2024年8月5日月曜日

敦賀原発2号機 不適合なら廃炉は当然だ

 西日本新聞と神戸新聞が、新規制基準に適合しないとされた敦賀原発2号機は廃炉とすべきだとする社説を出しました。
 原電の資料に千カ所を超える誤りやデータの無断書き換えが見つかっていますが、これは原発事業者としてのを疑わせるものです。
 いつ動くか分からない活断層の上に原発がある現状は極めて危険だし、廃炉しない限り他の電力会社は現行通り管理費を負担しますが、それは電気料に加算されています。
 原電は今後の進路を、廃炉作業中の東海原発で蓄積した技術を他の原発の廃炉に役立てる方向で考えるべきです。
 また現行の基準は原発が活断層の真上であるか否かが決め手にされていますが、阪神・淡路大震災では活断層の真上に限らず帯状の広範囲が激震に襲われました。直ぐにも見直す必要がありそうです。
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【社説】敦賀原発2号機 不適合なら廃炉は当然だ
                            西日本新聞 2024/8/5
 重大事故の危険性を排除できない以上、再稼働を認めないのは当然である。
 日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)について、原子力規制委員会は再稼働の前提となる新規制基準に適合しないと結論付けた。
 新規制基準は原子炉などの重要施設を活断層の上に設置することを禁じている。敦賀2号機は原子炉直下に断層があり、これが活断層の可能性があると判断した。
 新規制基準に不適合となった原発は初めてだ。規制委は2日に原電の村松衛社長から意見を聞いた上で審査の終了を決めた。
 原発依存度を低減するにしろ、原発を活用するにしろ、安全が最優先である。いつ動くか分からない活断層の上に原発がある現状は極めて危険だ。原電は結論を受け入れ、廃炉を決断すべきだ
 当の原電は廃炉を否定し、追加調査をして再稼働を求める方針だ。原電の考えを支持する電力会社もある。再稼働さえできればいいというような姿勢では、国民の理解は得られない。
 敦賀原発の敷地内には活断層「浦底断層」が確認され、枝分かれするように複数の断層が延びている。
 審査の焦点は、2号機の原子炉の北約300メートルで見つかった「K断層」の活動性や連続性だった。
 原電がボーリング調査などを基に活動性や連続性はないと主張したのに対し、規制委の審査チームは明確な証拠がないと退けた。
 原電は2015年、規制委に審査を申請した。審査の過程で、原電の資料に千カ所を超える誤りやデータの無断書き換えが発覚するなどの問題が相次いだ。ミスを繰り返す原電に、厳格な安全管理が必要な原発事業者の適性があるのか疑わしい
 審査上の問題も浮かび上がった。規制委の有識者調査団は13年に原子炉直下にある断層を活断層と評価した。原電がこれを認めなかったため、規制委が今回の結論を出すまでに10年以上かかった。貴重な時間と膨大な労力を浪費しただけだ。
 新規制基準への適合審査は事業者が提出した資料を基に進める。資料が不十分だったり、意図的に改ざんされたりすれば、危険性を見落としてしまう恐れもある。
 事業者任せにせず、規制委の主体的な調査を検討すべきではないか。「安全最優先」の最後のとりでである役割を自覚してもらいたい。
 原電の役割も問われる。所有する原発は2基で、東海第2原発(茨城県)は防潮堤の施工不備などで再稼働が見込める状況ではない。
 活断層に近い立地を考えれば、敦賀3、4号機の増設計画は好ましくない。廃炉作業中の東海原発(茨城県)で蓄積した技術を他の原発の廃炉に役立てるなど、事業を再構築すべきだ。


<社説>敦賀原発不合格/結果に従い廃炉の決断を
                          神戸新聞NEXT 2024/8/5
 日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)について、原子力規制委員会は原子炉直下に活断層が存在する可能性があるとして、原発の新規制基準に適合しないと結論付けた。山中伸介委員長は規制委の審査チームに、不合格を示す「審査書」案の作成を指示した。新規制基準に沿った審査で不合格になるのは初めてのケースとなる。
 2011年の東京電力福島第1原発事故を教訓に、原発を推進する経済産業省から安全規制業務が切り離され、12年に規制委が発足した。翌年、運転の可否を判断する新規制基準が導入された。今回の不合格は安全を優先した妥当な結論である。
 審査の論点は、2号機の北側にあるK断層が活断層かどうか、また原子炉直下のD-1断層などがK断層とつながっているかどうかだった。原電は断層の活動性と連続性はないと反論したが、審査チームはいずれも「否定できない」と判断した。
 新規制基準は、原子炉や事故時の冷却装置など安全上重要な設備の活断層上への立地を認めていない。今回はこれに該当する。ただ敦賀原発の場合、仮にD-1断層などに問題がなくとも、2号機から250メートルの場所に浦底断層が通る。マグニチュード(M)7・2程度の地震を起こす恐れがあると、政府の専門機関が指摘する明らかな活断層である。
 阪神・淡路大震災では、活断層の真上に限らず、帯状の広範囲が激震に襲われた。浦底断層が敷地内にある時点で、原発の立地には不適当と言わざるを得ない。原電は不合格の結果を重く受け止めて再稼働を断念し、廃炉を決断すべきだ。
 15年の審査申請後、原電側の対応には不手際が相次いだ。地震対策などの資料で千カ所を超える記載不備があったほか、地質データの無断書き換えが発覚し、審査は中断した。再開後も誤記が見つかり、原発に携わる企業としての資質が問われた。
 敦賀原発とともに原電が所有する東海第2原発(茨城県)も再稼働のめどは立っていない。それでも供給先の大手電力各社から維持費に相当する「基本料金」を受け取る。村松衛社長は規制委の意見聴取に対し、審査の継続を求めた。だが原電は困難な再稼働を目指すのではなく、組織存続の是非を含め、将来を再考する時期に来ているのではないか。
 1月の能登半島地震では、北陸電力志賀(しか)原発(石川県)で外部電源の一部が使えなくなるなどのトラブルが起き、30キロ圏内で孤立集落が生まれた。地震などの自然災害が多発する日本では、原発の立地に公正な科学的評価が欠かせない。規制委は今後も、新規制基準を厳しく適用する姿勢を貫いてもらいたい。