2024年8月21日水曜日

21- ようやくデブリ取り出し作業開始/今世紀中に廃炉は無理

 東電は福島第一原子力発電所2号機での燃料デブリの試験的取り出しについて、22日に着手すると公表しました。順調にいけば約2週間でデブリ3gほどが取り出せるとしています(「福島テレビ」の記事中に「テレスコ」とあるのはテレスコープ=望遠鏡の略で、「伸び縮みする筒」のことです)。

 日刊ゲンダイは、22年3月の参院経産委員会で共産党の岩渕友議員が、1日仮に10キロ取り出しても約240年掛かると指摘したことに関連して、NET上では《1日3gずつならすべてのデブリを取り出すのに40億年ぐらいかかるぞ》などと悲観的な見通しが広がっていると報じています。
 現実はその「1日3g」というレベルにも達していないということで、日本の原子力ムラは金稼ぎでは超一流ですが、利権に絡む実力と実績は兎も角として、「技術力」自体はその程度に過ぎないということです。
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<福島第一原発>【東電一問一答】廃炉の”本丸”燃料デブリにアクセス 試験的取り出しは22日から
                           福島テレビ 2024/8/19
東京電力は福島第一原子力発電所2号機での燃料デブリの試験的取り出しについて、8月22日に着手すると公表した。順調にいけば約2週間でデブリが取り出せるとしている。
福島第一原子力発電所2号機では、事故で溶け落ちた核燃料=「燃料デブリ」を事故後初めて外部に持ち出す「試験的取り出し」が計画されている。
非常に高い線量であることから直接近づくことはできず、廃炉作業の最難関と言われているデブリの取り出し。
試験的取り出しは当初、2021年中の着手が予定されていたが、ロボット開発の延期や、経路に堆積物が詰まってることの発覚で新たなロボットを製作する必要性が生じるなどして、3回延期されていた。
第一原発には880トンのデブリがあると推定されていて、試験的取り出しでは、3グラム以下のデブリを取り出す計画。
東京電力は8月19日午後5時から福島県庁で報道機関からの質問に答えた。

Q 着手とはどのような状況か?その後の具体的なスケジュールは?
A 着手の定義は、テレスコ装置(釣り竿型ロボット)の先端が隔離弁(格納容器との境)を通過したタイミングである。着手の前にエンクロージャ(作業用の前室)に窒素を封入し、建屋内の外気との隔離をする。
その後、X6ペネ(ロボットが通る配管)を通って、格納容器の中に装置をのばしていく。
燃料デブリの採取時期は具体的に現状で申し上げることはできないが、来週(8月26日の週)にはデブリをつかみに行くと考えている。

Q デブリを採取して持ってくるスケジュールは?
A テレスコ装置(釣り竿型ロボット)が入ってからデブリをつかんで最終的に容器で受ける工程で2週間程度と予定している。まずは安全を最優先に、安全に確実に進めていく。

Q 順調に行けば2週間ということか?
A その通り。

Q 作業体制は?
A 作業に関わるのは1日あたり約60人。作業時間は実働として午前6時から午前8時。日々変動するので、必要に応じて柔軟に対応する。

Q デブリを容器に入れるのは格納容器から出してからか。
A その通り。線量の測定をして受け入れられるようであれば容器に入れる。

Q 中止する場合はどのような条件か。
A エンクロージャー(作業用の前室)で(高線量の放射性物質を含む)ダストの漏れが確認されれば作業は止める。
つかんできたデブリが帰ってくる途中に線量計があるが、その線量計で1時間あたり24ミリシーベルトよりも高い場合には格納容器に戻す
線量が高いものをもってきても運搬や隔離に支障をきたすので。

Q 線量が高く、デブリを格納容器に戻した場合にはもう一度取り出しを実施するのか。
A 戻してすぐに再度つかみに行けるのかというと間隔が必要だとは思うが、目的が達成されるまでは実施する計画。

東京電力は8月19日に燃料デブリに関するポータルサイト(⇒巨大情報群の検索入口)を開設していて、デブリに関するこれまでの取り組みや、最新情報を公開するとしている。
 
 
東電福島原発がようやくデブリ取り出し作業開始も…ささやかれる《今世紀中に廃炉は無理》の必然
                          日刊ゲンダイ 2024/8/20
 東京電力が21日にも、福島第一原子力発電所2号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し作業を始めると報じられ、SNS上で《やっと?》《ようやく?》などと話題となっている。
 2011年3月に発生した福島原発事故では、東電は当初、炉心溶融(メルトダウン)の可能性を否定していたものの、後に確認され、炉内や施設の金属などが混ざった放射線量の高いデブリが1~3号機に計約880トンあると推計されている。
 デブリの取り出しは事故後で初めてで、計画によると、原子炉脇から釣りざお式装置の爪を挿入し、採取するという。成分などを分析した後、本格的な取り出し作業の参考にするというのだが、ネット上で意見が飛び交っていたのが、採取する量だ。
 約2週間を予定している作業で、採取する量は「3グラム以下」と報じられていたため、《3グラムずつなら、すべてのデブリを取り出すのに40億年ぐらいかかるぞ》《事故から11年も経つのに、耳垢程度の3グラムしか採取できないのか》などと悲観的な見方が広がったのだ。
 もっとも、今回予定されるデブリ取り出しは、あくまで試験的なものだ。本格的な取り出し作業が始まれば、さすがに1回の採取量が数グラムではないだろう。とはいえ、改めてハッキリしたのは政府・東電の廃炉中長期ロードマップがすでに破綻した可能性が高いことだ。

■廃炉中長期ロードマップでは2041~51年に完了だったが……
 ロードマップでは、廃炉作業の起点を2011年12月として、それから30年~40年後の2041~51年に完了するとされているのだが、2022年3月16日の参院経済産業委員会で、日本共産党の岩渕友議員(47)はこう指摘していた。
880トンのデブリ取り出すというふうに考えた時に1日仮に10キロ取り出しても約240年掛かるんですよ(略)仮に今日からあのデブリの取り出しを始めたとして、40年後といってももう既に10年以上過ぎているので、これ毎日今日から取り出したとしても1日約80キロ取り出さなくちゃいけない(略)ただの土を取り出したりするのとは訳が違うので、そういう点から考えても、これとても現実的だということは言えない
 岩渕氏が「ただの土を取り出したりするのとは訳が違う」と指摘したのは、採取した放射線量の高いデブリをどう処理し、どこに保管するのかが決まっていないという問題だ。
 この課題について、東電ホールディングスの社長は国会で、「燃料デブリの一時保管施設を2020年代後半頃に検討」と説明。だが、通常の使用済み核燃料の廃棄さえも受け入れ場所を巡って反対運動が起きているわけで、デブリの保管場所について確保するのも簡単ではないだろう。
 《今世紀中に廃炉は無理だな》《福島原発処理は次世代、次々世代へのツケ回しは決定》
 SNS上でこんな声が出るのも当然だろう。