原子力発電所の発電にあてられている部分は、12エーカー(約4万8500平方メートル)の土地を占めているという。
これらの利点を理由に、アメリカ原子力規制委員会(NRC)は2023年12月12日、冷却に水を用いない原子炉の建設を初めて許可した。
新型原子炉の許可が出たのは、1968年以降で初めてだと、ケイロス・パワー社のマイク・ラウファー(Mike Laufer)CEOはブルームバーグに話した。
ケイロス・パワーは、「ヘルメス」と呼ばれる実証炉の建設を計画している。溶融フッ化物塩を冷却材とするヘルメスは、2027年までにテネシー州オークリッジに建設される。
この最初の実証炉では発電は行われないが、後継の「ヘルメス2」で2028年までに発電を実現したいとケイロス・パワーは考えている。

溶融塩を再検討する価値とは
溶融塩炉は1950年代から存在していたが、アメリカは1970年代にそのほとんどを見限り、それまでにすでに多くが建設されていた水冷式原子炉を支持した。
だが近年、ケイロスをはじめとする企業や研究所が、塩冷式原子炉を再検討しはじめている。
「工学上の細部が決着すれば、冷却材としての塩は、水よりも断然優れている」とスミスはBusiness Insiderに話した。
溶融塩炉は、高温で水を液体に保つための分厚い圧力容器を必要としないため、設計上の柔軟性が高まるとスミスは言う。
たとえば、原子炉が水冷式よりも小型化され、さまざまな場所につくることもできる。
「言ってみれば溶融塩炉は、溶融塩炉以外では不可能な、設計上の多くの選択肢を開くものだ」とスミスは言う。
「低圧のパラダイムへ移行すれば、建造がずっと容易になる」
へき地や船舶、大規模発電所など、「溶融塩炉は、あらゆる領域で次々に導入されるだろう」とスミスはつけ加えた。