山口県上関町は昨年8月、「中間貯蔵施設」の建設に向けた調査を受け入れました。
どこかの市町村が引き受けないことには「中間貯蔵施設」の構想自体が頓挫するので、理解を求める取り組みを進む一方で、反対派の動きも活発化して不安を抱く住民もいます。
現時点では、中間貯蔵をした後の引き渡し先がないので、貯蔵状態がずっと継続する可能性が大きいと見られます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「この1年で町民同士の仲が悪くなってしまった」中間貯蔵施設調査受け入れ巡り揺れる山口県上関町
読売新聞 2024/9/4
原子力発電所の誘致を巡って長年論争が交わされてきた山口県上関町が、再び揺れている。中国電力(広島市)などが計画する使用済み核燃料の「中間貯蔵施設」を巡り、町が建設に向けた調査を昨年8月に受け入れて1年余り。安定稼働につながる重要な施設で、理解を求める取り組みが進む一方、反対派の動きも活発化し、不安を抱く住民もいる。
デモや抗議集会
「安心して生活できる環境を途絶えさせてはいけない」。町内で7月に開かれた集会で清水康博町議(33)が訴えた。集会には約140人が参加し、計画の白紙撤回を求めるアピール文を採択した。
町は1982年、巨額の経済効果や国の交付金などを見込み、原発誘致を表明。原発2基の建設計画が進んでいたが、2011年の東京電力福島第一原発事故の影響で中断し、その後、町長選で争点化することはあったものの、反対活動は下火になっていた。
ところが昨年8月に中国電が町に調査を申し入れたのを機に再び活発化し、デモ行進や抗議集会が続く。「この1年で町民同士の仲が悪くなってしまったようで残念」。集会後、参加した年配女性がつぶやいた。
町の人口は昭和30年代に1万人を超えていたが、4月時点で2200人余り。計画中断の影響も受けており、浜田憲昭・町商工会長(75)は「ステーキにありつけたのに、口元に運んだ手をいきなりはたかれたかのようだった」と振り返る。
町は原発に代わる振興策を中国電に求め、挙がったのが中間貯蔵施設だった。調査段階から国の電源立地地域対策交付金を受け取ることができ、町は今年度、計1億3000万円の交付決定を受け、医療や福祉分野などに活用する。西哲夫町長は「波風を立たせずに済むなら一番いい。しかし、持続可能な町づくりを目指せない」と強調する。
他県の施設視察
理解を深める取り組みも進む。8月23日には町の事業を使い、使用済み核燃料を金属容器(キャスク)で貯蔵する日本原子力発電東海第二原発(茨城県)を町民8人が視察した。昨年12月以降の7回で、町民と町職員計約70人が参加しており、「安全性の確保が十分できていた」などの声があるという。
推進派が講演会を開催したり、中国電の社員が自治会などで説明したりすることもある。それでも、核燃料を再利用するサイクルが確立されていない中、無期限で使用済み核燃料が置かれると危惧する声は根強い。
国内で初めて9月から中間貯蔵施設が稼働する見通しの青森県むつ市では、斎藤経済産業相が、搬出先として同県六ヶ所村で建設が進む再処理工場を次期エネルギー基本計画に盛り込む方針を示した。
長崎大の鈴木達治郎教授(原子力政策)は「国が責任を持つと明確化することで住民に安心感をもたらすならば、それも一つの方法だ」と指摘する。
◆中間貯蔵施設
原発の使用済み核燃料を再利用するため、一時的に保管する施設。全国の原発では敷地内のプールで保管してきたが、3月末現在で8割近くが埋まっている。上関町で建設が進めば、青森県むつ市に続く全国2か所目になる見通し。