福島第1原発で発生するトリチウム汚染水の海洋放出から24日で1年となります。
全漁連の坂本雅信会長は23日、経産省で斎藤健経産相と面会し、海洋放出後の政府の漁業支援策に謝意を伝えた上で「中国への対応は、われわれではどうしようもない。この先も国に対応をお願いしたい」と要請しました。
斎藤健経産相は、品目ごとの課題について対応策を協議しホタテは中国に代わる加工先の確保を、輸出が好調なコメは迅速な供給に向けた精米施設などの整備を推進するほか、「輸入規制の即時撤廃に向け、さまざまなレベルで働きかけている」と撤廃に向けた取り組みを継続すると述べました。
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きょう処理水海洋放出から1年 全漁連、水産物輸入規制措置の早期解除求める
福島民友新聞 2024/8/24
東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出から24日で1年となるのを前に、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は23日、中国などが続ける日本産水産物の輸入規制措置について「(状況打開の)先がまだ見えていない。大変心配している」との懸念を表明、早期解除や消費拡大に向けた支援の継続を政府に求めた。政府は同日、農林水産物・食品の輸出拡大に向けた取り組みを議論する閣僚会議を開き、規制の即時撤廃に向けた働きかけの強化や、中国の代替となる海外市場を新たに開拓する方針を確認した。
2024年上半期(1~6月)の輸出額は前年同期比1.8%減の7013億円。海洋放出に反発した中国向けのホタテなどの減少で4年ぶりのマイナスになった。23年通年は11年連続のプラスだった。
坂本会長は経済産業省で斎藤健経産相と面会し、海洋放出後の政府の漁業支援策に謝意を伝えた上で「中国への対応は、われわれではどうしようもない。この先も国に対応をお願いしたい」と要請した。坂本会長によると、放出後、日本産水産物は中国のほか、東南アジアでも風評により消費が減少するなど影響が出た。斎藤氏は「輸入規制の即時撤廃に向け、さまざまなレベルで働きかけている」と撤廃に向けた取り組みを継続すると強調した。
閣僚会議では、品目ごとの課題について対応策を協議し、ホタテは中国に代わる加工先の確保を、輸出が好調なコメは迅速な供給に向けた精米施設などの整備を推進する。
輸出拡大に意欲的な産地を優先して支援する制度で生産体制を強化する方針も確認。旺盛な海外需要に対応するため効率的な生産や流通を進めるほか、輸出先の規制に対応した認証取得をサポートする施策が示された。新市場は現地大手スーパーなどを念頭に置く。政府はこうした取り組みで、輸出額を25年に2兆円、30年には5兆円まで拡大させる方針だ。
林芳正官房長官は「海外需要の拡大と供給力の向上を車の両輪として実施することが必要だ」と述べ、一層の取り組み強化を指示した。
岸田首相来県 いわきで漁業関係者と意見交換
岸田文雄首相は東京電力福島第1原発の処理水海洋放出から1年となる24日、県内入りし、いわき市で漁業関係者と意見交換する。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて党幹部が各地を行脚する「政治刷新車座対話」も開催し、県連役員らと面会する。
車座対話では県連役員7人が岸田首相に直接、政治改革などについて意見を伝える見通し。亀岡偉民県連会長ら本県関係国会議員が同席する。
処理水放出1年 茨城県内漁業者、なお警戒 風評被害に注視
茨城新聞 2024/8/24
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出から1年がたった。福島第1原発から3キロ圏内の海水に含まれる放射性トリチウム濃度の最大値は1リットル当たり29ベクレル。世界保健機関(WHO)の飲料水基準(1万ベクレル)を大きく下回っているが、茨城県内の漁業関係者は引き続き、海水への影響や風評被害への警戒を続けるとしている。
東電や水産庁、環境省などが実施している周辺海域のモニタリング(監視)は、大半が検出できる下限値未満。最大値が検出されたのは今年5月3日だった。昨年10月に茨城県が独自に実施した茨城県沖6カ所の測定でも、いずれも国の基準を下回った。
基準値は下回ったものの、茨城沿海地区漁業協同組合連合会(茨城漁連)は「影響が全くなかったわけではない」と指摘。県によると、県産の海産物については放出直後、香港を含む中国向けを中心に取引停止が複数確認された。ただ、その後は目立った報告がなく、同県大洗町の漁師、小林英樹さん(46)は「放出直後はどうなるか不安だったが、今は影響は見られない」と話した。
処理水放出の安全性について、国の原子力委員会は今年6月に公表した原子力白書で、国民の間に「一定程度浸透している」と評価し、国や東電に対して不安の声に応える取り組みを求めた。
茨城漁連の飛田正美会長は、この1年間の動きについて「中国などによる輸入規制を除いては大きな問題が起きることなく経過している」としながらも、今後も注視していく方針を示した。