2024年9月2日月曜日

東電に聞いてみた「原電へ1400億円前払い」どこから?

 毎日新聞が掲題の記事を出しました。
 敦賀原発2号機の廃炉はほぼ正式に決まっているのですが、日本原電は承服せずに再稼働の道を探るとしています。これまでの経過に照らすと、その姿勢自体が不当というしかありませんが・・・
 東電は日本原電に敦賀原発2号機用の基本料金として毎年550億円を国民からの電気料金から支っています
 その他に東電は、原電の安全対策費として21年度から3年間分として約1400億円を支払っていますが、それは電力料金には含まれていないということです。東電の定常的な収入源は電気料金しかないので、電気料金に含まれていないということは通常あり得ません。毎日新聞の疑問は尤もです。
 同紙が東電に尋ねると、「全体の事業資金から充当している」との回答で、詳しい説明はなかったということですが、それ自体が「電気料以外に原資があり得ない」ことを証明しているといえるでしょう。
 さらに「では、約1400億円は将来的に誰が負担するのか。最終的に東電の契約者が負担するのではないのか」と何度尋ねても、東電は「当社として決まったものはない」と明言を避けたということです
 返済する当てがない融資などあり得ないなので、「電気料から払う予定」であるもののそれは公表できないということなのでしょう。

 因みに日本原電敦賀原発2号機の従業員は1200人(10名前後欠ける程度)なので、仮に平均年収を800万円とすると年間の給与だけで96億円になります。当然その他にも莫大な経費・維持費が掛かります。
 従業員の収入の道を確保すること自体は必要ですが、現状のままダラダラと継続するのではなく、新たな道  例えば廃炉専門企業に切り替えるなど  に進むべきです。
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東電に聞いてみた「原電へ1400億円前払い」どこから?
                             毎日新聞 2024/9/1
 東京電力は原発専業の日本原子力発電の発電がゼロでも、基本料金として毎年550億円を支払っている。この550億円は東電の電力料金に含まれ、契約者が負担している。ところが原電の安全対策費として、東電が2021年度から3年間「前払い」している約1400億円は、東電の電力料金には含まれていないという。どういうことなのか。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】
 この約1400億円は一体、誰が負担しているのか。将来的に東電の契約者が負担する可能性があるのではないか。
 前回の本欄で、東電は原電への「資金的協力」として、約1400億円を「将来の電力料金から前払い」している実態を詳しくリポートした。約1400億円は、原電が進めている東海第2原発(茨城県)の安全対策費に使われている。
 東海第2原発の安全対策費として、東北電力は「将来の電力料金の前払い」ではなく、原電が銀行から必要な資金を借りる際、債務保証を行っている。
 東電は債務保証ではなく、「電力料金の前払い」で対応した理由について、「当社の財務状況などを総合的に勘案して決定した」と説明する。

◇東電は国から交付金
 ならば、東電の財務状況はどうなっているのか。
 まず、東電は原発事故の後、政府が11年6月に「支援の枠組み」を閣議決定し、官民で設立した原子力損害賠償・廃炉等支援機構から1兆円の出資を受けている。この点が他の大手電力と大きく異なる。現在も原賠機構が議決権の過半を握る大株主だ。
 東電(正確には東京電力ホールディングス=東電HD)の23年度連結決算は、最終(当期)損益が2678億円の黒字だった。これには原賠機構からの交付金1389億円が特別利益として含まれている。この交付金は東電が原発事故の被災者の賠償などに充てるお金で、国が国債を発行して一時的に立て替えているものだ。
 23年度は福島第1原発の処理水の海洋放出に伴う風評被害の賠償などで2620億円を特別損失として計上。これらの特別損益に経常利益4255億円などを合わせ、最終黒字を確保した。
 23年度は電力料金の値上げなどもあり、経常損益、最終損益とも黒字だったが、22年度は2853億円の経常赤字だ。原賠機構からの交付金は5074億円あったが、賠償など特別損失が5295億円あり、1236億円の最終赤字だった。21年度は経常利益が422億円、最終利益は29億円だった。
 このように東電の財務状況は変動が激しい。その中で21~23年度の3年間で約1400億円となる原電への前払いは、決して少ない負担額ではない。東電の契約者が払う電力料金に含まないとすれば、一体どこから調達したのか
 東電に尋ねると、「全体の事業資金から充当している」との回答で、詳しい説明はなかった

◇「前払いに交付金は含まれていない」
 原電への約1400億円の前払い金は、正確には東電HD傘下で電力小売り事業を担う東京電力エナジーパートナー(東電EP)が支払っている
 24年6月の株主総会に合わせ、東電の株主が提出した質問書に対する回答によると、東電は23年度に「燃料価格や卸電力市場価格の高騰等を受け、資金繰りに万全を期すべく金融機関から約4000億円の資金調達を行った」という。
 その結果、東電から関係会社への短期債権は22年度の4260億円から23年度は
6681億円に増えた。東電は「主に東電EPへの貸し付けだ」と説明している。

 だとすれば、東電EPが原電に支払った前払い金は東電などからの借入金ではないのか。東電に尋ねたが、「個別取引のため、詳細は差し控える」と、明確な回答はなかった。
 もちろん、お金に色はついていない。原賠機構からの交付金は賠償などに使い道が限られているはずだが、原電への前払い金に流用される可能性はないのか。
 東電に質問すると、「原賠機構からの交付金は含まれていない。原賠機構へは毎月、向こう3カ月の賠償に必要な金額を申請している。当社の事故に起因する賠償以外の用途には使用していない」と、明確に否定する回答が返ってきた。
 それでは1400億円は将来的に誰が負担するのか。最終的に東電の契約者が負担するのではないか。筆者は何度も尋ねたが、東電は「当社として決まったものはない」と明言を避けた。
 この東電から原電への「資金的協力」は、いつまで続くのか。東海第2原発の安全対策は防潮堤の工事の不備で、24年9月だった工事の完了時期は26年12月に延期となった。工事の延期は今回で3度目だ。
 再稼働する見通しがつかない原電を東電が基本料金だけでなく、「将来の電力料金の前払い」で支えることは妥当なのか。支払いが長期化すればするほど、株主などから疑問の声が高まるのは避けられそうにない。