2024年9月14日土曜日

敦賀原発2号機“不許可”でも「廃炉にしない」通用する?

 毎日新聞が掲題の記事を出しました。
 敦賀原発2号機は仮に正式に「再稼働 不許可」となったとしても、規制庁などが「廃炉」を強制することは出来ないということで、日本原電はこの先も数年を掛けて地盤の安全性を証明するとしています。
 問題はその間の日本原電の維持費(年間数百億円)をどうするのかですが、それは電力の購入契約を結んでいる関電、中部電力、北陸電力が毎年支払う基本料金で確保されるということです。具体的には関連3社の電気料金から支払われるので全て国民が負担しているわけです。
 要するに原電と上記の3社は自分たちのフトコロを傷めることなく、原電の存続を維持できるということで、決して健全とはいえません。
 それは東海第2原発(東電と東北電力が電力を購入する契約)でも全く同様です。
 このたび関電と中部電の個人株主のグループが、「規制委が『動かせない』と判断した敦賀原発2号機に今後も資金供与を続けることを認めるわけにいかない」とする要望書を両社に提出したのは当然です。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
敦賀原発2号機“不許可”でも「廃炉にしない」通用する?
                            毎日新聞 2024/9/13
 東京電力が毎年550億円の基本料金のほか、「将来の電力料金の前払い」で「資金的協力」を行っている日本原子力発電には、東電が支援する東海第2原発(茨城県)の他に敦賀原発2号機(福井県)がある。その敦賀原発2号機は関西電力など大手電力3社が基本料金を払っているが、廃炉の瀬戸際にある。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】

 原子力規制委員会は2024年8月28日、敦賀原発2号機について、原子炉直下に活断層があることを否定できず、新規制基準に適合しないとする審査書案を了承した。一般から意見公募した後、規制委は秋以降、2号機の再稼働を「不許可」とする方針だ。
 「昨年まで十分な審査ができる状況になかった。異常な審査の状況だった。(原電が提出した資料に)非常に多くの間違いやデータの書き換えなどがあり、まともな審査ができた期間というのは非常に限られていた」
 規制委の山中伸介委員長は8月28日の委員会後の記者会見で、「今回の判断に迷いはなかった。技術的に疑問を持つものはない」と審査書案に自信を示しながらも、これまでの原電の対応に苦言を呈した。

◇原電の提出資料に書き換え
 山中委員長が苦言を呈したのは、原電が規制委に提出した断層データの無断書き換えが20年2月に発覚し、規制委が審査を中断。22年12月に審査を再開したが、原電の提出資料にさらに誤りが見つかり、23年4月に再び審査を中断したことなどを指している。
 8月28日の委員会では「19年10月から22年10月までに原電の審査資料に1140カ所の誤りがあった。データの書き換えもあった。22年12月にさらに157カ所の誤りがあり、23年3月にはさらに8カ所の誤りがあった」などと、原子力規制庁がこれまでの経緯を報告した。
 2回の審査中断を経て、規制委は「次に同様の不備があれば審査の打ち切りもあり得る」と通告。原電が断層に関する資料を再提出し、審査が再開したのは23年9月だった。
 なぜ、これほど多くの誤りやデータの書き換えが次々と見つかるのか。前回の本欄でリポートした通り、東海第2原発の防潮堤をめぐっては施工不良が見つかり、完成時期が3度も延期となっている。原電は新たな対応方針を8月29日に示したが、原子力規制庁から「実現性の見通しが全く立っていない」と、即座に再考を求められた。
 どうして原電はこれほどトラブル続きで、規制委や規制庁の指摘を何度も受けるのか。筆者が原電に尋ねたところ、原電は「審査資料にかかる品質管理が十分でなかった。当社としては、規制委や規制庁の指摘について真摯(しんし)に受け止めて検討し、対応していく」と回答した。

◇「廃炉の選択肢はない」
 今回、規制委が敦賀原発2号機の再稼働を不許可とする審査書案を了承したことについて、原電は不許可になっても2号機を廃炉にせず、追加調査をした上で審査を再申請する意向だ。原電は原子炉直下の活断層について、引き続き「活断層でない」と主張。村松衛社長は「廃炉の選択肢はない」と発言している。
 再稼働が不許可となっても、原電が廃炉の判断をせず、規制委に審査を再申請することは可能だ。原電は9月2日、敦賀原発2号機について「追加調査案を社外の専門家の意見も踏まえながら具現化し、稼働に向け取り組んでいく」とのコメントを発表した。
 しかし、敷地内には今回問題となった断層以外にも約200本の断層があるほか、マグニチュード7級の地震を起こす活断層も走る。山中委員長は記者会見で「非常にたくさんの断層があるので、活動性を否定するのは大変困難」と述べ、再審査でも許可するのは難しいとの見解を示した。
 原電が再稼働を目指す原発のうち、東海第2原発は東電と東北電力が電力を購入する契約を結び、基本料金を払っている。敦賀原発2号機は関電、中部電力、北陸電力が購入契約を結び、基本料金を支払っている。
 ところが両原発とも11年5月以降、運転を停止している。発電ゼロにもかかわらず、原電に基本料金を支払う構図は、東電だけでなく、関電なども同じだが、「将来の電力料金の前払い」で原電を支援するのは東電だけだ。

◇関電などの株主が要望書
 敦賀原発2号機の再稼働が不許可となり、原電が規制委に審査を再申請するにしても、再審査に向けた原電の追加調査は数年以上かかる見通しだ。規制委の再審査にも年単位の時間がかかるだろう。
 その場合、関電など大手3社は発電ゼロの原電に基本料金を払い続けるのか。関電に尋ねると、「当社として敦賀原発2号機は貴重な電源との認識で、引き続き必要な支援を行っていく。原発が稼働していない間も安全に維持管理することは必要で、基本料金の内容を精査したうえで、最低限の費用を支払うことにしている」との答えが返ってきた。
 関電と中部電の個人株主のグループは「規制委が『動かせない』と判断した敦賀原発2号機に今後も資金供与を続けることを認めるわけにいかない」として、「これ以上の資金供与を原電にせず、速やかに2号機を廃炉とするよう原電に求めてほしい」とする要望書を両社に提出した。
 再稼働が正式に不許可となった場合でも、このままでは敦賀原発2号機は廃炉とならず、関電など大手電力は基本料金を払い続けることになりそうだ。東電は敦賀原発2号機から電力を購入する契約はないが、基本料金や「電力料金の前払い」が東海第2原発で続くことになる。果たして、発電ゼロの原電への支援はいつまで続くのか。東電を含む大手電力の原電への対応が、株主などから厳しく問われるのは避けられそうにない。